Story.02≪Chapter.1-2≫

完全に攻勢に入った相手に対し、カルロスはますます楽しくなりそうだと感じている。


「防御は捨ててひたすら攻撃ってか?上等じゃねぇか」

「どちらも当たれば一溜まりもない。気をつけろ」

「分かってる。とっととケリを着けようぜ」


エクセリオンはたった一撃で致命傷になり兼ねないと仲間達に忠告し、ミシェルも雷の剣に警戒しつつ足の部分に向かって駆け走り、バーンも続く。
この二人が近付いて来た事により、黒い機械は上に上げた左のハンマーを思い切り振り下ろした。
ミシェルとバーンはその動きを見切って左右に分かれて回避するが、床に叩き付けた瞬間に衝撃波が発生した。


「くっ…!」

「うおっ!?」


ガードが遅れた二人は少しふっ飛ばされるも、エクセリオンが張ってくれたクリアブラウンのシールドのおかげで傷を負う事はなかった。
しかし先に掛けられたミシェルにシールドが消え、右から雷の剣の刃が迫る。


「敵はお前だけじゃないぜ、ピアシング・ショット!!」

「ロック・ストライク!!」


すると別の方向からカルロスとエクセリオンの声がしたと同時に、貫通性の高い2発の弾丸が足の部分へ、大きな岩は雷の剣へと直撃した。
これにより右下に掻い潜れる部分を見つけたミシェルは態勢を立て直して素早くそこを駆け抜け、≪斬蒼刀≫に水の魔力を纏わせる。


「そろそろ終わりにするか、デカブツ…!」


彼女の目に映るのは、左足の部分に撃ち込まれた弾痕により僅かながらケーブルが見えている機械の内部。


「水蓮刃(スイレンジン)!!」


どんなに防水加工が施されていても、“穴”に水が入れば高確率で故障する。
それを信じてひたすら傷を付け、後方からカルロスによる銃撃も続き、刃に纏った水が弾痕の中に入り込む。
すると左足の部分から火花と煙が発生し、小さな爆発が起きた所で、炎属性の魔力により熱を帯びた赤いレーザー状の刃に、青の背景と白い水滴のマークが描かれた≪エレメントカード≫を貼り付けたバーンが急接近する。


「うおおおおおっ!!スチーム・ブレイド!!」


≪セイバープロミネンス≫が濃い水蒸気に包まれた状態で思い切り振り、ひしゃげて硬度が弱まった左足の部分を斬ると、黒い機械はバランスを崩して左へと傾いた。
それでも負けじと右腕である雷の剣を振るうも、ハッキリとした動きを見切って回避しては右足の部分に狙いを定める。


「どんどん行くぜ!」

「手早く頼む。ロストサイト・リーフ!!」


こちらが優勢とはいえ、巨大な機械による暴走は学位にとっても看過出来ない。
確実に素早く停止させる為、エクセリオンは出現させた無数の葉を目の部分に覆わせ、視界を失わせる。
黒い機械はそれによってミシェル達4人の姿を捉える事が出来ず、右腕の動きが止まった。
この隙にと、左足の部分を傾けさせた時と同じ方法で貫通性の高い弾丸が右足の部分に撃ち込まれ、ミシェルが水の魔力を纏わせた刀で斬り、最後にバーンによる水蒸気に包まれたレーザー状の剣でとどめの如く思い切り斬り付けた。
この状態で黒い機械は前方に傾き、4人が一斉にそこから離れた直後に『ズゥゥン!!』と大きな音を立てながらうつ伏せの状態で倒れた。
右腕に雷の剣がまだ同化している事から止まってはいないが、寝返りを打つ様な事はしないと見たミシェルは軽やかな動きで背部を渡り、頭部と刺さった氷の針の間にあるボタンを押した。


『システム、全停止…』


機械から発する言葉と同時に、雷の剣が崩れた様に電流が分散され、やがて右腕の部分に爆発が起きた。
エクセリオンは慎重に無数の葉を消すと、目の部分に灯された黄色い光が消えており、4人が近付いても襲う事はなくなった。


「よっしゃーっ!勝ったぜ!!」

「まだ事態が収まったとは限らんだろ」


勝利を喜ぶバーンだが、エクセリオンの言う通りこれで解決したかどうかは分からない。
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