Story.01≪Chapter.1-1≫

だが静かになった所で、相手も気配や魔力を探りやすくなったのだろう。
このまま身を隠しても無駄かと二人は溜め息を漏らしながら、彼らがいる部屋に足を踏み入れた。


「お前らも隠し通路の存在に気付いたか。さすがじゃねぇか」

「どっかの誰かが爆発起こしたおかげでな」

「おっ、それ俺だぜ!って事は他の奴らもここ来んのか!?」

「気付いたのはあたしとミシェルと、レヴィンとエクセリオンだけよ。他の人達は気付いてないみたい」


緊張感のないカルロスとバーンの反応に、ミシェルとユリアンは平然とした表情で返答していく。
そしてミシェルは、そのままカイザーの方に視線を送る。


「……いつから気付いたんだ?」

「レヴィン達が来てからだ」


やはり戦闘中は、隠れている人物を探す程の余裕はなかったというワケか。
しかし冷静に見ているミシェルと違い、ユリアンはこの場にいる全員に目を配りながらこう言った。


「でもこれで6対1よ。カイザーもさすがにこの人数じゃ敵わないんじゃない?」

「弱者が束になってかかった所でか?」

「なっ…!?」


自信満々に言った筈が逆なでに返されたのを受けて突っ掛かろうとすると、ミシェルが彼女の腕を引っ張って制止する。
ユリアンは何故止めるのかと反論すると、ミシェルはカイザーに聞こえない程度でこっそりと伝える。


「あいつはこのくらいで怯んだりしねぇよ。あいつの相手はレヴィンとエクセリオンに任せとけ」

「で、でも…」

「まともにやり合ったって時間だけが過ぎる。それじゃあ時間内にリヴは助けられねぇ。俺に良い考えがある」


後にミシェルは自身の提案をユリアンに伝えると、彼女は驚いた表情を浮かべながらも首を縦に振った。
二人の様子をエクセリオンは怪しげに見ており、レヴィンはカイザーの動きに警戒し、バーンとカルロスは不思議そうな目線で彼女達を見る。


「あいつら、何話してんだ?」

「さぁ。作戦でもあるんじゃね?」

「それ俺らにも教えてくれよ!!」

「お前らじゃ無理な話だ。そっちはそっちで作戦立てろよ」

「冷てぇなオイっ!?」


どうやらミシェルとユリアンだけの作戦らしく、ショックを受けるバーンとは対照的にカルロスは銃を構えて微笑む。


「まぁ良いさ。さっさと戦闘再開と行こうぜ。レヴィンとエクセリオンが来たら、ますます面白くなりそうだからよっ!」


そして真っ先にカイザーに撃ち込み、レヴィンは魔力を集中して刃が黄色と白のグラデーションの剣―≪シャインエッジ≫を出現させて握り締める。
エクセリオンはカルロスの姿を見て溜め息を漏らしながらも、表紙の中心に灰色の宝石が埋め込まれた魔導書―≪地脈操技典≫を出して開く。


「全く、間違ってリヴを傷付けたら責任は取らないからな!」

「大丈夫だ、エクセリオン。そうなる前に俺が守ってみせる!行くぞ、カイザー!!」


カルロスの風属性が含んだ銃撃に紛れるかの様に、レヴィンが急接近して剣を振るうと、カイザーも槍で交錯させながら二人の攻撃を回避する。


「俺もいるぜぇぇ!!」


そんな彼の背後からバーンが赤いレーザー状の剣―≪セイバー・プロミネンス≫を振りかざしながら飛び出して来た。
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