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( olmeca )
すごく、飲みたい気分だった。
何でって、だって、見ちゃったんだもん。
アイツが知らない女と歩いてるところ。
あんな派手な赤い髪、遠くにいても何処にいるかすぐわかる。
楽しそうだった。ほんとに。すごく、ムカつく。
何で、その隣に立ってるのは私じゃないの?
ムカつく、ムカつく、ムカつく!
考えても考えてもすっきりせず沼にズブズブはまっていく感覚が気持ち悪くて、早く忘れてしまいたかった。
「るぅどぉ~!ぜっっんぜん飲んでないでしょ!」
「…そんなことはない。」
「だって、顔、変わってない!」
たまたま近くにいたルードを引っ張って、行きつけの居酒屋のカウンターでただひたすらビールを喉に流し込む。
明らかに様子のおかしい私にルードはきっと何が原因か感づいているだろう。
何も聞かずに酒に付き合ってくれる、ほんと、強面の癖に良い奴だ。
「あまり飲みすぎると明日が大変だぞ」
「ん~いいの!明日からはちゃんと頑張るから!」
「…そうか。」
「そう!ついでにルードも酔わす!」
「おい」
「マスター!テキーラショット2つちょうだーい!」
もうここまで来たらヤケだ。
ルードの制止を無視して、手っ取り早く酔うにはこれが一番!とショットグラスになみなみ注がれたテキーラを二人でグイっと一気飲みしてやった。
***
頭がガンガンする。ぐるぐる回るような感覚に吐きそう。
あれ?私いつの間に寝てたんだっけ。
結局テキーラ1杯くらいではルードの顔色を変えることができなかったから…2…あ、3杯までいった記憶がぼんやりある…そりゃ潰れるわ。
ていうか、私何処で寝てんの?
「うぅん…いったぁ…」
「よう、やっと起きたか、と」
「…え?なんで、レノが…?」
痛い頭を手で押さえながら起きたらそこは変わらずの居酒屋のカウンター。
変わっていたのは、先程よりも客数が減っているのと、隣に座っている人物。
スキンヘッドの強面サングラスと飲んでたはずなのに、何故か今目の前にいるのは赤い髪のゴーグルヤンキー。
…私を悩みに悩ませて酒に走らせた原因。
「…ルードは?」
「先に帰った。アイツ珍しくふらついてたけど一体何杯飲んだんだよ、と」
まさかの記憶ないだけでもっと飲ませていたのかもしれない。
なんかごめん、と心の中で深く謝った。
「寝ちまったお前迎えにこいって言われて来たんですけど?」
「うぅ、ごめん…」
「まったくだ。こんなんなるまで飲むなっつの」
自分の許容範囲くらいしっかり把握しとけ、と軽く注意された。
ごもっともなのだが、悩みの原因にそれを言われたくない。
理不尽とは分かりつつもムカムカとした気持ちがまた込み上げてきた。
「ふん、嫌味言うくらいなら、放っといてくれて良かったのに。」
「…あ?」
「綺麗なお姉さんとの時間、邪魔しちゃって悪かったわね!」
「は?何のことだ?」
「…今日、一緒に歩いてて、笑ってた。」
涙が出そうになのを見られたくなくてそっぽを向きながら言うと、くく、と喉を鳴らすような笑い声が耳に入った。
もう一度彼を見ると、ニヤリと口の端を吊り上げた余裕の笑み。
「任務。」
「え?」
「それ、諜報の任務。」
「…あ。」
その言葉を聞いて、一瞬で酔いが覚めた。
同じ仕事をしてるのに、なんでその可能性に気づかなかったんだろう!
情けないのと恥ずかしいので思い切り顔が熱くなる。
レノはニヤニヤとした表情を止めない。
あぁ、穴があったら今すぐ入りたい。
「ふーん、もしかして泥酔の原因、それ?」
「ち、違う!!」
「ほーぉ、じゃあ何。」
「~~っ何でもない!もう大丈夫だから先帰っていいよ!」
「あーそら無理だ」
は?とレノを見たら、え、何その顔。
急に真面目な顔でこっちを見るから少し、いやかなり驚いた。
「好きな女放って帰れるほど薄情な男じゃねぇぞ、と」
…え?今なんと?
幻聴かと思うくらい信じられない言葉を聞いて思考が完全に停止する。
返事もできないくらい固まってる様子に、レノはぶはっと噴き出してようやく自分の思考が動き出した。
「おま、ひっどい顔してたぞ」
「だ、だだだってレノが変なこと言うから!」
「おい変とはなんだ変とは」
「んぶっ!」
急にレノの左手が私の両頬を鷲掴みにされて変な声が口から飛び出た。
そこそこに痛いから放せの意味を込めて彼の左手を叩くがビクともしない。
両頬を潰された顔を見られるのが恥ずかしいから止めてくれと願った時、
唇に思い切りかぶりつかれた。
唇全部を一気に食まれるような口づけに目を瞑ることを忘れてしまう。
な、なななに、された?私っ!
「お前も、俺の事スキだろ」
「…は、はぁ?」
「寝言で、俺の名前、何度もボヤいてたぞ」
「う、うそ!」
「な?白状しちまえよ」
どうも上手く転がされている気がしてならなくて素直に好きって言葉が出ない。
こういうところ、可愛くないな、私。
でも、そんな私よりもレノの方がはるかに上手だった。
「言わないとさっきのよりすげーチューするぞ、と」
「…えっ!好き、ですっ!」
「上出来♪」
あれ?結局、キスされてるんですけど。
酔いがまた回ってきたか、それともキスが気持ちいからか、頭がふわふわする。
何だかんだ強がってもこいつには敵わない、そんな気がした。
ま、なんか幸せだしいいや。
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