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(単純思考)
「カンセルさん!これ、ザックスさんが遠征から帰ってきたら渡してもらえますか!」
頬を赤らめた可愛らしい女性に見つめられたらちょっとは期待しちゃうのが男ってもんだろう。
そんなテンプレのようなシチュエーションにまんまと胸を高鳴らせてしまった数秒前の自分が恥ずかしい。
「おっけーおっけー、預かっとくよ」
何食わぬ笑顔で渡されたプレゼントらしき包みを受け取ると、女性はさらに顔を真っ赤にして走り去る。
その姿を見えなくなるまで見送った後、盛大に肩を落とした。
今日で何度目だろう、こんな風にザックス宛の贈り物を言付かるのは。
「俺はザックスのマネージャーか何かか?」
俺も立派なソルジャーなんですけどね。と頭の中で文句を垂れる。
決して友の人気を妬んでいるわけではない。むしろ嬉しいくらいだ。
まあ……ちょっとだけ羨ましいと思うのは嘘ではないけど。
「す、すみません……!」
再び背後から声が掛かる。さっきとはまた違う控えめで恐る恐るとした声色。
「あー、ザックスなら明日には遠征から帰ってくるからその時に……」
またか。と少々項垂れながら振り返るとそこには先程とはまた別の女性。
ふんわり紅に染められていた頬は俺と目が合うと見る見るうちに真っ赤に熟されていく。
「ザックスさん……?いえ、そうじゃなくて」
ずいと押し付けるくらいの勢いで出された手のひらサイズの包みとその上に添えられた小さなメモ。
「カン、セルさんに貰って欲しくて……!」
「…………俺ェ?!」
予想外だが期待していた展開に言葉が裏返る。
思わずドッキリかと思ったが、耳まで真っ赤にした目の前の子が嘘ではないことを物語っていた。
「あ、ありがと」
ゆっくりそれを貰い受けると、彼女は大きく頭を下げて逃げるように去っていった。
そのひと時は嵐のように一瞬で終わったように感じる。
「いやーでも嬉しいなぁ」
ついさっきまで卑屈になりかけたはずの思考があっという間に癒されていく。
メモに書かれた女性らしい字で書かれた少しのメッセージとメールアドレスを見てつい口角を緩めながら、男というものはつくづく単純な生き物だと内心鼻で笑った。
(end)
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