【長編】境界を越えて、 君に会いにいく。
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第9話
昼下がりの中庭。
訓練を終えた兵士たちが、
穏やかな空気に包まれながら談笑している。
ベルトルトは遠目で、
オリアナの笑顔を見つめていた。
ジャンやサシャたちと話している。
声は楽しげで、空気は柔らかい。
——楽しそうだな。
いや、別に、誰と話していたって構わない。
それなのに、視線が自然と彼女に戻る。
少し距離を置き、歩きながら見守る。
ジャンが何か面白いことを言い、
オリアナが笑った。
口元を手で押さえ、肩を震わせている。
なんてことのない、些細な仕草。
普段の凜とした表情とは違う、無防備な姿。
胸の奥が、ほんのわずかにざわつく。
それは嫉妬というほど大きくはない、
微かな違和感。
——なんだ、この気持ちは。
言葉にしようとすると、胸の奥で熱が走る。
感情が、理屈をすり抜けて、体に残る。
「……気になるのか?」
隣に立ったライナーの声が、
風に乗って突き刺さる。
一瞬、視線を逸らす。
顔を上げると、じっと見つめられていた。
「え……?」
ライナーの軽い笑み。
そして口を開く。
「オリアナだよ」
——え。
頭の中が混乱する。言葉が上手く出ない。
「なっ……別に、そんなんじゃ……」
思わず否定するが、
内心では否定できないものがある。
ライナーは少し楽しげに続ける。
「お前は、アニの方を見てると思ってたがな」
「ち、違うよ!そんなんじゃないって!」
その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
アニ……確かに、意識の片隅にはいる。
でも、今感じている心の正体は、違う。
——僕は……オリアナに。
——惹かれている。
ライナーの一言が、心の奥の感情に火を灯す。
自分の心を否定する暇もなく、事実がそこにある。
「まあ、オリアナも時々、お前を見てるぞ」
そう言われ、一瞬心臓が跳ねる。
視線の先にあるオリアナの笑顔が、頭にちらつく。
——僕を見てくれていたのか。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
恥ずかしさと、知らずに期待していたことへの驚きが混ざる。
言葉にできない感情が、体の奥から静かに波打つ。
「……え?」
思わず小さく声が出る。
ライナーの顔を見上げると、
楽しげに微笑んでいた。
からかわれているのはわかっている。
それでも、心は否定できなかった。
——僕は、オリアナのことが……
短く息をつき、頭を振る。
理性はまだ、
言葉にしてはいけないと警告している。
それでも視線は、
無意識にオリアナを追っていた。
——見てるって……どういう意味だ?
その問いが、頭の片隅でずっと響く。
*
少しして、オリアナと偶然すれ違う。
手袋を落としたらしい。
「ベルトルト、これ、落としたよ」
声は柔らかく、いつもより近い距離。
手渡される瞬間、指先に触れる温度が残る。
頭の中で、ライナーの言葉が反響する。
——見てるって、やっぱり……
微かに視線を交わすだけで、心臓が速くなる。
言葉は必要ない。
目に映るすべてが、胸に残る。
*
夜、ベッドの中で天井を見つめる。
これまでの出来事が、順番に頭に浮かぶ。
雪山での、あの一瞬の「ありがとう」。
手に触れた温もり、並んで歩いた距離。
そして、今日の中庭でのささやかな接触。
指先に残る温度、柔らかな声、
微かに重なる視線。
——僕は、オリアナに惹かれている。
——それだけは、もう隠せない。
しかし、同時に胸の奥に、使命の影が差し込む。
——僕は、この島の人間じゃない。
——いつか、この世界を壊す側になる。
喜びも、安堵も、すべてが許されない感情だ。
夜の静けさの中で、胸の奥に微かな痛みが残る。
息を吐く。肩を落とす。
感情と使命が同時に存在する。
どちらも無視できない。
——でも、放っておけなかった。
胸の奥で芽生えた、微かで確かな想い。
それは凍てつく湖の底のように静かで、
確かに存在している。
そして、小さく呟く。
……惹かれている。
でも、それを抱き続けていいのかは、
まだわからない。
…To be continued
揺れる理性
side - ベルトルト
昼下がりの中庭。
訓練を終えた兵士たちが、
穏やかな空気に包まれながら談笑している。
ベルトルトは遠目で、
オリアナの笑顔を見つめていた。
ジャンやサシャたちと話している。
声は楽しげで、空気は柔らかい。
——楽しそうだな。
いや、別に、誰と話していたって構わない。
それなのに、視線が自然と彼女に戻る。
少し距離を置き、歩きながら見守る。
ジャンが何か面白いことを言い、
オリアナが笑った。
口元を手で押さえ、肩を震わせている。
なんてことのない、些細な仕草。
普段の凜とした表情とは違う、無防備な姿。
胸の奥が、ほんのわずかにざわつく。
それは嫉妬というほど大きくはない、
微かな違和感。
——なんだ、この気持ちは。
言葉にしようとすると、胸の奥で熱が走る。
感情が、理屈をすり抜けて、体に残る。
「……気になるのか?」
隣に立ったライナーの声が、
風に乗って突き刺さる。
一瞬、視線を逸らす。
顔を上げると、じっと見つめられていた。
「え……?」
ライナーの軽い笑み。
そして口を開く。
「オリアナだよ」
——え。
頭の中が混乱する。言葉が上手く出ない。
「なっ……別に、そんなんじゃ……」
思わず否定するが、
内心では否定できないものがある。
ライナーは少し楽しげに続ける。
「お前は、アニの方を見てると思ってたがな」
「ち、違うよ!そんなんじゃないって!」
その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
アニ……確かに、意識の片隅にはいる。
でも、今感じている心の正体は、違う。
——僕は……オリアナに。
——惹かれている。
ライナーの一言が、心の奥の感情に火を灯す。
自分の心を否定する暇もなく、事実がそこにある。
「まあ、オリアナも時々、お前を見てるぞ」
そう言われ、一瞬心臓が跳ねる。
視線の先にあるオリアナの笑顔が、頭にちらつく。
——僕を見てくれていたのか。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
恥ずかしさと、知らずに期待していたことへの驚きが混ざる。
言葉にできない感情が、体の奥から静かに波打つ。
「……え?」
思わず小さく声が出る。
ライナーの顔を見上げると、
楽しげに微笑んでいた。
からかわれているのはわかっている。
それでも、心は否定できなかった。
——僕は、オリアナのことが……
短く息をつき、頭を振る。
理性はまだ、
言葉にしてはいけないと警告している。
それでも視線は、
無意識にオリアナを追っていた。
——見てるって……どういう意味だ?
その問いが、頭の片隅でずっと響く。
*
少しして、オリアナと偶然すれ違う。
手袋を落としたらしい。
「ベルトルト、これ、落としたよ」
声は柔らかく、いつもより近い距離。
手渡される瞬間、指先に触れる温度が残る。
頭の中で、ライナーの言葉が反響する。
——見てるって、やっぱり……
微かに視線を交わすだけで、心臓が速くなる。
言葉は必要ない。
目に映るすべてが、胸に残る。
*
夜、ベッドの中で天井を見つめる。
これまでの出来事が、順番に頭に浮かぶ。
雪山での、あの一瞬の「ありがとう」。
手に触れた温もり、並んで歩いた距離。
そして、今日の中庭でのささやかな接触。
指先に残る温度、柔らかな声、
微かに重なる視線。
——僕は、オリアナに惹かれている。
——それだけは、もう隠せない。
しかし、同時に胸の奥に、使命の影が差し込む。
——僕は、この島の人間じゃない。
——いつか、この世界を壊す側になる。
喜びも、安堵も、すべてが許されない感情だ。
夜の静けさの中で、胸の奥に微かな痛みが残る。
息を吐く。肩を落とす。
感情と使命が同時に存在する。
どちらも無視できない。
——でも、放っておけなかった。
胸の奥で芽生えた、微かで確かな想い。
それは凍てつく湖の底のように静かで、
確かに存在している。
そして、小さく呟く。
……惹かれている。
でも、それを抱き続けていいのかは、
まだわからない。
…To be continued