Story.07≪Chapter.1-7≫

「させるか!!」


そう思ったレヴィンは目撃した瞬間に走るスピードを速め、≪シャインエッジ≫に炎属性の魔力を纏わせる。
何とか止めなければという想いに乗じるかの様に、炎の勢いが強まった状態で狙いを定めたのは黒い塊。


「フレア・ブレード!!」


炎の剣は弧を描く様に赤い閃光が走り、怪物はその程度では消えないと思った瞬間、切り口から激しい爆発が起きた。
黒い塊は砕け散るかの如くバラバラになり、闇属性の魔力は周囲に分散した。
これでは部屋の崩壊どころか敵を傷付ける事すらままならないと感じた怪物は、もう一度魔力を集中しようとした所を下から拳銃を持つ傭兵に足や翼を何度も銃撃された。


「くたばれ化け物!!」

「小癪ナ…!」


あまりのしつこさに標的(ターゲット)は傭兵に変更し、右の拳に闇属性の魔力を纏わせる。
そして鋭く尖った長い爪を立てた瞬間、“誰か”を象った水の人形が両手で持つ剣を振るい、怪物の右腕を切り落とした。


「ガアァッ!!何ダ…!?」


視界の外からの奇襲に対応出来なかった怪物は誰がやったのかと辺りを見回すと、水で出来た人形はエンドルを象っていたモノだった。


「ナッ、何故…!」

「君はもう終わりだ」


すると背後から彼の声がし、氷属性の魔力が宿った白い結晶の剣―≪コールドエッジ≫の刃は直接怪物の身体に斬り付けた。
それと同時に傷口から徐々に氷が走り、1分も経たずに全身が凍った怪物は床に落ちた。
これで動かなくなったと確認すると、拳銃を持った傭兵は危うく殺されそうになった所を助けてくれたエンドルに礼を言う。


「あ、ありがとうございます…」

「礼はいいよ。後はカイザーの所だけだね」


対する彼の視線は傭兵ではなく、もう1体の怪物と戦うカイザーと別の二人の傭兵達に向けていた。
彼らの方も、怪物の身体には多くの傷が付いている事からそろそろ決着が付きそうだ。


「なかなかしぶとい奴だな…」

「けど向こうは疲れが見えている。もう少しだ!」

「……ッ!斯(カ)クナル上ハ…!」


傷だらけの怪物の右腕が突き出した方向は、カイザー達3人ではなく後方にいるリヴマージとエリザベートとアロガント。
その掌から闇属性の魔力が溢れ始めて今かと何かを発しようとした時…、


「エレクトリック・ランス…」


背後に回って跳び上がっていたカイザーが、雷属性の魔力により電流が発生した≪ティアマット・エンペラー≫の黄金の刃で背中を突き刺した。
体中に電流が走った怪物は悲鳴を上げ、右の拳に溢れた闇属性の魔力は消えたと同時に床に叩き付けられた。
後にぴくりとも動かなくなったのをこの場にいる全員が確認した後、リヴマージは歌を中断して前衛の6人の所に駆け付ける。


「皆、大丈夫?」

「ああ。リヴのおかげで早く倒せたよ」

「僕達の方はちょっとやり過ぎたかな?これじゃあ、道化会の事話してくれるかどうか分からない状態まで傷付けちゃったから…」


レヴィンは無事だと彼女に安心させる一言を放つ中、エンドルは少し冷や汗を掻きながら氷漬けの怪物に視線を送っていた。
こちらとしては少しでも会員の口から真の目的を話して欲しかったものの、結果的に喋れなくなる所まで攻撃を続けた。


「どっちみち喋れても話してくれねぇだろ。俺もあんな状態までさせちまったけどよ」


彼に続けてカイザーも、自分が痺れさせた怪物に目を向けている事から、そちらも瀕死の状態まで追い込んだのが見て分かる。
3人の傭兵達からも「どうすんだコレ…」と、情報の引き出しが出来ない上に後始末も困っている様だ。
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