Story.02≪Chapter.1-2≫

☆☆☆

時刻は15時55分、サクレイド学院の2階では3年生の生徒達が複数の怪物達との戦闘を強いられ、その中にミシェルが怪物を斬り付けながら生徒会の会長と副会長を探している。


「オイ、会長と副会長いねぇか?」

「タメ口かよっ!?2年生は敬語使えって!」

「えっ?会長と副会長って、ミュレイとバラッドの事?ミュレイは分かんないけど、バラッドはトレーニングルームじゃないかしら」


目が合った生徒から二人の居場所を問い掛けると、一人の女子生徒から副会長―バラッド・S・ピオニーアの現在地を耳にした。
トレーニングルームは4階にあり、確か放課後ではユリアンもそこで自身の身体を鍛えている筈だ。
あの階層も同じ様な状況だとしたら、ここをどうにかしてから駆け付けたい所。
しかし怪物は仮面を付けた人型の状態から次々と現れ、四足歩行の形態に変貌しては他の生徒達を襲っている。


「ちっ、面倒臭ぇな…」

『警告!警告!各階の廊下に不審人物が…ってバケモンやないかいっ!!もうこの際判別不明の魔物でええわ!判別不明の魔物は2階に4体、3階に5体、4階に2体確認!あっ、たった今4階はバラッド・S・ピオニーア副会長と2年生のユリアン・ダイナヴィヴィッドが全て撃退に成功!魔物は残り9体!』


AI(人工知能)も思わず異国の訛(なま)りが出てしまう程、データにない存在に焦りが示されている様だ。
とはいえ、数が分かっただけでも十分だと感じたミシェルは、目に映る怪物を斬り掛かろうとすると…、


「ホーリー・ウォーター・ショット!!」


別の女子生徒の叫び声と同時に、怪物の背中が光り輝く水の球に直撃されて膝から崩れ落ちると、そこには水色の瞳を持ち、ふんわりとした感じでウェーブが掛かった同色の髪を肩の下辺りまで伸ばした女子生徒―ミュレイ・L・ピオニーアの姿があった。
同じ制服に3年生の証である黒のリボンに加え、左の二の腕には十字架にも剣にも見える光をモチーフとした黒い紋章に同色のラインが上下1本ずつ伸ばした黄色い腕章が装着されている。
これがサクレイド学院の生徒会長の証であり、ミシェルを見つけては堂々とした態度で歩み寄って来る。


「あら、ミシェルさん。貴方も学院に残っていたのね」

「帰ろうとした時に、外でその化け物と遭遇しちまってな…」


ミシェルの返答に、ミュレイはAIの報告にはなかった事柄に驚きの表情を見せる。


「まぁ!外にも!?これは一大事だわ!バラッドは今何処に…」

「呼んだか?」


後に自身の従弟(いとこ)を探そうとすると、ミシェルの背後から聞き覚えのある男子生徒の声がした。
ミシェルは振り向き、ミュレイもその方向に視線を送ると、この学院の男子の制服を身に纏い、ネクタイには白いラインが2本付いており、首の下まで伸びた黒髪を一つにくくる水色の瞳の男子生徒―バラッドが黄金に輝く大刀―≪裁雷≫を担いで立っていた。


「AIから聞いたぜ。4階は片付いたってな」

「ああ。それにしても仮面を被ったヒトが急に変貌するとは…。一体何が起こっているんだ?」

「こっちが聞きたいわ。ミシェルさんも外で同じ化け物に遭ったんですって」

「外もか…」


外に関してはミシェルが倒したのだが、この状況をどうにかしない限り学院の外に出られないという現実に溜め息を漏らすミュレイとバラッド。
そこでミシェルは、彼と共にいたであろうユリアンがいない事について問い掛ける。


「…で、あんたはユリアンと一緒じゃなかったのか?」

「ユリアンは3階だ。あそこも化け物がいるから加勢に向かっている最中だが…」


3階にも5体いるとAIからの報告があったが、倒したという速報はまだ出ていない。
その階層はミシェル達2年生が主に利用しているのだが、3年生と違い残っている生徒は少ないだろう。
確か、今朝の任務(ミッション)の研修でカイザーが居残りで反省文を書く事になったのだが、終わっていなければまだいる筈。
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