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愚者の王冠

『続いての楽曲は…』

『はい!俺からしょーかいします』

へえ、珍しい…
つい溢れそうになった声を慌てて抑える。
素早く見回した範囲で自分の方を見ている人がいないことを確認すると、口元に当てた手を何食わぬ顔で下ろした。

『環くんが紹介してくれるなんて珍しいね』

MEZZO"のラジオといえば幅広く音楽に詳しいソウゴさんがわかりやすく教えてくれて、タマキくんとへーそうなんだ…なんて相槌打ちながら聞くのがいつもだから、これは新しい企画とかなのかな。

『最近ねー、がっこーで教えてもらったんだー
…これこれ「クラウン」っての知ってる?』

『とってもわかりやすく見せてくれて嬉しいんだけどね環くん、ラジオだから皆さんには見えないよ』

きっとスマホでサイトか何かを開いてソウゴさんに見せているのだろう。
2人の姿を思い浮かべ、人並みに押されつつ電車を降りる。

『えーっと、クラウンは、カナ、アルト、ケイの3人のユニットで、RabbiTubeで活動してるいわゆるRabbiTuberです』

『彼らの特徴は?』

『見た目は顔が見えねえこと。んで、自分たちで曲作って、練習して、本番までが動画でアップされること。
あと、めっちゃダンスがかっけえの!』

『そうだね。作曲をさせてもらってる側から見ると、彼らの作曲風景はちょっと独特な感じもして面白いし、どんな曲ができるのかドキドキしながら見れるのが楽しいよね』

RabbiTubeか、たまに見るけど、アイナナの新曲とかRe:valeとか推しのアイドルたちの曲しか聞かないな。

『今回は楽曲の使用許可がおりました』

『はくしゅー』

家ならタマキくんと一緒に拍手できたのに!
駅前から徐々に人通りの少なくなる道を足早に進む。地面に今日、残業を押し付けた上司の顔を思い浮かべれば自然と足は速くなった。

『ほんとーはダンスも見てほしーんだけど』

『残念ながらラジオだからね。もしよかったら後でRabbiTubeで見てみてください。
それでは』

『クラウンでレムナント』
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