Story.04≪Chapter.1-4≫

まず先に接近戦に持ち込んだのはレヴィン、両者が持つ剣が激しく交錯して押し合っている。
その間にカルロスが周囲を走りながら銃口に風属性の魔力が纏い、エンドルの視界から外れた場所から引き金を引く。
それに気付いたレヴィンは押した勢いの反動の如くバックステップで相手の距離を取ったと同時に、右方向から風の弾丸が次々とエンドルに襲い掛かる。


「くっ…!」


即座にそちらに方向転換して≪コールドエッジ≫で防ぐエンドルだが、対策が遅れた為両腕に2ヶ所ずつ掠り傷が付いた。
後に左に移動して難を逃れるも、今度はカイザーが≪ティアマット・エンペラー≫の黄金の刃を先端にして突っ込んで来る。
白い結晶の刃と交錯させた直後に縦回転に振り回しては、メタリックグリーンの刃と交互にぶつかり合わせる。
そして何度も振り回しながら相手の動きを見極め、チャンスを窺う。


「君、変わった槍を扱うんだね」

「それがどうした?」

「いや、そういうタイプの槍は初めて見たから、ちょっと気になっただけだよ」


会話を挟みつつ同じ事を繰り返すと、エンドルが持つ≪コールドエッジ≫から氷属性の魔力を感じた。
身体を凍結させる事で動きを止めようとするつもりだと予想したカイザーは、剣を振り払って少し下がり、回避の態勢に入る。


「その判断は見事。だけど僕の狙いは…」


エンドルは彼の行動を褒めながらも、向きは二丁拳銃を構えるカルロスがいる右の方へ。


「フリーズ・ラッシュ!!」


≪コールドエッジ≫を思い切り振ると、凍て付く氷の結晶が一直線に走る様に出現した。
それが自らの方に近付いて来ると、カルロスは構えを解いて左へローリングで避け、態勢を低くした状態で銃口をエンドルに向ける。


「アクア・バースト!!」


だがそれを読まれたかの様に3つの大きめの水滴が付近に現れ、対応出来なかったカルロスはその破裂の衝撃を喰らった。
幸い威力はあまり感じられなかったが、剣と魔法、二つの攻撃手段を上手く使い分けている事が分かった。
その間にレヴィンは≪シャインエッジ≫に攻撃力を高める炎属性の補助魔法―≪ヒート・ブレッシング≫を掛け、再びエンドルに接近して何度も斬り掛かる。


「事前のバトル、拝見させて貰ったよ。やはり君は代々神子を守護するフィデリー家の嫡男だけあってなかなかやるね」

「貴方こそ…、武道大会で優勝した事だけあって強いですね」


お互いに相手の実力を認めつつ、次の一手を探ろうとした瞬間…、


「エア・キャノン!!」


エンドルの背後にいたカルロスが、二丁拳銃の銃口から風属性の魔力が纏った巨大な空気の球を発射させた。
それに驚いたレヴィンは素早く後ろに下がり、エンドルもバックステップをしながら次の魔法の詠唱を始めようとすると、今度はカイザーが複数の風の刃を飛ばす魔法―≪ウィンド・カッター≫を放って後者の進行を妨害した。


「くっ…!?しまっ…!」


風の刃に気を取られている内に巨大な空気の球が迫り、それを見た時には既に遅くエンドルは直撃して右にふっ飛ばされて倒れ込んだ。
その姿を見たカルロスは手応えありと笑みがこぼれるも、相手はゆっくりと起き上がる。
やはり2回の優勝経験を持つチャンピオンだけあって、そう簡単には勝たせてくれない様だ。


「今のは危なっかしいけど、なかなか良いチームワークだったよ…」

「こんなモン、俺らにとってはいつもの事だ」


その中でエンドルが先程の攻撃を評価すると、カイザーは呆れながらもそう返した。
彼らから少し離れた位置では、レヴィンがカルロスに困った表情を浮かべながら話し掛ける。


「カルロス…、少しくらい合図してくれると嬉しいんだけど」

「相手チャンピオンだぜ?そんなのいちいちやってたらバレて避けられちまう」


あれは仲間を巻き込む前提で放ったのか、反省の意思を示さないカルロスにレヴィンは溜め息を漏らすしかなかった。
3/15ページ