Story.02≪Chapter.1-2≫

しかし何枚書くのかは本人しか分からない為、枚数によっては既に終わって帰ってしまっている可能性がある。


「あのゴーグルを掛けた2年生…、確かカルロスと言ったか。例の怪物が出るなり笑いながら発砲をしていたな…」


するとバラッドの口から新たな報告が出ると、ミシェルは思わず愕然とした。
カルロスは魔人という、人間と魔族の混血種族(ハーフ)であるが故に好戦的であり、大量の敵、もしくは強敵が現れるとより一層戦う事に喜びを感じる。
夢中になって発砲しているせいか、付近にいる仲間が銃撃に巻き込まれそうになったという話もよく耳にし、その都度エクセリオンや教員に怒られている。
これにより周りから迷惑がられている様で、今は3階の方が気になる所。


「そうか…。んじゃ、2階は会長達に任せた。俺は3階見て来る」

「3階をか?俺が見た限り、不利には見えなかったが?」

「あー、いや…ちょっと気になる事があってな」


どちらが優位かに限らず、カルロスの周りに仲間がいるとなると別の意味で心配になってくる。
2階は安心だと見てミシェルは階段の方に足を運ぶが、伝え忘れていた事を思い出して振り向いた。


「それと、通信機は使えねぇぞ。電波が妨害されちまってる」

「何ですって!?」


通信に関する状況を聞かされるとミュレイは大いに驚き、バラッドも舌打ちをしていた。
これでは自警団やピュアリティ・クラウン、増してや家族にも連絡が取れないからだ。


「俺達で何とかするしかないのか…」

「待って、先生方もまだ学院内に残っているかもしれないわ。ミシェルさん、もし3階で教職員の方を見掛けたら“2階の援護に向かって”って、お願いしてくれるかしら?」


教職員が残っているとしたら、いち早く気付いて解決に尽力している頃だとは思うが、3年生に怪我人がいる為2階を完全に放置というワケにはいかない。
生徒会の会長と副会長の実力が四王座に匹敵すると云われていても、後に戦況が大きく変わるかもしれないと、そう見たミュレイは増援要請を託した。
ミシェルは「へいへい」と返事しつつ、階段を駆け上って3階へ。


―…ったく、今日の剣術修行はなしって言われてすぐ帰れた筈なのによ…―


今朝の救出任務(ミッション)の成功により居残りは免れ、放課後の修行もなく帰宅出来たつもりが、よりによってこうなるとは。
しかし学院内の事件は早めに解決すべく、この先に引き起こした張本人がいればと思い3階に着くと…、


「だーかーらー、何度も悪ぃって言ってんだろ?」

「今回はたまたま居残りが少ないからこっちの被害はなかったが、実際2年の生徒全員がこの場にいたら困るのはステファニーや回復手段がある奴だ!!それと、俺とアンナの防御術は地属性!!お前の風属性の銃撃が当たったら長くは耐え切れんぞ!!」


今日はエクセリオンが何回も怒鳴っている気がする、そのくらいカルロスの銃撃が激しかったのだろう。
右から聞こえた彼らの声を元に、溜め息を漏らしながらその方向へと歩み寄ると、そこにはその二人だけでなくユリアンとバーン、そしてステファニーとアンナの姿があった。


「そっちは違う意味で大変だったな」

「ミシェルか…。まぁ…、既にAIから聞いているとは思うが…」

「人類が急に魔物みたいなヤツになったのよ…。私達の方はたまたまバーンとカルロスがいたし、ユリアンも4階から駆け付けてくれたから助かったけど…」


使った魔力よりも説教で息切れしているエクセリオンと、ミシェルを見て安心したアンナの報告で危機的な状況まではいかなかった様だ。
現れた5体は全てバーンとカルロスが倒したものの、後者の攻撃はほとんどの生徒達が巻き込まれそうだとヒヤヒヤしていたらしい。
一通り聞いた所でミシェルは外と2階の状況を伝えると、この場にいる全員が驚きの声を上げた。


「嘘っ!?3年生の中に怪我人が…!?」

「外にもいんのかよっ!?通信も出来ねぇって、どうなってんだオイっ!?」


無理もない、突然現れた仮面を被ったローブの人物が怪物へと姿を変え、その戦いで最終学年であり1年先輩の3年生も複数人が傷を負ったのだから。
そして何処から出て来たかすら分からず、仕組んだ張本人の正体も分からぬまま。
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