Story.05≪Chapter.1-5≫

「ミシェルの奴、とんでもねぇ奴と出会っちまったかぁ…。羨ましい限りだぜ」

「そいつ、すげぇ強ぇのか!?どうなんだ!?」


強敵の登場に心から高揚感が出るカルロスと、リアンに興味を示すバーンの一言に他の生徒達は別の意味で騒ぎ始めた。


「はいはい静かに。音が聞こえませんよー」


アンヘルが静粛を求めると3人の会話には続きがあり、この後の展開に全員が注目する。


『道化会の狙いは確か、リヴの命だったよな?残念だが今日はここにはいないぜ?』

『“粛清の炎”とは同じ道化会に所属しているが、目的は別にある』

『目的は別、ねぇ…』

『“仮面の悪魔”とやらに仕えているのにか?』

『会員が各々の目的を持つ中で、共通する障害がある……とでも言っておこうか』


道化会の会員達の目的は一致していないが、その中で邪魔な存在は同じ。
そう感じたカイザーは一度リヴマージに視線を送るが、彼女はヒトに恨まれる様な事はしていないと思わせる様に首を素早く横に振った。
そして映像の中のミシェルが次の質問に入り、生徒達は真剣に話を聞く。


『リアン……と言ったか。お前は何の目的で道化会にいるんだ?』

『私が道化会に所属する目的か。そうだな…』


するとリアンが高々と跳び上がりながら右手に先程と同じサイズの赤い魔法陣を出現させ、殴り掛かる態勢に入った。
そこへセロンがミシェルを守る様に前に立つが、下からの激しい上昇気流によって上に飛ばされ、魔法陣が纏う拳が彼女に襲い掛かって来た。


『このアイドライズを、リヴマージの支配から解放させる事だ』


強烈な拳が地面を窪ませる音と同時に、カイザーは目を細めてリヴマージを睨み付ける。


「リヴ…」

「違うっ!本当に何もないわよっ!ああいうヒト、私は初めて見たんだから信じてーっ!」

『リヴの支配から解放させる、だぁ?ふざけてんのか?ワケの分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ』

『そのままの意味だ。聖冥諸島、特にアイドライズは偽りの神子、リヴマージ・C・クロムヘルと彼女に忠誠を誓う有力貴族の手により、弱者を潰す政治を行い続けている』


リヴマージが必死に否定する中、映像の中のミシェルもリアンの言葉を受け入れていない様子が見られる。
そして彼の最後の言葉にエクセリオンは引っ掛かりを感じるも、思い当たる部分がない為そんなワケがないと首を横に振った。
後にリアンの攻撃をひたすら回避する場面が続いており、道化会の会員を見つけても戦わないというアンヘルの言い付けを守っていると誰もがそう思っていた。
その時、映像の中のミシェルが持つ≪斬蒼刀≫に水が宿り、素早く斬り付けては魔力を氷属性に転換させて交差させる様に斬る技―≪双冷斬(ソウレイザン)≫で相手を攻撃した。


「えっ!?ちょっとミシェル!?」


それを見たユリアンが思わず彼女を叫び、アンヘルも困った表情を浮かべていた。
映像は続けてセロンも封殺術を用いた剣術でリアンを斬り付け、魔力と能力を封印させたかに見えた。
だが直後、向かい風が吹き荒れて土埃が舞い、しばらくしてから晴れるとロングコートに血液が付着していながらも悠然と立っているリアンの姿があった。


「二人の攻撃が効いてねぇ…だと…!?」

「俺が見てもミシェルとセロン殿の攻撃は当たっていた。まさかレヴィンが“粛清の炎”に攻撃しても効かなかった時と同じなのか…!?」


当てた筈の攻撃が一切効いていない現象は、一昨日にレヴィンによる攻撃が“粛清の炎”に届かなかった事を彷彿させる。


「いや、傷は確かに負わせた」


だがセロンは映像ではハッキリとは映っていないが、右肩付近の傷を目にしたが一瞬で消えたと語り、自分の封殺術が早くも解けてしまったのではないかと推測している。
ともあれ、リアンは二人を離れるかの様に木の下に移動し、吹き荒れた強風が吹いた後に姿を消した。
ミシェルが送った動画はこれで終了となり、生徒達がざわめく中でアンヘルはスクリーンの電源を切った。
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