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(ロマンとは)
「彼シャツってやっぱ男のロマンだよなー!」
社食で日替わり定食を食べていると、向かいでカレーを食べていたザックスが突然そう言いだして、意味が分からなくて首を傾げた。
「彼シャツ…?なにそれ」
「お前、彼シャツ知らねーの?!」
今日の日替わりは私の大好物のアジフライ定食。正直言って今は食べることに集中したいからザックスの言葉に耳を傾けるのは二の次で、素っ気なく返事をすると思いの外こいつの方が食いつきがよくて驚いた。
彼シャツ、とは簡単に言えば彼氏のシャツを彼女が着る、ってだけのことらしい。
「大きめのシャツをぶかぶかに着てるのが可愛くてたまんないんだよなぁ」
「へーーー。」
「おーい、もっと興味持てって…」
だから、今はそれよりアジフライを温かいうちに食べるのが先決なの。トロリと上に掛けたソースがじわじわとフライへ浸み込んで、今にも食べてほしいと私を誘惑している。さぁいざ、とフライを箸で掴んで口に運ぼうとしている最中、ザックスは身体を前のめりにさせ私に小声で囁いてきた。
「な、セフィロスも喜ぶかもよ?」
***
ザックスに言われた最後の一言が頭から離れなくて、クローゼットの前で一人立ち竦む。
「本当に喜ぶのかなぁ…」
未だにセフィロスが喜ぶ姿を想像できなくて、うーん、と首を傾げてしまう。そもそも、人よりロマンとかに疎い気がするんだけど。
恐る恐るクローゼットを開けて、綺麗に規則正しく並べられた衣類を眺めながら、几帳面だなと感心する。その中を控えめに漁って見つけたのは白いワイシャツだった。それを手に取ると、ふわ、と洗剤の香りと、いつものセフィロスの香りがして、思わず胸が高鳴る。
まあ、喜ぶかは分からないけど、着てみるのも、ありかな。
正直言うと、彼の香りに包まれてみたくなっただけ、だけど。
ザックスに聞いたとおりに、シャツに腕を通してみる。思ってたより大きかったそれは私の身体をすっぽり包み込んでしまった。辛うじて指先と、膝から下だけは出てこれて、鎖骨も丸見え。
シャツからセフィロスの香りが容赦なく鼻を刺激してきて、まるで、抱きしめられているような感覚に陥る。
「これは…」
私が、堪えられるのか?
男のロマンってザックスは言ったけど、どう考えても私がドキドキしてる。
ヤバイ、想像以上の破壊力に、身体が火照って仕方がない。
「…何をしている?」
「…へっ?!」
突然、後ろから声が聞こえて反射的に振り向くと、そこには私の彼、セフィロスが立っていて思わず変な声が出てしまった。
いつの間にそこに居たのか、壁にもたれクツクツと笑っていて、私の全身の血が沸騰した。
「せ、せせせふぃ…いつから…?」
「クローゼットと睨み合いしてるあたりか…」
結構前からですねっ!
一部始終見てたってこと?!黙って?!性格悪くない?!
「いや、あの…そう!ザックスが!彼シャツは男のロマンだっていうから…」
とりあえずザックスのせいにしたらこの場を切り抜けられると判断して大声で言い訳すれば、セフィロスは「ほう…」と私を品定めするように上から下まで見つめた。ほら、興味、ないでしょう…?
「悪くないな。」
「うそ?!」
思わぬ反応に、また声を荒げてしまった。
セフィロスは口端を吊り上げながらこっちに近づいてくる。その威圧感に気圧され思わず後ずさると、後ろにあったベッドに足を引っかけてボスンと身を投げてしまった。気づいた時には、すでにセフィロスが上に覆いかぶさっていて、彼の美しい銀髪がサラリと私の頬を擽る。
「支配欲、というのか」
「…んっ」
スルリ、と剥き出しになった私の足をいやらしく撫でて、身体がピクっと反応する。それを見たセフィロスはまた喉を鳴らして笑った。
挑戦的な瞳で熱く見つめられて、ドクンと心臓の音がうるさく鳴り響く。
「お前を俺色に染めているようで、そそるな」
情熱的に交わされる口づけを感じながら、ザックスの言葉をまた思い出す。
明日会ったら何て言ってやろうか…いや、言ったら絶対揶揄われるから黙っていよう。
この人もちゃんと男だったって、今日改めて思い知りました。