Story.04≪Chapter.1-4≫

黒の背景に白い文字、≪サクレイド学院≫の公式サイトとは真逆なイメージを与えそうな、物々しい内容の文章が多い。


「これが裏サイト…。初めて見ましたが、悪い点を挙げられているのがほとんどですね」

「特に掲示板の書き込みにはな」


息を呑むシェルマリンを余所に、ミシェルは学院のパソコンルームで閲覧した掲示板をクリックし、1年前の事件が触れられている内容を探す。
古い書き込みから最新のモノへスクロールされていく文章を目で追うシェルマリンは、言葉でヒトを傷付けようとする内容ばかりでショックを受ける。


「これだ。前より返信(レス)が増えてるな…」

「……み、見つけました?」

「ああ。容疑者の名前付きだぜ……って大丈夫か?」


ミシェルは書き込みを見つけた事を彼女に視線を送るが、その時に見た顔色は非常に悪そうだった。
心配をする一言にシェルマリンは、はっと我を取り戻し、「大丈夫です」と返して本題に戻らせた。


「『昨日学院を襲って来た道化会ってヤツらなんだけどさ、仕向けたのカルマじゃね?1年前に同級生を殺して学院長から追放処分を受けたあの元生徒。先輩達の噂じゃ、本人はやってないって言ってるのに追い出されたらしいし、その復讐として襲ったんじゃないかな。当時は2年生だった3年生に怪我人がかなり出たから、カルマの同級生をビビらせる為にあんな事をさせたんだと思う。』……だとよ。カルマって名前に見覚えは?」

「いいえ、ありません。それが、容疑者の名前なんですね…」


犯罪者の名前を公(おおやけ)に出来るのは成人の年齢に達する20歳からであり、それ未満は“少年”、または“少女”とだけ称される事が多い。
だがこの裏サイトならば、批判したい相手の事も平気で書き込んでいる者が多いので、堂々と出しているのは当たり前となっているのだ。
学院を襲撃した道化会の動機を探りたい身としては手掛かりらしきモノなので、ミシェルはそれを元に1年前の事件の関連性を明日の発表の材料として考えている。


「この件に関しまして、私はどうしたら良いのでしょうか…」

「そうだな…。とりあえず、局長とシュリ姉達には“1年前の学院の事件が引っ掛かる”って伝えといてくれ。……このサイトの事は絶対に言うなよ?」


おそらく防衛局はまだあの事件に目を付けていない可能性があると見て、リコリス達への伝達をシェルマリンに任せた。
念押しに裏サイトで得たという話は伏せるよう付け足すと、「分かってます」とにこやかに返された。


「後は明日、俺がアンヘル先生とかに聞いてみる。何せ朝の6時半に剣術の修行があるって師匠に言われちまってよ…」

「かなり早い登校ですね。明日の昼食はどうしましょう?」

「食堂で済ませるさ。だからシェルマリンはゆっくりしてくれ」


道化会の本拠地が掴めない現状では再び≪サクレイド学院≫を襲撃するかもしれず、またアイドライズ島内の何処かで事件を起こす可能性がある。
その被害者が出た時の為に、多忙が続くシェルマリンに無理をさせたくない。
そう思ったミシェルは資料作成の為に引き続きパソコンの操作を再開し、シェルマリンは「では、無理しないで下さいね」と言って部屋を出た。
裏サイトの書き込みや1年前の事件の記事を参考にしつつ、一人でひたすら作業していると、『ピコン』という音が聞こえた。
ディスプレイにはメールが受信されたという知らせがあり、それをクリックすると映像データも添付されていた。
時刻は20時58分で送り主はカイザー、こんな時間に何の用だと思いつつ映像を再生させる。


『ミシェル、お前に調べて欲しい事がある』


彼の後ろには多くの木々が見られ、一体何処で録画をしているんだと溜め息を漏らした。
しかしああいう場所でメッセージを送るという事は、ほとんどの場合他人に聞かれたくない程の極秘な事柄なので、ミシェルはこの発言の直後に一時停止のボタンを押す。
ワイヤレスイヤホンを付け、自分にしか聞こえない様にセッティングしてから再生のボタンを押し、続きに耳を傾ける。


『この情報は道化会に関する手掛かりらしきモンだが、確固たる証拠がない以上他の奴らには迂闊に話す事が出来ねぇ。アンヘル先生やセロン殿にもな』


カイザーは現在、リヴマージとレヴィン、エンドルと共に道化会の情報を探っている様だが、その3人や教職員も含むヒトには言えない“何か”を掴んだのだろう。
彼としては信頼出来る同級生で機械に関する知識があり、四王座に選ばれていない事で自由に動ける人物として自分が挙がり、この様なデータを送り付けたのだろう。
面倒な事になりそうだと思いつつ、調査の内容を真剣に聞き入れていたのであった…。
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