Story.03≪Chapter.1-3≫

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時刻は17時5分、怪物の襲撃に巻き込まれたミシェル、エクセリオン、ユリアン、バーン、カルロス、ステファニー、アンナ、そしてリヴマージ、レヴィン、カイザーは担任のアンヘルの呼び出しを受けて201教室にいた。
今回起きた事件についての報告を一通り行い、先輩である3年生に被害が出たが死者はいない事にリヴマージはホッと一安心していた。
するとここでアンヘルがこの教室に入り、教壇に足を運びながら10人の生徒に目を通してから話を始める。


「まず、ここにいる皆が無事で良かったよ。特にリヴマージ、君に何かあったら僕は有力貴族達に何を言われるか分かったモンじゃないからね」


最初は私情を挟みつつも、自らの教え子達が無事である事を笑顔で述べたが、リヴマージは申し訳なさそうに彼を見ている。


「アンヘル先生、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした」

「君が謝る事じゃないさ。電波が妨害された事を知ったのはもっと後だったから、あの時は僕の判断ミスだよ」


職員室付近で仮面を被ったローブの者が怪物に変貌した所を見た時、撃退したのは良いが問題はその後だった。
この時は通信機器で他者への連絡が出来ない事を知らず、彼女にレヴィンとカイザーと共に広くて安全な場所へ避難せよと指示した。
直後に2階は同じ様に続々とヒトから怪物に姿を変え、3年生も思わぬ奇襲で苦戦を強いられた。
最終学年といえど、さすがにキツイかと思い通信機器で応援を呼ぼうとした時、ノイズが響いて誰とも繋がらなくなっていたのだ。
まさか地下2階の管制室に何かあったのではと、3年生の担任であり情報学の教師であるラウネと共にそこへ向かい、妨害に遭いつつも原因を探った。


「僕が見た限り、管制室は特に怪しいモノはなかったし、ラウネ先生もその様なモノがなくて困ってたんだ」

「まさか屋上に電波を妨害する機械があったなんて、普通は誰も思いませんからね…」


アンヘルの事情を聞き、エクセリオンは溜め息混じりに屋上での出来事を振り返っていた。


「エクセリオンは屋上にいたの?」

「ああ。ミシェルとバーンとカルロスとな。あの機械…、ジャミングアーマーと言ったか。ミシェルが機能を停止させて、怪しいと思われる赤紫の結晶を取り出す事には成功した」

「取り出す事には…?」


それをリヴマージが興味津々に聞いている中、最後の言葉に引っ掛かりを感じていたが、この事についてはミシェルが説明する。


「ジャミングアーマーってヤツが動いてる時から光っててな。俺がそいつを停止してもまだ光ったままだったから、電力とは違う別の“力”が働いているかどうかを調べようとしたら、結界に阻まれちまった」

「それは厄介だね」

「で、取り出したのは良いんだが、あの状態でどうすりゃ良いんだって困ってた時に師匠が俺達の所まで来てたんだ。そこで師匠が、封殺術の“力”を利用して結晶を真っ二つに壊した」


結晶の中にある魔力から結果を出現させ、消すにはそれを断たなければならないからという理由で壊すに至ったらしい。
そのおかげで通信が復旧されたのだが、剣術だけでなく結界の動力も見極めていた事から、セロンの凄さを思い知るミシェル達10人。
真っ二つになった結晶は、後に彼がピュアリティ・クラウンの技術開発部とアルケミスト協会に調査を依頼したとアンヘルが話した。


「エクセリオンもミシェル達もご苦労様。……さてと、大変な事になったね」


屋上で奮闘したミシェル達を労った後、アンヘルは真剣な表情で今後の事についての話題に入る。


「既に聞いた人もいると思うけど、今回の事件を引き起こしたのは『道化会』という集団。主犯は“仮面の悪魔”っていう革命者だけど、現時点で見た人は誰もいないから正体は不明。リヴマージ達の前に現れたのは、その代行者であるクアトロ・レイドの一人、“粛正の炎”っていう奴で合ってるかい?」


実際に対面した生徒達の話を元にまとめつつ、レヴィンに確認を求めた。


「はい、確かに髑髏の仮面の奴はそう言ってました」


容姿は分かっていても仮面を被っていては顔が分からず、大きなロングコートのせいで正確な体格も不明、増してや不協和音な声音である事から男か女かも分からない。
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