Story.07≪Chapter.1-7≫

彼女だけでなくカイザーとアロガント、更にレヴィンとリヴマージとエンドルまでもが同じ様に沈むのを確認したと同時に、床が砂と化して蟻地獄(ありじごく)となっていた。
3人の傭兵達は何故か沈んではいないが、その状況を利用して懸命に救い出そうと手を伸ばす。


「俺の手に捕まれ!!」

「皆さん、早く!」

「わ、分かりました…!」


傭兵達の声にリヴマージが右手を伸ばすも、沈むスピードが思ったよりも速く誰の手にも届かなくなっていた。
レヴィンとエンドルはせめて彼女だけでも助ける手段を考えるも間に合わず、エリザベートは「こんな所で終わるなんて…!」という一言を残しつつ身体が完全に砂に埋もれてしまった。
そしてカイザーとアロガントも同様に引きずり込まれ、レヴィンとエンドルも悔しそうな表情を浮かべながら沈み切っており、リヴマージも伸ばした右手も虚しさが伝わる様に沈んで行った直後、蟻地獄の様な砂は再び石造りの床へと戻った。
短剣を所持する傭兵は、アイドライズにとって重要な人物を失ったと感じて両膝を床に付く。


「ああ…!そんな…!!神子様…」

「落ち込むのはまだ早いぞ!この遺跡は下に続いている。そこに空間さえあれば全員生きている筈だ!」


対する剣を所持した傭兵は、自らが持つ黒いタブレット端末を操作しては地下道の遺跡の地図(マップ)を表示させる。
するとレヴィン達が目撃したとされる仮面の者が逃げた方向、ここから十字路に戻った視点からすると右の通路を通って道なりに行くと、下り階段がある場所へと導かれる。
そこを降りてからの地図(マップ)もあり、現在地と見比べると確かにこの部屋の真下にも別の広い空間があるのが分かる。
14歳の子供とはいえ、レヴィンとカイザー、リヴマージとエリザベートは世界最高峰の軍事学院に通学している生徒。
エンドルは西の島―コマンダルの闘技場で開かれる武術大会での優勝経験を持つ実力者であり、アロガントはそんな彼らに助けられる形になるであろう。
ここから落下して即死する様な高低差はない筈、そう思った拳銃を所持する傭兵は気持ちを引き締める。


「神子様達の無事を…信じましょう!」

「そ、そうだな…。俺達もそこへ行こう!」


二人の仲間の励ましに短剣を所持する傭兵は再び立ち上がり、急いでレヴィン達6人を救出すべく下の階層へ駆け走る。

☆☆☆

「もう…、制服が粉まみれじゃないですの。最悪ですわ…」


床が蟻地獄と化して引きずり込まれた先は、白い粉が入っていた大きな袋が積み重なった事でクッションとなり、レヴィン達6人に怪我はなかった。
しかし着地した途端に粉が一瞬煙の様に溢れていた為、制服に付着したエリザベートは困惑した表情を浮かべていた。
カイザーはそんな彼女に呆れ果てており、そこから立ち上がって袋から離れる。


「生きてるだけで良かったって思えよ」

「そ、それはそうですけど…」

「でも私達、あの部屋から何処まで落ちたのかしら…」


リヴマージは全員の無事を確認した後に上を見上げるとそこから砂は一切流れておらず、床と同じく石造りの天井だった。


「知らない間に罠でも踏んじゃったのかな…」

「事前の報告ではそういうモノはありませんでした。我々が封鎖する直前に道化会の奴らが仕組んでいたとしか…!」

「そんな…。あ、アロガントさん、地図(マップ)の表示をお願い出来ませんか?ここが何処なのかが分かれば、傭兵の皆さんと合流出来るかもしれません」


またもや道化会が新たに仕掛けを作ったという予想が出る中、ひとまず現在地の確認をとアロガントに頼み込むリヴマージ。
レヴィンは≪トーチ・フレイム≫を唱えて小さな炎を出現させては周囲を照らし、エンドルは怪しげなモノがないかと部屋内を捜索している。
カイザーとエリザベートは目の前に扉はあるもののすぐには開けず、誰かが来る足音がしないか聞き耳を立てている。
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