Story.07≪Chapter.1-7≫
☆☆☆
同時刻、カイザーはエリザベートとアロガントに連れられ、遺跡の行き止まりで見つけた水色の刀の鑑定を求めて≪アルケミスト協会本部≫に立ち寄った。
大体300万ケルクの査定が出るだろうとアロガントは期待して尋ねたのは、協会の一人であり鑑定士兼行商人のエル・リトビエンヌ。
出て来たのは群青色の瞳を持ち肩まであるが少し癖っ毛が目立つ金髪、更に紫のワンピースの上に青いジャケットを羽織り、黒いロングブーツを履くというカジュアルな姿の女性だが、彼女こそが利用者からの信頼度が高いエル本人である。
鑑定しながらの説明に入ると、この刀は遥か東の国の技術で作られた和宝魔器(わほうまき)という特殊な原始固有型武器であり、そのカテゴリーに属しながら武器に魔力が篭ったモノだとの事。
しかしこれは現在も量産されており、価値としてはそれ程高くはない。
時期としては1000年くらい前だと推察し、長年放置された影響か宿った魔力もかなり減少して本来の“力”を発揮出来ないレベルまで落ち込んでいた。
状態こそ良好なものの希少ではない、歴史書に載る程の英雄の使用の痕跡がない、クリアトラックス王国時代の伝承にも記されていない面を含めると、査定価格は5万ケルクだと言い渡された。
それを聞いたアロガントは酷くショックを受け、エリザベートも「それしかしないんですの!?」と思わず叫んでしまった。
カイザーは双方の反応を見て、見た目に騙(だま)されたなと心の中で言いながら溜め息を漏らすしかなかった。
安物に掴まされたと落ち込みながら帰路につくアロガントとエリザベートを見送ったカイザーは、もう一度カウンターに置かれている水色の刀に視線を向けた。
向かい側にいるエルも同様に見つめ、ほのかに光る桃色の紋章に注目している。
「遺跡からの掘り出し物の価値としては低いけど、よくこんな綺麗な刀を見つけましたねぇー」
「たまたまだ。…調べてる時にちょっとだけ冷たい気配を感じてな」
「ほほう…、さすがは防衛局長の息子さん」
「これはひょっとして和宝魔器(わほうまき)か?」
するとエルの後ろから男性の声がし、二人はそちらに視線を送ると茶色い瞳を持ち短い黒髪をオールバックにし、口周りに黒い髭を生やした浅黒い肌の筋骨隆々の男性が水色の刀に興味津々な目で見ていた。
彼の服装である白いタンクトップと灰色のズボンには若干煤が付いており、履いている茶色いサンダルからも同様に少し黒い部分が見られる事から、彼はアルケミスト協会の一人であり鍛冶師のドワーフ族―ダイト・B・メガハードである。
「知ってるのか?」
「俺は世界中を旅していた時期があってな。これを主流武器として使ってる東の果ての国にも行った事がある。…この刀、何処で見つけた?」
「この街の地下道の遺跡だが?」
そんな彼の問いにカイザーは、水色の刀を見つけた経緯を交えて詳しく回答した。
和宝魔器(わほうまき)が作られた遥か東の国は、1800年前から1300年前までの間に他国や異世界との関係を絶つという鎖国状態の時期があった。
もしそれが続いた時の品だったらもう少し高く見積もる事が出来たかもしれなかったが、1000年くらい前だと既に開国されていたという事になり、5万ケルクに落ち着いたというのがエルの見解。
売るか売らないかの会議に入る前に持ち込んだ張本人であるビューティリス一族が帰ってしまった為、この刀はどうするのかと話し合いを始めようとした所である。
「5万でも普通のヒトにとってはすぐに売りたい物ですよ。それでも落ち込んで帰るとは勿体ない事をしますねー」
「ふん、貴族らしい反応だな」
「…で、どうすんだ?俺は別に5万で売ってやっても良いが」
「俺が買い取ろう。そして修復してやる」
何と査定の直後にダイトが買い取りに名乗りをあげた事に、カイザーは思わず彼に目を向けると、実に嬉しそうな表情をしていた。
魔術形成型武器や最新粒子型武器を使う者が多く出始めてから、原始固有型武器の製作の機会が立て続けに失われ、修復といえどようやくこの日を待ちわびたかの様だった。
からかいではなく本気で欲しいという意思に、カイザーは了承してエルに刀の売却手続きをと促す。
「それなら私は異論ありませんよ。でも良いんですか?この事をビューティリス一族に言わなくても」
「売った金は道化会撲滅の資金にすると言っておけば、納得するしかないだろ。あいつらもリヴと同じく狙われてるみてぇだしな」
「ははっ!とうとうあの貴族も命を狙われる立場になったか!いつかそんな日が来るとは思っていたが、無差別テロは勘弁だな」
そうしてカイザーはエルから5万ケルクを受け取ってこの場を後にし、水色の刀を受け取ったダイトは早速自らの仕事場に持ち込み、修復作業に入るのだった。
同時刻、カイザーはエリザベートとアロガントに連れられ、遺跡の行き止まりで見つけた水色の刀の鑑定を求めて≪アルケミスト協会本部≫に立ち寄った。
大体300万ケルクの査定が出るだろうとアロガントは期待して尋ねたのは、協会の一人であり鑑定士兼行商人のエル・リトビエンヌ。
出て来たのは群青色の瞳を持ち肩まであるが少し癖っ毛が目立つ金髪、更に紫のワンピースの上に青いジャケットを羽織り、黒いロングブーツを履くというカジュアルな姿の女性だが、彼女こそが利用者からの信頼度が高いエル本人である。
鑑定しながらの説明に入ると、この刀は遥か東の国の技術で作られた和宝魔器(わほうまき)という特殊な原始固有型武器であり、そのカテゴリーに属しながら武器に魔力が篭ったモノだとの事。
しかしこれは現在も量産されており、価値としてはそれ程高くはない。
時期としては1000年くらい前だと推察し、長年放置された影響か宿った魔力もかなり減少して本来の“力”を発揮出来ないレベルまで落ち込んでいた。
状態こそ良好なものの希少ではない、歴史書に載る程の英雄の使用の痕跡がない、クリアトラックス王国時代の伝承にも記されていない面を含めると、査定価格は5万ケルクだと言い渡された。
それを聞いたアロガントは酷くショックを受け、エリザベートも「それしかしないんですの!?」と思わず叫んでしまった。
カイザーは双方の反応を見て、見た目に騙(だま)されたなと心の中で言いながら溜め息を漏らすしかなかった。
安物に掴まされたと落ち込みながら帰路につくアロガントとエリザベートを見送ったカイザーは、もう一度カウンターに置かれている水色の刀に視線を向けた。
向かい側にいるエルも同様に見つめ、ほのかに光る桃色の紋章に注目している。
「遺跡からの掘り出し物の価値としては低いけど、よくこんな綺麗な刀を見つけましたねぇー」
「たまたまだ。…調べてる時にちょっとだけ冷たい気配を感じてな」
「ほほう…、さすがは防衛局長の息子さん」
「これはひょっとして和宝魔器(わほうまき)か?」
するとエルの後ろから男性の声がし、二人はそちらに視線を送ると茶色い瞳を持ち短い黒髪をオールバックにし、口周りに黒い髭を生やした浅黒い肌の筋骨隆々の男性が水色の刀に興味津々な目で見ていた。
彼の服装である白いタンクトップと灰色のズボンには若干煤が付いており、履いている茶色いサンダルからも同様に少し黒い部分が見られる事から、彼はアルケミスト協会の一人であり鍛冶師のドワーフ族―ダイト・B・メガハードである。
「知ってるのか?」
「俺は世界中を旅していた時期があってな。これを主流武器として使ってる東の果ての国にも行った事がある。…この刀、何処で見つけた?」
「この街の地下道の遺跡だが?」
そんな彼の問いにカイザーは、水色の刀を見つけた経緯を交えて詳しく回答した。
和宝魔器(わほうまき)が作られた遥か東の国は、1800年前から1300年前までの間に他国や異世界との関係を絶つという鎖国状態の時期があった。
もしそれが続いた時の品だったらもう少し高く見積もる事が出来たかもしれなかったが、1000年くらい前だと既に開国されていたという事になり、5万ケルクに落ち着いたというのがエルの見解。
売るか売らないかの会議に入る前に持ち込んだ張本人であるビューティリス一族が帰ってしまった為、この刀はどうするのかと話し合いを始めようとした所である。
「5万でも普通のヒトにとってはすぐに売りたい物ですよ。それでも落ち込んで帰るとは勿体ない事をしますねー」
「ふん、貴族らしい反応だな」
「…で、どうすんだ?俺は別に5万で売ってやっても良いが」
「俺が買い取ろう。そして修復してやる」
何と査定の直後にダイトが買い取りに名乗りをあげた事に、カイザーは思わず彼に目を向けると、実に嬉しそうな表情をしていた。
魔術形成型武器や最新粒子型武器を使う者が多く出始めてから、原始固有型武器の製作の機会が立て続けに失われ、修復といえどようやくこの日を待ちわびたかの様だった。
からかいではなく本気で欲しいという意思に、カイザーは了承してエルに刀の売却手続きをと促す。
「それなら私は異論ありませんよ。でも良いんですか?この事をビューティリス一族に言わなくても」
「売った金は道化会撲滅の資金にすると言っておけば、納得するしかないだろ。あいつらもリヴと同じく狙われてるみてぇだしな」
「ははっ!とうとうあの貴族も命を狙われる立場になったか!いつかそんな日が来るとは思っていたが、無差別テロは勘弁だな」
そうしてカイザーはエルから5万ケルクを受け取ってこの場を後にし、水色の刀を受け取ったダイトは早速自らの仕事場に持ち込み、修復作業に入るのだった。