Story.02≪Chapter.1-2≫

ミシェル達はそれを解除する方法がないので、ここは彼に任せて見守る事にした。


「では、始めよう」


セロンは目の前に現れた黄金の刀を手にし、同時に刃から白い光が溢れ始めた。
これは封殺術を行使する際に発する現象であり、その光に包まれたモノは有する魔力や能力を全て封じられる様をミシェルは目にした事がある。
そこからどう解除するのかと思いながら見つめると、セロンは刀を思い切り振り上げ、一心不乱に振り下ろして結晶ごと真っ二つに斬った。


「なっ…!?」

「「ええええぇぇぇえええっ!!??」」


これにはエクセリオンのみならず、バーンとカルロスも驚愕していた。


「師匠…、“結晶を壊せ”とは言ってねぇが…」

「いや、君達が見た結界はこの結晶の中から発したんだ。封じてもまた新たに出てくるのならば、いっその事壊した方が早いと思ってね」


まさか壊されない様に内部から結界を出現させるとは、面倒な仕掛けを入れたモノだ。
そう思っている内に、ミシェルの通信機器から聞き覚えのある少女の声が聞こえた。


『ミシェル…!?ミシェル!?聞こえる!?』

「ん?ユリアンか?」

『良かったぁ~、やっと繋がった。電波を妨害してる原因を突き止めたんだね!』


相手は2階でミュレイ達3年生とステファニーとアンナを手伝っているユリアンであり、ノイズの音もなくクリアに聞き取れている。
ミシェルは「どうやらそのようだな」と返しながら、真っ二つになった赤紫の結晶に視線を送った。
その中の光は既に消えている事から、これが電波を妨害していた原因なのはほぼ確実だろう。


「で、そっちはどうなんだ?」

『ユリアン達が来てから、こちらは例の怪物を全て倒す事が出来た。敵の増援もない』

『ステファニーの尽力もあって、ひとまず私達3年生は全員命に別状はないわ』


更にバラッドとミュレイからの良い知らせを聞き、ホッと一息をついた。


『ところで、少し前に階段でセロン先生を見掛けたんだけど…』

「ああ、師匠なら俺らと一緒に屋上にいる。電波の妨害の原因みてぇなモンをぶった切ったから、後でお礼言っとけよ」

「ぶった切ったって…、もう少し言い方を…ん?」


ステファニーへの返答にセロンは苦笑いをしながら反応すると、彼が持つ通信機器も呼び出しがあった。
互いに今回の策の成功を喜び合うミシェル達4人に、深刻な顔をしながら通信を切って目を向ける。


「…どうやらこれだけでは終わらないみたいだ」

「何があったんです?」


仮面を被ったローブの者と、その姿から変貌した怪物はもう現れず、電波も今や正常に発する事が出来た。
これらの他にも異常事態があるのかとエクセリオンは真剣な表情で続きを聞き、ミシェルも自身が持つ通信機器を操作し、2階にいる生徒達にも聞こえるよう設定する。
彼女の行動を見てセロンは一息をつき、真剣な顔つきに変えてこう言った。


「グラウンドでレヴィンとカイザー、そして神子のリヴマージが例の怪物達に襲われている。しかも次々と増援が現れているそうだ」


既に反省文を書き終わって帰宅したと思われたカイザーが学院内に残っており、レヴィンとリヴマージまで一緒にいるという事実に、ミシェル達4人は驚愕した。
通信相手である2階のユリアン達にも驚きの声が上がり、ざわつきが耳に響く。


『あの3人、まだ帰ってなかったの!?』

「急に現れた怪物、さっきまで妨害された電波…。これはリヴの命を狙う為の計画的な襲撃だと思えば、俺達生徒と先生方が分散されたのも納得がいく!」

『そんな…!じゃあこっちに来た怪物達は皆、気を逸らす為のオトリって事!?』


同時にこれまでの状況を整理していたエクセリオンの推測に、衝撃が走るミュレイの言葉がミシェルの耳に残る。
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