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( 夢のメロンパン )
ふわりふわり。
私はいつの間にこんな所に来たのだろう。たくさんのケーキやシュークリームなどのお菓子たちが宙に浮いているパステルカラーの不思議な世界。
ここはどこ?わからぬままにスポンジケーキみたいな柔らかい道を歩きながら、そこに浮いていたクッキーを手に取りパクリと口に運んだ。サクサクの食感と、バターやバニラエッセンスの香りが口いっぱいに広がり、絶妙な美味しさに私の気持ちは忽ち高揚する。
もっと食べたい。スイッチが入った私はさらに向こうに揺らめいていたメロンパンへ手を伸ばし、掴むと同時に勢いよくそれにかぶりついた。
がぶり·····ん?このメロンパン硬いな。
「·····おい」
え?!メロンパンが喋った?!
かぶりついたメロンパンから何処か聞き覚えのある低い声が聞こえてパチクリと瞬きする。次に私の名前を呼ぶ声がして次第にパステルの世界は真っ暗闇に変わっていった。
「起きろ。」
「ん·····んん?」
重い瞼をゆっくり上げると視界には一面の肌色。何故か口元に違和感、目の前の肌色の何かに噛み付いてるようだ。は?私今、メロンパンを食べ·····。朧気だった頭が次第にはっきりしてきて今の状況に気づいた瞬間、サーッと自分の顔が青ざめていく音がした。
「ぎゃー!ごごごごごめん!!」
慌てて飛び起きると、目の前では恋人のルードがベッドに横たわり呆れ顔でこちらを見ている。強面だが端正な顔立ちに一瞬目を奪われる。しかし、彼の形のいいスキンヘッドについた微かな噛み跡を見て、さらに私の慌て度は増したのだった。
「る、ルード…い、痛そうだね…?」
「あぁ、誰かさんに容赦なく噛まれたからな。」
ぐ、いくら寝ぼけていたとは言え、メロンパンと間違えて恋人の頭を噛む奴が何処にいる!ルードも寝ていたのかまだ覚醒しきってない様子。私に噛み付かれて無理やり起こされた様だ。私は申し訳ない気持ちでそこを一緒に撫でた。
だが、子供の付けたような噛み跡を見ていたらだんだんおかしくなってきて笑いが込み上げてくる。
「·····ぶっ」
「·····。」
「ごめん。」
堪えている様子をルードに気付かれて軽く睨まれた。
それにしてもこの噛み跡、すぐ消えるかな、このまま出勤したらレノ達にそれはもう盛大に笑われるに決まっている!どうしたら早く見えなくなってくれるだろうか。そしてこの微妙に悪い彼の機嫌を直すこともしなくては。
私は噛み跡を優しく撫でた後、吸い寄せられるように唇を寄せ、ちゅ、と軽くキスをした。そしてゆっくりとそこに舌を這わせ、ねろ、と唾液を傷に塗り付けていく。
ほら、唾つけといたら治るって、よく聞くから!
つるつるとしているかと思いきやそうではなくて、少しざらっとした頭皮の感触。「おい、何を」と驚く声を無視して念入りに舐め続けていたら、ピク、とルードが少し震えた。あれ、痛かった?気になってルードの顔を覗き込むと、全然そんな顔じゃなくて、何故かその頬は少し赤らんでいた。
「ルード?·····きゃっ!」
突然腕と腰を掴まれたと思った瞬間、覗き込んでいたはずの視界は一気に一転して私はルードに見下ろされている状態に。あれ?押し倒されてる?
一瞬のことに頭が追いつかないままルードを見つめると、照れくさそうにしていた筈の表情はいつの間にか獲物を狙うハンターの顔に変わっていた。
「お、おや?」
「誘ったのはお前の方だぞ。」
あら、私、もしや元気にする方法間違えた?
両手をしっかりベッドに固定されて、逃げ道のない状況に思わずドキドキしちゃう。でもこんな朝っぱらから?ルードの後ろに見える掛け時計を見るとまだ出勤時間まで余裕がある。これはますます逃げられないな。
「えーっと、ルードさん?本気?」
冷や汗を垂らせながら声をどもらせると、ルードはふっと笑った。
「俺はまだ食べてないからな。」
いただきます。
夢の中で食べたメロンパンさんに、今度は私が食べられてしまいました。
<end>