* SS集 (FF) *
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(休める場所)
『今夜、そっちいく』
なんと素っ気なくて、短すぎるメールが来たのはほんの5分前。
一週間出張でその間碌な連絡してこなかったくせに、久しぶりに来た連絡がそれ。しかも今日帰ってくるとか、突然すぎて呆れて言葉も出ない。
「嘘でしょぉ…」
時計を見上げるとまもなく就業時間、なのに目の前のデスクには今日仕上げなければならない大量の書類の山。残業が決定しているのは明らかだ。
こんな時に限って帰れないとは、なんて間の悪さだろう。
それでも、いつ会えるか分からない相手だからこそ、突然だとしても会える時には会いたい。
だから、いつもだったらこんなことはしたくないけど、今日は、特別。
「了解。」とメールを返して、目前に広がる課題を少しでも減らそうと書類たちに手を付けた。
***
「邪魔すんぞー…って、何してんだ?」
ガチャリ、と我が家のリビングの扉が開く音と共に、一週間振りに見る彼氏が顔を出した。
「レノおかえりー久しぶりー」
「あぁ…え、何?仕事してんの?」
部屋に入ればローテーブルの上に置かれたノートパソコンと険しい顔で睨めっこしながら簡素な言葉でお迎えしてくる彼女にレノは首を傾げた。
「あーうん、いつ帰れるか分かんなかったから持ち帰り。」
「へぇ、珍しいな、と」
「早く帰りたかったからね、もう終わるからちょっと待ってて」
ご飯は?と聞くと、食べてきた。とレノは答えた。
先にシャワー浴びてきていいよ、と言うと、ん、と短い返事が聞こえてきたが、何故か動く気配がない。
「レノ?」
不思議に思って、視線をレノに向ける。
少しだけ渋い表情を浮かべていた彼と目が合うと、私の元に歩み寄り後ろに座り込み、レノの両手に抱きすくめられた。
「!…どうしたの?」
「いんや、なんか久しぶりだなーと」
そりゃあ一週間振りですから。
連絡くらいもう少ししてきてよ、と文句を言ってやろうかと思ったけど、優しくも強めの力で抱きしめながら、肩に顔を埋めてくるレノがなんだか可愛くて、文句より笑みが漏れた。
「今日は甘えただねぇ、レノ」
「たまには、な」
「可愛いなぁ……ひゃっ」
突然、ちゅ、とうなじにキスをされて変な声がでた。
「ふっ、可愛いのはどっちなんだか」
「~~~もう!仕事が進まないから今はダメ!」
「終ってからは?」
「……いいけど」
熱くなった顔のまま答えると、くくくと喉を鳴らす笑い声が後ろから聞こえてきて、余計に恥ずかしくなった。
それからもパソコンと向き合っている間、服の裾から手を滑り込ませてきたり、肩に頭をぐりぐり擦りつけて擽ってきたり、邪魔ばかりされて困りながらもなんとか業務は終わらせられた。
「レノー、お待たせ、終わったよ…」
肩に顔を埋めたままのレノに声を掛けたが返事はない。
代わりに聞こえてきたのはスース―と静かな寝息だった。
少し前から静かになったと思ってはいたが、まさか寝ていたとは思わなくて少し驚いた。
「レノ―?」
少し大きめの声で呼んでも全く起きる気配がない。
この一週間どんな任務についていたかなんて詳しく知らないけれど、よっぽど疲れていたということは分かる。
タークスが人んちでここまで油断して良いものなのか、少し疑問に思うけど。
それだけ私に心を許してくれているのかな、なんてちょっと嬉しくなる。
彼の心穏やかな時間を邪魔したくないから、このまま寝かしてあげよう。
寝ていながらも抱きしめる力を緩めないレノに愛おしさを感じながら、彼が起きるまでこの体制でいてあげることにした。
いつまでこの体制でいられるか、少し不安でもあるけど。
「…お疲れ様、レノ」
明日もまた、元気でいられますように。