Story.01≪Chapter.1-1≫

「いた。あそこね……って……」

「カルロスもいたのかよ…」


バーンの存在はユリアンの視界に入ったものの、クリアグリーンとこげ茶を基調としたゴーグルを掛けたボサボサのショートカットの緑の髪の男子生徒―カルロス・レパーターの姿に唖然とする二人。
黒と緑を基調とした二つの拳銃を構え、喜々とした様に口元から笑みが浮かべている様子が分かる。


「お前らじゃ相手にならねぇ。諦めろ」

「へっ、そうはいくかっての」

「こっちは放課後の居残りが掛かってんだ!お前を倒してリヴを助け出してやるぜ!!」


3人の会話からしてカイザーが有利だと感じられるが、カルロスは引く様子を見せず、バーンも個人的な理由を混ぜながらも救出に意欲を見せていた。
ただ、ミシェルとユリアンが懸念しているのは、あの二人がカイザーに勝てるかどうかというワケではなく…、


「戦うのは良いけど、私まで巻き込まないでよぉ?カルロス~…」


カルロスの銃撃がリヴマージに当たらないかどうかであり、捕まっている彼女も同様に不安がっている様だった。
ここからはどうすべきか、ミシェルとユリアンは隠し通路の中で考え始める。


「カイザーを倒して、までは言われなかったから、上手くかいくぐって救助したい所だが…」

「問題はバーンとカルロスが何処まで耐えてくれるか、だよね」


こちらとしては、3人が戦っている隙にリヴマージを縛った縄から解放させ、この隠し通路を経由して最初に立った場所まで連れて行きたい所。
その手段づ完了させる為には、何よりもバーンとカルロスが倒れない事が条件として挙げられる。
その筈だが…、


「「うわあああぁぁぁっ!!!!」」


風属性の魔力を有した技の轟音と共に、あの二人が奥まで吹き飛ばされて壁に激突した。
言った瞬間コレか、戦況を見た直後にミシェルとユリアンは頭を抱えた。
この策は崩れたかと思いきや…、


「……ウィンド・マシンガン……」


小さく呟くカルロスの声と共に、風属性の魔力が篭った弾丸が次々と放たれ、ミシェルとユリアンはすぐさま体勢を低くして伏せた。
ミシェルはその状態で向こう側の状況を見ると、自らの槍で弾きつつ移動を続けるカイザーと、奥で笑いながら二つの拳銃の引き金を引き続けるカルロスの姿が見えた。
そう簡単にダウンするとは思わなかったが、このままだとこちらもリヴマージを助けるどころか、通路の先の部屋に入った時点で巻き込まれる。
そんな状況の中、どうやって突入しようかと悩んだ矢先…、


「カイザー!!」


聞き覚えのある男子生徒の声により銃撃が止まり、ユリアンと共に体勢を立て直しながら慎重に覗くと、正規の出入口であろう扉のある方向からレヴィンが入り、後からエクセリオンが入る姿を目にした。


「よぉ、遅かったな」

「先に始めてるぜ!」

「先に始めてるぜ、じゃないだろ!!お前ら、すぐそこにリヴがいるって事を理解してんのか!?彼女まで巻き込まれたらどうするつもりだ!!」


カルロスとバーンの一言により、エクセリオンの激昂が隠し通路の中にいるミシェル達にも届く。


「心配すんな!俺だって回復手段あるからさ!」

「そういう問題じゃないだろ!!これはアンヘル先生も見ているから、回復手段があるとはいえ…」

「エクセリオン、落ち着けよ。まだリヴは無事だから」


気にする素振りを見せないバーンに対し、更に説教を続けるエクセリオンをレヴィンが宥めていた。
それをリヴマージは唖然としながら見つめているが、確かに今の所彼女が怪我をしている様子はない。
おまけに後から来た二人によって戦闘が一時的に止まり、カイザーも次の一手を探るかの様に4人を見ているかと思いきや…、


「ミシェル、ユリアン、そこにいるんだろ?」


この一言で隠し通路にいるミシェルとユリアンが『ギクッ!』と身体を震わせ、互いに目線だけでどうするのかと語り合う。
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