Garnet
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
Garnet ―1―
『大きくなったら俺がお前を守ってやるよ』
『ほんと? 絶対だよ?』
『約束だ! その日までこれ持って待ってろ!』
『本当に約束だよ! 待ってるから!』
——変な夢を見た。
子供の頃、街で出会った小さな黒髪の女の子との記憶。ずっと昔のことだから今の今まで忘れていた。忘れていたものを何で今になって夢で見せられたのか不思議に思う。昨日飲みすぎたからか? 二日酔いでガンガンする頭を押さえながら、のそりと起き上がり携帯の時計を見た。
「げ……」
時計が記した時間は出勤時間をとっくに過ぎていて、俺は慌ててベッドから飛び起きた。
「……おはようございまーす、と」
「レノ、堂々と遅刻とは偉くなったものだな」
恐る恐るオフィスの扉を開けたらそこには既に出勤していたヴェルド主任とツォンさん、そしてもう一人珍しいお方が立っていた。その人を見た俺は遅刻したタイミングが悪すぎたと昨日はしゃぎすぎた自分を恨んだ。
「げっルーファウス様……こんなとこまで来てどうしたんですか、と」
「あぁ、ちょっと相談事があってな」
彼は我社の社長であるプレジデント神羅の大事な一人息子、ルーファウス神羅。そんな偉いお方の大事な相談事、というのはまもなくジュノンからやってくる要人の護衛を誰にするかというものだった。一般兵ではなくタークスが護衛をするのだからよっぽど偉い人なのだろうか。もともとはあのセフィロスが護衛する話だったと聞けば尚更だ。しかしその人は「ソルジャーは堅苦しくて嫌だ」と言ってタークスを指定してきたらしい。
「まぁ、ツォンが適任なのだろうが、あのおてんばは大人しく従ってくれるか……」
そう言ってルーファウス様は頭を抱えて悩んでいる。
んん? おてんば?
「その要人というのは一体どんな人なんですか、と」
「あぁ、それは……」
ルーファウスが謎の言葉を発すると同時に、扉の向こうからバタバタと足音が近づいてきて全員が何事かと身構えた。しかしルーファウスだけは「きた…」と何が来たのか心当たりがあるようで、面倒くさそうな表情で扉を眺めていた。
その瞬間、バタン! と扉が勢いよく開き入ってきたのは一人の若い女。白い清潔感のあるワンピースにピンクベージュのジャケット、流れるようなブロンドの長い髪に透き通ったアクアマリン色の瞳。突然現れた彼女の美しさに、その場にいた者全員が目を奪われた。女は部屋をくまなく見回し、こちらに目を向けた瞬間、ぱぁっと輝くような笑顔を見せて走ってきた。そういえば、誰かに似て——
「お兄様!」
◇
「紹介しよう。妹のナナシだ」
「ナナシ・神羅です。よろしく」
突然現れた美女は驚くことに若様の妹で、嬉しそうに兄の腕にベッタリとくっつきながら自己紹介をしてくれた。ということはプレジデントの娘? 嘘だろ、娘がいるなんて聞いたことなかったぞ。そんな不思議そうな顔で見ているのが若様にバレて「事情があってな」と簡単に説明された。
その秘密のお嬢様が何で急にミッドガルに来ることになったんだ?
「来週行われる創立記念パーティーに急遽参加することになったの」
だからそれまで誰か私の護衛をして欲しいとナナシお嬢様は偉そうに言って、また若様の腕に絡みつく。すごいブラコンだなぁとその光景を他人事のように眺めていたら、珍しくツォンさんがその場に待ったをかけた。
「私共より、当初の予定通りソルジャーにお願いされた方が安心かと思いますが……」
「嫌よ! あんないかついのが傍にいたら、せっかくミッドガルに来たのに遊びにも行けないわ!」
「しかし」
「融通が利かないわねツォン! 私が命令しているのだから黙って従いなさい!」
いかにも、我が侭お嬢様という感じ。うへぇ、面倒くさそう。こんな女の護衛をするのはできれば御免被りたい。俺は辛気臭い護衛なんかより、外で暴れ倒せる仕事の方が性に合う。まぁこの調子だとツォンさんが引き受けることになりそうだから気にしなくてもよさそうだ。
周りがやいやい話し合っている隙に立ち去ってやろうと、そっと主任の後ろに隠れようとしたその瞬間。まさか、目が合ってしまった。げっ、と嫌な顔をしている俺を彼女はじーっと見つめた後、とんでもないことを言い放ったのだ。
「お兄様! そこの赤い髪の人に護衛してもらうわ!」
「はぁ⁉」
ああ、二日酔いの頭が余計に痛くなった気がする。
1/14ページ