Story.02≪Chapter.1-2≫

煙から仮面の目の部分が僅かに見え、しばらくして晴れると髑髏の仮面を被った人物は無傷、それもロングコートすら焦がされぬまま立っていた。


「なっ、何っ…!?」


攻撃は確かに当たった、それなのに悠然と立っている姿にレヴィンは驚き、カイザーは目を細める。


「無駄だ。その程度の攻撃、我には効かぬ」


その人物の両手には炎が纏っており、今かと反撃しそうな雰囲気を見せる。
リヴマージは即座に≪ピースリード≫に地属性の魔力を集中し、自分達3人に防御術を掛けようとすると…、


「リヴっ!後ろ!!」

「えっ?」


レヴィンの掛け声で詠唱を中断し、振り向いた時には既に1体の怪物の鋭い爪が彼女を襲い掛かろうとしていた。
カイザーもしまったとそちらに視線を送った時には、何をやっても間に合わずこのままでは確実に殺される。
そう誰もが感じた時、何処からか飛び出して来た大きな岩が怪物の顔面に直撃して倒れ込み、更には髑髏の仮面を被った人物が“誰か”の襲撃によってレヴィン達3人から右方向に遠ざかっていく。


「リヴ、無事か!」


すると後方からリヴマージを呼ぶ声が響き、3人はその方向に視線を送ると、観客席側にエクセリオンが魔導書を開きながらこちらを見ていた。
彼の側にはバーンとカルロス、そしてセロンがおり、やっと援軍が来たかと彼女はホッと一息を付いた。
では髑髏の仮面を被った人物に、自分達から遠ざける様に攻撃を仕掛けたのは誰か。
レヴィンとカイザーはそれが気になって右に目を向けると、薄い水色の長髪をなびかせながら蒼い輝きを放つ刀を振るうミシェルの姿があった。


「貴様、一体何処から…」

「その前に両手が燃えてるぜ。水蓮刃(スイレンジン)!!」


蒼い輝きを放つ刀―≪斬蒼刀≫から水属性の魔力が溢れ、髑髏の仮面を被った人物の両手に纏う炎を掻き消す勢いで振るうと、その人物は危機を感じて宙返りで回避した。
しかしその攻撃が明らかに不利な属性だと見て、一旦両手に纏う炎を消した。


「そこのお前、さっきのバケモンや黒い機械よりも雰囲気が違うな。リヴ達を襲ってた所を見ると、お前が今回の事件の主犯か?」

「雰囲気からしてそれっぽいなぁ。ちょっと俺と一戦交えてくんね?」


ミシェルが問い掛けている最中、カルロスは喜々としながらそちらに歩み寄り、≪アサルトコンバット・ウィンド≫を取り出す。
それを見たエクセリオンは「頼むからすぐには発砲しないでくれ…」と小声で呟きつつ、レヴィン達3人の方に近付く。
セロンも同様に近付いては彼らを守る様に少しずつ前に歩を進め、バーンはミシェルとカルロスの方へ向かう。


「黒い機械…。我ら道化会が開発したジャミングアーマーの事か」

「道化会!?機械のヤツそんな事言ってたな!何だその道化会ってヤツは!!」


黒い機械の名称を語る髑髏の仮面を被った人物だが、バーンが気になったのはその機械が戦闘直前に放った言葉(ワード)だった。
これにはレヴィンもカイザーも、そしてリヴマージとセロンも聞いた事がなく、4人はエクセリオンに問い掛けるが「俺にも分からない」と返された。


「そういや、“クアトロ・レイドの命令で”って言って襲って来たな。そのクアトロ・レイドってヤツも聞かせてくれよ」

「そもそも、お前は誰なんだよ」

「……質問の多い奴らだ」


後にカルロスとミシェルからの質問が来た事に、髑髏の仮面を被った人物は呆れた様に溜め息を漏らした。


「まぁ良い、それらの質問には答えよう。道化会とは、分断戦争で散り散りとなった闇の勢力の残党、及び現在の聖冥諸島の現状に不満を持つ者が集う集団だ。それに属する者は各々の仮面を被り、『会員』と称している」


ただ意外にも回答してくれている事にエクセリオンは少しばかり驚くが、ここでまたもや屋上での黒い機械―ジャミングアーマーが放った言葉に反応した。
道化会の会員ではないが故に敵と判断され、自分達に向けて攻撃態勢を取った。
戦闘の末にミシェルが停止に成功したが、まさかその集団の実態が闇の勢力のみならず聖冥諸島の現状に不満を感じている者がいるとは。
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