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( お悩み相談 )
最近の悩み、聞いてくれますか?
太った…気がする、んです。
いや、気がするだけで、体重計に乗ったりはしてないんだけど。
社食のメニューが今月から新しくなったから?私の料理の腕が上がった?とにかくご飯が美味しくて、今日も社食のおばちゃん特性の親子丼は絶品だった。
底なしに食べれてしまう気がするくらい私の胃袋は絶好調で、調子に乗って食べている内にいつの間にかお腹周りの肉付きが増したような…いやいやいやいやそんなことは無い。定期的に運動もしているし、大丈夫大丈夫。
オフィスに戻ると、まだそこは無人だった。ふとレノとルードの席を見ると、椅子の背もたれに二人のジャケットが掛かっているのが目に入る。二人は休憩中か、どこかに食事でも行っているんだろうか。いつも二人一緒で仲がいいなぁとしみじみ思う。
すると、掛け方が甘かったのかルードのジャケットがぱさりと床に落ちた。掛け直してあげようとそれを拾い、埃を払う為に一度大きく広げた。
「うわールードのジャケット、おっきー!」
ルードの体格が良いのは見ればすぐ分かるけど、こうして着ているものだけを見たのは初めて。微かに芽生えた好奇心で、それを羽織ってみる。すっぽりと自身の身体を包み込むその大きさに、おぉ、と感慨の声をあげた。
「…。」
そう、それだけで、終っていれば、良かったのに。
私の好奇心はすぐには治まらず、ルードのジャケットを脱いで椅子に掛けた後、恐る恐る隣の席の、自身が好意を寄せている人のジャケットにまで手を伸ばしてしまった。
まさか、とんでもない後悔をすることになるなんて思いもしていなかった。
***
「くったくったー…あ?何してんだ?お前」
「……。」
10分程してオフィスに戻ってきたレノは、目の前でデスクに両手をついてあからさまに落ち込んでる様子の彼女に首を傾げた。足元には椅子に掛けてたはずの自分のジャケットが投げ捨てられている。意味が分からないままそれを拾い俯いている彼女の顔を覗き見れば、ぼそぼそと小さく呟き始めた。
「レノ…あんた、昼、何食べた…?」
「あーおばちゃん特性親子丼大盛」
「ぐぅぅ…うそだぁぁ」
旨いんだよなぁ~あれ、と至高の表情を浮かべるレノ。
親子丼、確かに美味しいよね。食べちゃうよね、私より食べてるよね…!!
「なのにどうしてそんな腰細いのよーっ!!!」
うわーん、とほぼ半泣きで突っ伏す私。
レノは、はぁ?!と素っ頓狂な声をあげて、未だに何を言っているのか理解できていないご様子。
「だって、だって、レノのジャケット羽織ったら、ウエストに隙間、殆ど無かったんだもんー!!!」
そう、レノのジャケットは肩幅はしっかりあるものの、レノの体のラインに沿った作りのそれは腰回りのサイズが普通より細めだった。細いなぁ、とは薄々思っていたけど、想像以上で、私へのダメージは甚大。
大声でそれを訴えると、レノは落ち込みの理由が分かったものの、複雑な表情を浮かべた。
「それ、俺も嬉しくねぇよ」
「だから腹立って投げ捨ててやった!!」
「理不尽だなぁおい!」
まさか、こんな形で自分の体形変化に気づくなんて終わってる!
しかも、好きな男と比べてとか、最悪以外の何物でもない!
「痩せなきゃ…っ」
「あ?」
「今からトレーニングルームで筋トレしてくる!」
「ちょーい待て待て待て。勤務中だろーが」
勢いよく歩き出す私の腕をすかさず掴んで止めてくるレノ。
放せぇ!と言っても全く放してくれなくてジタバタと暴れる私を、うーん、と何故かじっくり眺めている。
「そもそもお前そんな太ってねぇだろーが、どれどれ」
「はにゃぁぁぁっ!?」
突然、両手で腰を掴まれ、くすぐったいのと恥ずかしいのとで今まで出したことのない声が出た。腰、弱いんですよ…!真っ赤になってしまった顔をレノに見られて、余計に恥ずかしい。
「なぁ、いい運動方法があるぞ、と」
「えっ!」
いい運動方法、のフレーズだけに反応して期待の目をレノに向けたら、何故か意地悪気に、少しだけギラつらせた目で私を見ていて、あ、と何が言いたいのか察した。
「あ、遠慮、しておきます…」
「あ?何でだよ」
「あの、嫌な予感しかしないので」
「得しかねぇだろ、お前も、俺も」
「意味深な言い方しないでよ!」
ちゃんと言ってくれないとわかりません、と目で訴えると、レノはニヤリと笑いながら私の両頬をグイっと掴み無理やり顔を近づけてきて、ドキッと胸が高鳴る。
「それは今夜、体使って教えてやるぞ、と」
また、焦らす言い方。でも、その顔格好いいので目が離せません。
結局流されてる気もするけど、その目で見つめられたらもう何でもいいかなって、思えてしまうんだなぁ。ほんと、恋は盲目ってこれのこと?
「たーっぷり、運動しような、と♪」
恋をしたら痩せる、って聞いたことあるけど、こういうことで合ってる?