Story.01≪Chapter.1-1≫

通路はそれ程複雑な造りではない為、少し走っただけですぐに見つかる突き当たりに、人が通れそうなサイズの穴が出来た壁を発見した。
そこにはミシェルとユリアンだけでなく、同じく爆発音を聞いて駆け付けたであろうレヴィンとエクセリオンの姿もあった。


「誰だよ、ここに穴開けた奴…」

「たぶんバーンの仕業だろう。何かの目印を見つけて、ここが隠し通路だろうと思って壊したんだろうな…」


やれやれと思いつつミシェルとエクセリオンが覗き込むと、その先は暗く狭い空間の中に黄緑に光るラインで描かれた壁と道が出来ていた。
これは制作者自身にとって内装の詳細が分からない、もしくは電脳空間らしさを出す為にワザとこうしたデザインにする傾向がある。
今回はおそらく前者であろう道の先は、肉眼では捉える事が出来ない。
しかしここから炎属性の魔力が僅かながらに感じられるという事は、爆発してからはまだ時間が経っておらず、破壊した張本人もまだ遠くへは行っていない証拠である。
だがその人物が見えないのは、この通路がカイザーとリヴマージのいる場所に繋がっていると判断して向かったと思われるが…、


「全く、今回の任務(ミッション)とは無関係な場所だったら無意味だろうに」


エクセリオンはその可能性は薄いと見ており、この場から去ろうとする。


「まぁでも、一応あたしとミシェルが見に行って来るよ。バーンを見つけて、リヴ達がいる場所じゃなかったら連れ戻せば良いから」

「あー、そうだな。ミシェル、ユリアン、そっちは頼んだぞ」


ユリアンはその先の確認と同級生のバーンを見つける必要性はあると感じ、そう提案するとレヴィンは了承し、この場を彼女とミシェルに託してエクセリオンと共に去って行った。
ミシェルは覗きながら隠された通路の先をじっと見つめ、耳を澄ませて探るも音は聞こえない。


「さてと、行くからには慎重に行った方が良いな」

「そうね」


仮にリヴマージが捕われた場所に繋がっていたとしても、同時に四王座のカイザーが控えている。
彼はレヴィンを相手にこそ敗北はしているものの、他の生徒と比べたら実力は遥かに上。
ユリアンも、その先に向かったであろうバーンも勝った事がなく、ミシェルは戦った事すらないままなのだ。
だからこそ気を引き締め、黄緑に光るラインで描かれた通路に足を運び始める。


「綺麗な通路ね。ここ」

「現実の世界じゃこんな場所はないけどな」


電脳空間ならではの雰囲気にユリアンは目を奪われ、先頭に歩くミシェルは鞘に仕舞ったままの刀を左手で握る。
万が一の事態に備えてすぐにでも引き抜ける仕草を見せるが、しばらく歩いた先に聞こえたのは、小さいながらも二人の男子生徒の声だった。
そこで一旦足を止め、ユリアンに静かにするよう右手の人差し指を立てて口元に当てる。
ここから足音も立てずゆっくりと歩を進めると、またもや壁が一部分崩れた様な、そして見つけた時と同じく人が通れそうなサイズの出口が見えてきた。
それと同時に、武器が交錯する音と何度も響く銃声が彼女達の耳に届いた。


「えっ!?なになにっ!?」


ユリアンは小声ながらも驚きの反応を示し、ミシェルはゆっくりとその先を覗き込むと、両端にメタリックグリーンと黄金の刃が付いた変わった形の槍を構えるカイザーの後ろ姿を目にする。
更に目線だけでその空間を見渡すと、ここから左側に縄で縛られた状態で椅子に座るリヴマージを発見した。


「……こりゃあ、ラッキーと言うべきか?」

「どうしたの?」

「この先にカイザーとリヴがいた。バーンの奴は…」


状況を聞くユリアンを余所に今度はバーンを探すと、後ろ姿のカイザーの奥に立ち込める煙から、青い瞳を持ち頭に赤と白のストライプのバンダナを付けた、少々癖っ毛のショートカットの黒髪の男子生徒が赤いレーザー状の剣を握っていた。
彼がこの隠し通路を最初に見つけたであろうバーン・フォルテックであり、隣にはもう一人の男子生徒がいた。
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