Story.05≪Chapter.1-5≫
ミシェルとの出会いもそうだ、伸びしろのある人物は世界を回って探せば自然と見つかる。
それは各方面で期待を寄せている者だけでなく、どのサイトにも話題にならなかった者も、セロンにとってはそれに該当する。
「ミシェル、真正面から言われなくても…」
「気にすんなって事だろ?そんなモン…」
ミシェルは言葉を交わしながら振り続けると、僅かに黄金の刀を振り上げるセロンの動きが大きくなった所を目にすると、すぐさま≪斬蒼刀≫に水属性の魔力を纏わせ、多量の水が溢れ始める。
「分かってんだよ!!」
その状態で≪水蓮刃(スイレンジン)≫を発動し、左から右に振るっては身体を回転させ、流れる様に下から上へと振り上げた。
対するセロンは水が宿る刀身を見極めながら前者の一振りは腰を反らして避け、後者は黄金の刀で受け止めた。
「ちっ!」
さすがにあっさりと傷一つすら付けさせてくれないか、ミシェルはそう思いながらも絶望や諦めの様子を見せずに再び左から右に振ると突如、セロンが姿を消した。
「何!?」
ミシェルは驚きながらも周囲を見渡すが彼は何処にもおらず、木々に隠れているのかと思いつつ気配を探っても感じられない。
すると上かと視線をその方向に移して同じ様に見て回るも、姿を捉える事が出来ない。
―何処だ…?何処にいる…?―
神経を研ぎ澄ましてもう一度周囲を注意深く探ると、背後から弱めの風が吹いたのを肌で感じ、即座に振り向くと掌(てのひら)よりも少し大きめの赤い魔法陣が迫って来た。
ミシェルは咄嗟に刀で防ぐが押し込んで来る魔法陣の力が強く、足で踏ん張っても身体が後ろに引っ張られる様に後退りされる。
こんな攻撃は今まで見た事がない、そう思いながら正面を見ると自らの師ではなく、黒いフード付きのロングコートと同色の手袋とブーツで顔面を除く全ての部位を覆い隠し、目元にだけ黒い仮面を装着した人物だった。
「何だてめぇ…っ!」
押されながらも名を名乗れと付け足した瞬間、その人物の口角を笑みがこぼれる様に上げると、口元から鋭い犬歯を見せ付けられた。
ミシェルは気味が悪いと感じ、後ろの木が徐々に迫って来たのを機に右方向にステップをしながら少し距離を取る。
その時に見た魔法陣はロングコートの人物の右の拳から発しており、それが木に直撃すると当てた部分からヒビが入り、直後に真っ二つに折れて大きな音を立てながら倒れた。
相手の拳の威力を見せ付けられたミシェルは手強い存在だと感じ、≪斬蒼刀≫をしっかりと握り締めて睨み付ける。
「聞いてんのか?てめぇは誰だ!」
改めて相手に名前を問い質すと、ロングコートの人物はゆっくりとこちらを向いた。
「記憶喪失、という情報は本当だったんだな。ミシェル」
低い声からして男である事は分かったが、返答の中に自分の名前が入っていた事に彼女は驚きを隠せなかった。
「何で俺の名前を…!?」
知り合いの中にこういう人物はいない、見た目からしても、声からしても。
そして今まで情報を集めた中でもこの様な姿の男は何一つ入って来ず、また道化会に関する目撃情報もなかった。
しかし目元だけではあるが、仮面を付けているという事は“会員”の可能性がある。
そうだとしたらアンヘルからは“戦うな”と言われており、先程の攻撃の威力から考えたら下手な反撃は返り討ちに遭う。
その思考がミシェルの頭の中に巡ると、男がこう言って来た。
「あの日の出来事も覚えていない、という事か。この日までの9年間、無事に生き長らえたのも納得がいく」
「あの日の出来事…?9年間…?」
前者は全く理解出来ないが、後者は自らの年齢を換算すると“5歳から今日まで”という意味であろう。
という事は、9年前に記憶を失った原因をこの男は知っているのだろうか。
道化会の会員かもしれない中で、何とか彼の正体を出来る限り突き止めたい。
それは各方面で期待を寄せている者だけでなく、どのサイトにも話題にならなかった者も、セロンにとってはそれに該当する。
「ミシェル、真正面から言われなくても…」
「気にすんなって事だろ?そんなモン…」
ミシェルは言葉を交わしながら振り続けると、僅かに黄金の刀を振り上げるセロンの動きが大きくなった所を目にすると、すぐさま≪斬蒼刀≫に水属性の魔力を纏わせ、多量の水が溢れ始める。
「分かってんだよ!!」
その状態で≪水蓮刃(スイレンジン)≫を発動し、左から右に振るっては身体を回転させ、流れる様に下から上へと振り上げた。
対するセロンは水が宿る刀身を見極めながら前者の一振りは腰を反らして避け、後者は黄金の刀で受け止めた。
「ちっ!」
さすがにあっさりと傷一つすら付けさせてくれないか、ミシェルはそう思いながらも絶望や諦めの様子を見せずに再び左から右に振ると突如、セロンが姿を消した。
「何!?」
ミシェルは驚きながらも周囲を見渡すが彼は何処にもおらず、木々に隠れているのかと思いつつ気配を探っても感じられない。
すると上かと視線をその方向に移して同じ様に見て回るも、姿を捉える事が出来ない。
―何処だ…?何処にいる…?―
神経を研ぎ澄ましてもう一度周囲を注意深く探ると、背後から弱めの風が吹いたのを肌で感じ、即座に振り向くと掌(てのひら)よりも少し大きめの赤い魔法陣が迫って来た。
ミシェルは咄嗟に刀で防ぐが押し込んで来る魔法陣の力が強く、足で踏ん張っても身体が後ろに引っ張られる様に後退りされる。
こんな攻撃は今まで見た事がない、そう思いながら正面を見ると自らの師ではなく、黒いフード付きのロングコートと同色の手袋とブーツで顔面を除く全ての部位を覆い隠し、目元にだけ黒い仮面を装着した人物だった。
「何だてめぇ…っ!」
押されながらも名を名乗れと付け足した瞬間、その人物の口角を笑みがこぼれる様に上げると、口元から鋭い犬歯を見せ付けられた。
ミシェルは気味が悪いと感じ、後ろの木が徐々に迫って来たのを機に右方向にステップをしながら少し距離を取る。
その時に見た魔法陣はロングコートの人物の右の拳から発しており、それが木に直撃すると当てた部分からヒビが入り、直後に真っ二つに折れて大きな音を立てながら倒れた。
相手の拳の威力を見せ付けられたミシェルは手強い存在だと感じ、≪斬蒼刀≫をしっかりと握り締めて睨み付ける。
「聞いてんのか?てめぇは誰だ!」
改めて相手に名前を問い質すと、ロングコートの人物はゆっくりとこちらを向いた。
「記憶喪失、という情報は本当だったんだな。ミシェル」
低い声からして男である事は分かったが、返答の中に自分の名前が入っていた事に彼女は驚きを隠せなかった。
「何で俺の名前を…!?」
知り合いの中にこういう人物はいない、見た目からしても、声からしても。
そして今まで情報を集めた中でもこの様な姿の男は何一つ入って来ず、また道化会に関する目撃情報もなかった。
しかし目元だけではあるが、仮面を付けているという事は“会員”の可能性がある。
そうだとしたらアンヘルからは“戦うな”と言われており、先程の攻撃の威力から考えたら下手な反撃は返り討ちに遭う。
その思考がミシェルの頭の中に巡ると、男がこう言って来た。
「あの日の出来事も覚えていない、という事か。この日までの9年間、無事に生き長らえたのも納得がいく」
「あの日の出来事…?9年間…?」
前者は全く理解出来ないが、後者は自らの年齢を換算すると“5歳から今日まで”という意味であろう。
という事は、9年前に記憶を失った原因をこの男は知っているのだろうか。
道化会の会員かもしれない中で、何とか彼の正体を出来る限り突き止めたい。