Story.02≪Chapter.1-2≫

更に電波の妨害により他者への通信も不可能な事から、エクセリオンとステファニーは頭を悩ませるばかりである。


「ところで、アンヘル先生と他の教職員達は?」

「いつもなら職員室の筈だけど、こんな状況じゃいるかどうか…」

「俺とバーンは、さっきまでここでラウネに怒られちまってさ。あの女が下に行ってやっと解放されたって時にさっきのバケモンが来やがったんだ」

「ラウネ先生と言え、ラウネ先生と」


次に教職員の居所を聞くと、思い出したくないかの様な表情で語るカルロスから一人の教師の情報を得た。
彼が言うラウネとは、下で怪物と交戦している3年生の担任であり情報学を担当している女性教師。
制服の着方が乱れている、もしくは何の効果もないアクセサリーを身に付けた生徒を見掛けては急接近し、力強く正すよう厳命して来る事で有名だ。
バーンはネクタイを緩く締め、カルロスは気付いての通り、常に頭にゴーグルを装着している為、説教の対象になった事でげんなりとしている。
彼女を“先生”と呼ばない二人にエクセリオンが指摘する中、ステファニーは「あ、あの…」と右手をゆっくりと上げて呼び掛ける。


「3階は私達だけだし、皆無事だから…2階の方に行って来て良いかな…?怪我人がいるなら治療しなくちゃいけないって思って…」

「カイザーはいなかったのか?」

「うん。たぶん、反省文はもう書き終わってると思うわ」


一応、ミシェルは彼女にカイザーの所在の確認を求めたが、やはりそれ程長くは残っていなかったと感じて溜め息を漏らした。
ひとまず、学院内で被害が出ているのは2階、教職員が本当に職員室にいるのかすら不明であるのならば、この場で動ける生徒だけでも助けに向かわなくてはいけない。


「そうか、そうだな。ここからは二手に分かれよう」


この対話にエクセリオンが頷きつつ、この7人からグループを2つに分ける事を提案した。
2階で奮闘する3年生を援護するグループと、電波が妨害された原因を特定するグループ。
ミシェルはミュレイから教職員を探すよう頼まれてもいる為、後者の特定が成功したら速やかに通信機で連絡を入れるよう求めた。
トレーニングルームがある4階にて怪物と遭遇したユリアンの話によると、1年生は既に帰宅して誰もおらず、また怪しげな装置などは見当たらなかった。
教職員も見掛けなかった事から屋上に何かありそうだと見たエクセリオンは、ミシェルに視線を送りながらこう言った。


「管制室はラウネ先生辺りが見に行っているだろうから、俺達は屋上へ行くぞ」

「俺達は…ってお前も行くのかよ」

「ああ。あと、バーンとカルロスもな。ユリアンとアンナは、ステファニーと一緒に2階に行ってくれ」


管制室は教職員のみが出入りを許されている地下2階にあり、情報学の教師という事もあってラウネが確認に向かっているだろうと思われる。
先程のカルロスの話の通りならば、おそらく他の教職員達もそこをメインとして彼女と同行しているとエクセリオンは推測している為、まだ誰も行っていないであろう屋上に向かう事を提案したのだ。
2階に向かうステファニーの同行者として挙げられたユリアンについては戦力の増強、アンナは生徒会書記である事からミュレイとバラッドに対する説得と情報共有を託し、彼女達は「分かったわ」と受け入れた。


「屋上かぁ…。いかにもボスがいそうなトコだな」

「くぅーっ、何だかワクワクしてきたぜ!」

「お前らな…」


明らかに違う意味で喜びを示すカルロスとバーンにエクセリオンは愕然としており、ユリアンも呆れた目で二人を見ている。


「こんな時でもあのバカコンビは相変わらずね…」

「あいつらの事は俺とエクセリオンが見といてやるから、2階は任せた」

「ええ。ミシェル達も気を付けてね」


自分達の目的はあくまで電波が妨害されている原因を探す事であるが、仮に屋上にあったとしても邪魔が入る可能性がある。
エクセリオンはそれを想定してのグループを決めたのだろうが、やはり不安は完全には拭えない様だ。
それでも彼らの実力は確かな様なので、成功を信じつつ7人は二手に分かれて行動を始めた。
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