Story.04≪Chapter.1-4≫

学院長のファウンダットもその一人である為、彼の名誉を傷付けようとする何かがありそうな気がする。
だがそれは、聞き込みだけでは得られそうにないと思い、ネットでの検索を頭に入れる。


「では今日はこれにて終了します。道化会に関する情報収集、忘れないようにね」


アンヘルが下校の挨拶を終わらせた所で、2年生の生徒達は街での聞き込みをすべく学院を出ようとする。
リヴマージはレヴィンとカイザーを呼び掛け、エンドルも彼女の下へ足を運ぶ。
そんな中、ミシェルは廊下に出た所でセロンと遭遇し、彼女に続いて201教室を出たユリアンとクラリネとアンナも彼と目が合った。


「ミシェル、ちょうど良かった。剣術の修行に関してだが、アンヘル先生との話し合いで今日もなしになった」

「あー、こっちは宿題として道化会に関する情報収集しとけって言われてたからな。師匠は?」

「これから他の教職員の皆さんと共に、アイドライズ島内のパトロールをする事になった。昨日、あんな事があったんじゃ生徒やその家族だけじゃなく、他の島民達も不安がっているみたいだし」


まさか“剣帝”が≪クロスラーン≫の見回りをするとは、こちらとしては目立つ行動は避けたいとの思いに反する彼の役割にユリアンは「えっ?」と驚く。


「セロン先生がそんな事したら、目立っちゃって逆にヤバいんじゃないですか?」

「私はブルーライドを担当する事になったんだ。ラッセル殿の依頼も兼ねてね」


≪ブルーライド≫とはアイドライズの北に位置し、闇の勢力に占領され島のほとんどが瘴気に溢れる北の島―ガーディアナへの船が停泊している港町の事だ。
ガーディアナは分断戦争以降、誰も足を踏み入れる事が出来ない島と云われたのだが、3年前にミュレイの父親であるラッセルが傭兵達と共に南東部での瘴気の除去に成功。
その繰り返しでヒトが住める領域を増やすべく、除去された地点を港町≪パージフィールド≫として拠点を構え、≪ブルーライド≫との航路を繋げたのを機に、彼に協力したい傭兵や冒険家達も増えているという。
ラッセル自身はアイドライズとガーディアナを行き来する生活を送っている為、昨日の事件を聞き付けて護衛を依頼されたとセロンは話す。


「セロン先生も大変ですね…」

「彼はガーディアナ解放における重要人物の一人だからね。道化会はアイドライズに潜伏しているとも限らないし」

「他の島から来たって事も考えられるのか…」


現時点で道化会の情報が何もない状態だと、アイドライズだけに絞るのは良くなさそうだ。
リヴマージの抹殺が目的だとしても、本拠地そのものがこの島にあるとは限らない。
だとしたら聞き込みも≪クロスラーン≫の住民だけでなく、他の街の住民も話を聞く必要があるという考えに行き着いたのが一人。


「だったら私もセロン先生に付いてって良いですかーっ!?」

「ええっ!?」


クラリネが手を上げて何度も飛び跳ねながら、セロンの同行を求めていた。
付いて行った所で邪魔になりそうな気がする、彼女の要望にミシェルとユリアンとアンナは不安げにそう思っていた。
道化会の会員らしき者を見ても戦うなとは言われたが、正義感が溢れるクラリネの事だから、目撃したらじっとしてはいられないに違いない。
そこでミシェルはユリアンとアンナを小声で呼び、クラリネとセロンに聞こえない程度で話し掛ける。


「クラリネが師匠の手伝いをしたトコで、役に立つと思うか?」

「かえって足手纏いになりそう」

「迷惑を掛けそうな気がするわ。セロン先生に限らず、ラッセルさんにも」


アンヘルが勧めた通り、サポートに徹していれば話は別だが、攻撃に転じて返り討ちに遭いそうなのが親友3人の予想である。
クラリネを止めたいのは山々だが、セロンが向かった先に道化会が潜伏する場所があるかもしれない。
そうでなくとも会員と遭遇する可能性もあるので、ユリアンが意を決してクラリネとセロンに顔を向ける。


「セロン先生、私もクラリネと一緒にブルーライドに付いて行きます!聞き込みの範囲はクロスラーンだけとは言われてませんし、先生達の邪魔もしませんから!」


何と彼女も≪ブルーライド≫に行く事を宣言し、クラリネは「ホントにっ!?」と嬉しそうな顔をしながら言ってきた。
この発言は他の街からの情報を得たいという思いがあると受けがちだが、ミシェルとアンナにとってはユリアンが同行する事によって、クラリネの暴走を阻止する魂胆が見える。
9/15ページ