Story.04≪Chapter.1-4≫

☆☆☆

時は遡り、時刻は11時15分。
3時限目の武術の授業が行われているモニタールームでは、ミシェル達2年生が次の対戦が映る画面に注目していた。
ここからは協力者であるエンドルが指名した、レヴィンとカイザー、そしてカルロスとの手合わせが行われるからだ。
一人の王者(チャンピオン)がまとめて3人の生徒達を相手にするというのは、余裕があると見て良いだろう。


「まさかカルロスの挑戦をそのまま受け取るとは…」

「俺も後で勝負しろって言っとこうかなーっ!!」


エクセリオンはカルロスによる1時限目での宣言が実現した事に溜め息を漏らし、バーンは3人の同級生達を羨ましそうに叫んでいた。


「これが終わったら、ミシェルも申し込んでおく?」

「こっそり言ってみたんだが、“女の子と戦うのは遠慮しとくよ”って言われちまった」

「え?何それ…」


その一方でミシェルがエンドルに挑戦の話を持ち込んだ時に言われた言葉に、ユリアンは引き気味に反応した。
武道大会や勝ち抜きバトルを含む闘技場での決闘では女性も参加が可能であり、組み合わせによっては当たる可能性も十分にある筈だ。
偶然対戦相手が全て男性だったのか、それとも本来戦う筈だった女性に何かあったのだろうか。
様々な思考が巡るが、エンドルが戦う姿を見る前に疑うのは良くない。
まずは四王座の二人を相手にどれ程の“力”を見せ付けるのかが第一の問題だ。
…残りの一人は仲間を巻き込む真似をしないかどうかが問題であるが。


『エンドル殿、本当に1試合だけで3人まとめて相手をするんですね?』

『構いません。武道大会の予選では更に多くの相手と戦いましたから、このくらいは問題ありません』


画面の向こう側では、アンヘルがこの手合わせに関する確認をし、エンドルは頷きながら自身の武器である白い結晶の剣―≪コールドエッジ≫を出現させた。
≪エンシューズコロシアム≫で行われた試合は配信でも見た事がないミシェルだが、これは彼の実力を見極める良い機会だ。
ここはじっくりと、他の生徒達と共に戦況を見つめる事にした…。

☆☆☆

レヴィンとカイザーとカルロス、そしてアンヘルとエンドルの5人は、アンヘルが用意した電脳空間(バーチャルスペース)内の闘技場の上に立っていた。
ここにいる3人の生徒対闘技場のチャンピオンの手合わせが今かと始まろうとしており、審判を務めるアンヘルはそれぞれに視線を送ってから開始の号令を掛ける。


「ではこれより、レヴィン、カイザー、カルロス対エンドル殿の試合を始めます」

「宜しくお願いします!」

「こっちは手加減しないからな」

「思いっきり楽しもうぜ、チャンピオン」

「君達がどこまで僕を追い詰められるか、見せて貰うよ」


レヴィンは一礼をし、カイザーとカルロスはそれぞれの武器を構え、エンドルは余裕の面持ちで3人を見ている。


「当初は一対一の予定でしたが、エンドル殿のご要望で3対1での対決となりました。ルールはレヴィン達3人のいずれかがエンドル殿をノックアウト、もしくはエンドル殿が相手の3人全員をノックアウトさせた時点で試合終了。ギブアップも同様に扱います」


4人が戦闘態勢に入っている中、アンヘルは今回の手合わせのルールを説明していた。
これまで公式戦の相手は全て同級生ばかりだった為、レヴィンは緊張しているのか≪シャインエッジ≫を持つ手が僅かに震えていた。


「今更ビビったか?」

「…いや、大丈夫」


それに気付いたカイザーにそう言われると、一度目を閉じて呼吸を整えつつしっかりと握り直す。
闘技場のチャンピオンに対し、こちらも2年生の代表として、そして神子を守る四王座の一人として恥じた戦いは出来ない。
再び目を開いてエンドルに真剣な眼差しを送った時、アンヘルから「始め!」と開始の合図が入ったと同時に4人は動き始めた。
2/15ページ