Story.03≪Chapter.1-3≫

教室から見ている生徒達と教職員の目には、彼の左隣から青い瞳を持ちショートカットの茶髪で小太り体型。
黒いTシャツに深緑のズボン、黒いブーツとこげ茶の手袋を身に纏い、両腕に銀色のブレスレットを装着した男性が映し出された。


『紹介しよう。彼はエンドル。西の島コマンダル出身で、数々の有力貴族達の護衛とブランバード派閥に関する調査に参加した経験がある。エンシューズコロシアムでの武道大会では優勝が2回、勝ち抜きバトルでは40戦連続勝利を収めた事もあるそうだ』

『初めまして、エンドルと申します。此度は神子様の護衛の任を就く事になりました』


男性―エンドルは深々と頭を下げ、画面の向こう側の生徒達と教職員に挨拶を済ませた…。

☆☆☆

時刻は8時30分、201教室にてミシェル達2年生の生徒は、教壇の前に立つアンヘルとエンドルに視線を送っていた。
今行われている1時限目はホームルームであり、この時間を利用してアンヘルは改めて教え子達にエンドルを紹介している所だ。


「集会での学院長が言った通り、今日からエンドル殿がリヴマージの護衛を兼ね、道化会に関する情報収集に協力してくれる事になりました」

「2年生の皆さん、しばらくの間ですが宜しくお願いします」


エンドルがにこやかな表情で挨拶した後、生徒達から拍手が送られた。
生徒達もそれぞれ自己紹介をした後に、彼に関する質問タイムが始まる。
そこで最初にエクセリオンが手を上げ、アンヘルに許可された直後に立ち上がる。


「エンドル殿、まず最初に属性は何ですか?どういう戦い方が得意なのかも知りたいのですが」

「属性は水と氷。主に剣による接近戦だけど、水属性の回復魔法による治療も得意なんだ」


答えを聞く限り、ミシェルと同じ属性の組み合わせにして似た様な戦い方をするらしい。
ただ単に勝ち上がる為に剣を振るうだけでなく、護衛対象者を死なせない為にも治療手段を習得したという印象を与える。


「学院長が有力貴族の護衛の経験があるとおっしゃってましたけれど、以前ビューティリス家の誰かと一緒に行動した事はありますの?」


次にエリザベートが自らの家系の者と関わりがあるのかという質問に、エンドルは微笑みながら回答する。


「うん、君のお父上であるアロガント殿とね。それと、レヴィンのお父上のニール殿と一緒にワーシップの神殿の警備員として働いた事もあるんだ」

「そうだったんですか!?全然知らなかったわ…」

「まぁ、警備したのは神殿の外の周辺でしたから、リヴマージ様とはなかなかお会いする機会がありませんでしたので、知らないのも無理はありません。今ここでお会い出来て光栄です」


実はリヴマージが住む神殿の元警備員であった事に、驚きの声がいくつか上がった。
サクレイド学院がある≪クロスラーン≫から西にある隣町―≪ワーシップ≫は、毎日の様に島の平和と残りの島々の奪還を願う参拝客が訪れる事から『信仰都市』と呼ばれていると同時に、その神殿は最西端にある。
エンドル自身は彼女とはこれが初対面だったのを受けて苦笑いを浮かべるが、有力貴族達との関わりがあるのならばファウンダットも彼を信頼して学院に招いたのだろう。
それに加え、この学院に通う生徒のほとんどが12歳から15歳辺りの子供である為、大会での優勝経験を持つ大人が側にいれば、守りも兼ねる教職員達の負担も多少なりとも軽くなる。
そう誰もが思われる筈が…、


「エンドルの兄ちゃんよぉ、放課後で良いからちょっと俺と手合わせしてくんね?」

「えっ?」


カルロスがいきなり勝負を申し込み、エンドルは目を丸くしながら彼を見ていた。


「おいおい…、学院長の話を聞いてなかったのか?相手はエンシューズコロシアムで行われた武道大会で2回優勝し、勝ち抜きバトルは40連勝もした事があるんだぞ」

「俺、そいつが戦ってるトコ見た事ねぇし。エクセリオンはあんのか?」

「いや、それはないが…」


闘技場での戦績の話題はあったが、実際に彼が戦う姿を見た生徒は誰一人いなかった。
アンヘルも見た事がないらしい様で、カルロスの言葉を聞いて「うーん…」と考える仕草をした後、何かを思い付いた表情を浮かべながら全員に視線を向ける。
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