Story.01≪Chapter.1-1≫

対するカイザーはレヴィンの剣を振り払い、流れる様に右に半回転してレーザー状の赤い刃を受け止めた。
だが一人に集中させる暇を与えないかの様に、横から飛んで来た石の球に直撃する。


「こっちは6人中二人が四王座だ。弱者集団と同じ様な戦い方をすると痛い目に遭うぞ」


右腕を突き出して次の魔法を放つ態勢に入るエクセリオンに、カイザーは無表情ながらも彼を見つめる。


「おいおい、俺らが弱者扱いされるなんて心外だなぁ?上に立った奴は上ばっかり見てて、下はガン無視かよ」


するとカルロスがエクセリオンの一言に不満そうな反応を示しながらも、二つの拳銃―≪アサルトコンバット・ウィンド≫の銃口に風の魔力を集中させる。
それが一段と大きくなるのを感じたカイザーは、すぐさま視線をそちらに移してはその方向へ駆け走る。


「させるか!!」


それを見たバーンは、左の腰辺りでベルトに引っ掛けたカードケースから2枚のカードを取り出す。
1枚は、こげ茶を背景に金色のラインで囲った長方形の真ん中に円があってその中に六芒星が描かれ、裏には緑の背景に竜巻の様な白いマークが描かれており、風属性の魔力が篭っている。
もう1枚は、表のデザインは同じだが裏は灰色の背景に歯車の様な白いマークが描かれたカードであり、こちらは鋼属性の魔力が纏っている。


「カッター・シュート!!」


その2枚のカードを同時に投げた時、カイザーは立ち止まらずに槍を振るって全てを弾き、一度縦に1回転させながらメタリックグリーンの刃を前にして風の渦を発生させる。
巻き込まれる覚悟で来たかと、カルロスは微笑みながら魔力を集中させると、一つの大きな空気の球が形成され、徐々に大きくなっていく。
カイザーも渦を大きくさせると、まるで竜巻を纏わせたかの様な状態の槍を突き出す態勢に入る。


「エア・キャノン!!」

「サイクロン・スピア!!」


巨大な空気の球と横になった状態の竜巻が激突した時、部屋全体に激しい風が吹き荒れた。
レヴィンとエクセリオンとバーンは壁際に押されそうな身体を何とか足で踏ん張り、カルロスとカイザーは後ろの壁にぶつかりながらも態勢を立て直すのは早かった。


「……少し過小評価しすぎたか」

「やっと分かってくれたか。お前ら四王座に近い奴はミシェルだけじゃねぇって事さ。それは…」

「ちょっと待て!!!!」


カルロスがカイザーに語り掛ける途中、エクセリオンが大声を出して会話を遮らせた。
普段、この様に叫ぶ事はあまりない彼に、レヴィンは驚いた仕草をしながら視線を送る。


「ど、どうしたんだ?エクセリオン…?」

「何だよ。今俺、カッコイイ事言おうとしてたトコなのによー」

「そんな事はどうでも良い!お前達はさっきの技の衝突でリヴが巻き込まれる勢いだったんだぞ!!」

「なっ…!リヴっ!!」


エクセリオンの一言に衝撃を受けたのはレヴィンであり、リヴマージがいたであろう方向に視線を向けると…、


「あれ…?リヴ?」


何とそこには誰もおらず、しかも彼女が座っていた椅子すらもなくなっていたのだ。
後にカルロスとエクセリオンも気付き、バーンも気付いては辺りを見渡して探すが何処にもおらず、もしやと感じてカイザーに視線を送る。


「カイザー!!お前、俺が見てねぇ時に姿を消すマジックか何かで隠したなーっ!!」

「は?何言ってやがる。そんなモン出来るワケねぇだろ」


問い詰めてみるが、カイザーは本当に何も知らなさそうな反応を見せている。
どうなっているのか分からない中、カルロスは更にこの場での違和感に気付く。


「ミシェルとユリアンもいねぇぞ?」


先程までいた筈の二人の女子生徒もまた、いつの間にか姿を消していた事だった。
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