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愚者の王冠

『相変わらずアナログなんだよなあ』

『何してんの?』

『放課後の学生感あるわ』

『今回も楽しみー』

『鼻歌のレベル高すぎでしょ』

『ダンスのキレやば!』

『ナチュラルにハモるの綺麗すぎ!』

『ちょっと笑い声入ってる?』

『毎度このパートだけ微妙に伸びないのなんで?』


『新作きたー』

『今回はダンス激し目だな』

『この前の和風のも好きだったけど、今回のも良き!』

『振り幅広っ笑』

『いつも楽しそうなんだよね 顔見えないけど』

ここ数日押し寄せる波のように盛り上がるタイムラインを眺めていると、友人からの催促が通知された。

「わかってるよー」

形だけ開いたテキストたちを端に寄せ、音楽アプリを起動させれば目当ての動画が1番上に表示されていた。
最近友人に勧められて見るようになったる彼らは、テレビでよく見るアイドルたちと同じようでどこか違って見える。

「やっば…かっこいい…」

ファンサービスはない。
MCもトークもない。
それでも、真っ暗な部屋でこっそり見る自分のためだけのライブがこの頃の楽しみだ。

「もっと有名になればいいのに…でも、テレビとか出たらこんな頻繁に投稿できなくなるよね」

それはちょっと寂しい。
沢山の人に知ってもらえれば、あわよくば本人たちに出会えるかもしれないけど、私にだけ向けられた音楽も手放し難い。
そんな淡い期待と葛藤を秘めながら、きっと誰にも届かない声をネットの海に放り込んだ。

『クラウン最高!』
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