Story.03≪Chapter.1-3≫

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時刻は11時、2階のモニタールームにてエンドルがいくつかの画面に映る2年生同士の対戦を見ていた。
剣術や銃撃、様々な武器の交錯だけでなく魔法の行使による自身の強化、もしくは相手の行動を制限させる姿が目に入る。
全ての生徒達が互角で戦っているかと思いきや、一つの画面ではカイザーが圧倒的な実力を見せて相手を降参させ、また別の画面では一人の生徒が戦術ミスにより追い詰められてしまっている。
この時間は3時限目である武術学の授業の真っ最中であり、これらの対戦で勝ち抜いた生徒達の中から、3人がエンドルと手合わせを行うというアンヘルの提案で今に至る。


「うーん…、他のヒトとの実力の差が開いているヒトが何人かいるな…。……ん?」


エンドルはそれぞれの画面を見比べている中、レヴィンがユリアンの攻撃を見極めながら的確に剣を振るっている映像を目にした。
前者は相手の攻撃パターンとモーションを見逃さず、隙を見ては炎属性の魔力を即座に集中して技を繰り出す。
後者は斧による力勝負で押し込もうとするが、大振りになっている攻撃は全て回避されてしまっている。
しかしこのままでは終われず、ユリアンは魔法での攻撃に切り替えて放ち、小規模な爆発によって少しで視界を悪くさせようとする。
だがレヴィンはそれを気にしていないかの様に突っ込み、油断した彼女の斧を剣で弾き飛ばした。
そうして首の真横に刃が触れられた時、ユリアンは悔しそうな顔をしながら両手を挙げた事でレヴィンの勝利が確定された。


「さすがはニール殿の息子さんだ。あとは…」

『これで終わりにしますわよ!ミシェル・N・ストライド!!』


彼との対戦が楽しみだと感じた直後、別の画面からエリザベートの叫び声が聞こえた。
エンドルはそちらに視線を送ると、彼女が炎属性の魔力を大いに集中している所であり、対戦相手は1時限目の教室内で堂々と刀を置いて着席していたミシェル。
その時は互いに悪口を言い合っていただけに、今回は因縁の対戦と云った感じか。
見る限りではエリザベートの周りに溢れる炎属性の魔力が莫大に膨れ上がり、強力な魔法攻撃を放って来ると予想出来る。
対するミシェルはと言うと、刀はまだ納めていないが防御や妨害はおろか、攻撃態勢すら取っておらずじっと相手を見つめたままだった。
このままでは彼女がやられると思っていた時、その画面が大きな炎と煙に包まれて何も見えなくなってしまった。
おそらくエリザベートが放っただろうが、今のは直撃したら一溜まりもない威力に見えた。
ミシェルは大丈夫なのかとハラハラしながら画面を見つめると煙が晴れ、向こう側の様子がハッキリと見えた瞬間、仰向けで倒れていたのはエリザベートだった。
その様子を呆れながら刀を鞘に仕舞い、何だか物足りなさそうな表情を浮かべるミシェルの姿に、エンドルはとりあえず無事だった事にホッと一息を付いた。


「貴方程の実力を持っていそうな生徒が誰なのか、分かりましたか?」


すると横からアンヘルの問い掛けの声がし、エンドルはそちらを向きながら苦笑する。


「まだ未知数なヒトもいますが、気になる生徒が二人います。カイザーとレヴィンですね」

「ほぉ…、さすがですね。彼らはこの学院の成績優秀者であり、リヴマージを守護する四王座という4人衆の二人です」

「成績優秀者、ですか。確かにそれに相応しい実力がありますね。是非とも、彼らと手合わせをしたいモノです」


後に名を挙げた二人に期待するかの様な笑みを浮かべ、アンヘルも自慢の教え子を注目してくれた事で表情もにこやかだった。


「僕と手合わせする予定は3人でしたね。ではその二人と、僕に挑戦したいと言うカルロスでお願い出来ませんか?」

「おや、男子生徒だけですか?」

「女の子とやり合うのはちょっと…。それに、挑戦者の希望に応えるのは闘技場のチャンピオンの務め、ですので」


女子生徒と戦うのは気が引けるエンドルだが、武道大会で2回の優勝を果たした者としての自覚はある上、挑戦者を拒む事なく受け入れる姿はチャンピオンとしての風格がある。
学院長も頼もしい協力者を手に入れたモノだと頷く一方、チラッと視線をミシェルが映る画面に移す。


―……これじゃあ、見ただけで認められるのは難しいかぁ…―


彼女の勝因はエリザベートが放とうとした上級魔法の失敗によるモノであり、“第六代剣帝”に鍛えられた剣術は見られなかったのを受けて少し残念な気持ちになっていた。
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