Story.04≪Chapter.1-4≫

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時刻は20時、ミシェルは自宅に帰り夕食を食べ終わった後、自室に篭ってパソコンの電源を入れた。


「今日はひたすら調べ物ですか?」


すると片付けが終わった同居人のシェルマリンが覗き込む様に顔を出し、彼女の様子を見ていた。


「ああ。道化会の正体を探る為の情報収集っていう宿題出されちまってな。明日発表だとよ」

「私が帰る途中、学院の生徒の皆さんがあちらこちらで聞き込みをしている所を見ましたが、なるほど、そういう事でしたか」


シェルマリンは昨日、怪我をした3年生の治療と、仮面を被った怪物の正体と変貌の原因を調査する為に帰宅する事が出来ず、代わりにシュリが宿泊した。
そして今日、一通りそれらが終わって防衛局の本部に戻る彼女との入れ替わりになる様に自宅に戻ったが、途中で制服を着た少年や少女を目撃していたので不思議に感じていた。
疑問はミシェルの一言で解決し、「あれも授業の一環なんですね」と呟きながら入室して近付いて来た。
その気配に気付いたミシェルは少し驚きながら彼女と、メモしたURLを交互に視線を送る。


「あら?それは?」

「あー…、えっと…これは……」


URLを見つけたシェルマリンに聞かれると、ミシェルは答えにくそうな表情を浮かべた。
≪サクレイド学院≫に関する悪口などが書き込まれた裏サイトを、現役の防衛局員に見せて良いものなのか。
情報学の教師であるラウネに閲覧させて貰ったとはいえ、後で怒られそうな予感がする。


「見慣れないURLですねぇ…。……まさか詐欺に繋がるサイトじゃありませんよね?」

「んなワケねぇだろ。それの何処が道化会に繋がりそうなモンだっての…」

「でしたら教えても良いでしょう。大丈夫です、秘密は守りますから」


誤解を解かした後のシェルマリンの微笑みに、ミシェルは頭を掻きながら悩む。
ピュアリティ・クラウンは聖冥諸島を脅かす存在から守る為に、あらゆる情報を駆使して行動している。
特に隠密工作部は手段を選ばなさそうな印象があるが、都合の悪そうな報道は流れていない事から、守秘義務はちゃんと貫いている様だ。


「……誰にも言わねぇよな?」

「もちろんです」


医療部の部長とはいえ、一人の防衛局員としてのプライドがあり、局長であるリコリスに篤い忠誠心がある。
こちらは裏サイト経由と云っても、内容はネットによる報道でも取り上げられる事柄なのでここは伝えても良いかという結論に至ったミシェル。


「このURL、実は『サクレイド学院の裏歴史』っていう学院の裏サイトのヤツなんだ」

「裏サイト!?どうやって辿り着いたんですか!?」

「情報学のラウネ先生に教えて貰ってな。リヴ抹殺の舞台を何で学院の中にしたのかずっと気になってたんだ。シュリ姉には“有力貴族にも話を聞く必要があると思う”って言ったけど」

「あ、その話なら彼女からもお聞きしました。神子だけでなく有力貴族も、道化会の恨みの対象だと予想しているのだとか」


裏サイトの話が出た時には驚きの声を挙げたが、閲覧目的を告げるとシュリから情報を得ているのですぐに落ち着きを取り戻した。


「ああ、全員とは限らねぇけどな。んで、俺が気になったのは1年前、学院でプロヴォーク家の長男が殺された事件だ」

「それは私もよく覚えています。記者会見に応じた被害者の父親のロバートさんが、容疑者の同級生に対してかなり憎しみを抱いていた様に見えましたから…」


自らの息子を失った悲しみと、彼の命を奪った殺人犯に対する怒りは、冷静を失う程激しい感情が溢れ出る。
現在は学院長のファウンダットによる説得で思い留まったらしいが、知った直後は今すぐにでも仇討ちをしようという勢いに見えた。
この話を聞くと、シェルマリンはまさかと思いミシェルに問い掛ける。


「昨日の襲撃事件はロバートさんが!?」

「何でそうなるんだよ…。俺が気になってるのは容疑者の方だ」


有り得ない発言にミシェルは呆れつつ、メモにあったURLを入力して『サクレイド学院の裏歴史』を見せる。
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