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2005年6月

「大堰世那。北海道から来た。
術師の家系ではあるが、術式持ちが生まれたのは4世代ぶりとかなんとか言ってた」

所謂、没落した家だな。

木造のやや古びた教室に4つ並んだ机の1番窓側。
入学からほぼ1ヶ月間空席だったその場所を埋めたのは、他人事のように話す男だった。

「家入硝子、怪我したらおいで、同期割りで治してやんよ」

「ああ、反転術式の…なるべく安くたのんますわ」

この業界に於いてさして珍しくもない結界術式持ちの2級術師。
事前情報から想像していた人物像とはかけ離れていた。

「夏油傑だ。よろしく」

「呪霊操術だっけか、よろしくー」

軽薄な印象を持たせる亜麻色の髪。
気怠げとゆうより無気力さを感じさせる黒い瞳。

「オレさ、あんましこの業界詳しくねえんだけど、反転術式とか呪霊操術とかって珍しいんだろ?」

「まあ、」

「そうだね」

「はは、使い方とか覚えんの大変そうだな」

そして何よりこの態度。
机にぐでっと寝そべる姿は凡そ実力者には見えない。

「お前強いのか」

「…五条悟」

「あ?」

目の前に立ちはだかる五条を見上げる目が一瞬金色に輝いた気がした。

「六眼持ちの無下限術式…無下限ってなんだ?」

「馬鹿にしてんのか」

「はあ?質問してるだけじゃねえか、すぐキレんな。
着火剤かよ…」

「つーか!先に聞いたの俺だし」

「ああ、そうだった。すまん」

あまりにも素直な謝罪に煽りにいった鼻っ柱を叩き折られ、五条がたじろぐ。
向けられるのは死んだ魚のような目。
見られているようで見透かされているような、それでいて見られていないような、居心地の悪い視線にジリジリと距離をとった。

「あーっと、オレが強いかって?
弱いよーすっげえ弱い。死にたくねえし、痛いのも嫌い。オレ後方支援希望だからよろしくー」

「やっぱ馬鹿にしてんだろ!」
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