Story.07≪Chapter.1-7≫

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道化会による学院襲撃から3日目、時刻は16時33分…。

≪クロスラーン≫の南東の地下道を捜索するレヴィンとリヴマージ、カイザーとエンドルの4人は、レヴィンが唱えた炎属性の簡易補助魔法―≪トーチ・フレイム≫で小さな炎を出現させ、それを明かりとして先の通路を見ながら進む。
彼らと同行するビューティリス一族のエリザベートとアロガント、そして雇われた5人の傭兵達も周囲を警戒している。


「……怪しい奴はいなさそうだけど…」

「この通路は既に別の者達が踏破済み。罠(トラップ)や仕掛けも解除、または発動済みだとの事ですわ」


階段を下り、一本道を通る所までは何も起きていない事を呟くレヴィンに、エリザベートはこれまで得たこの地下道に関する情報を伝えた。
昨日の発表では踏破遺跡と繋がっている場所もあるが、考古学者か冒険家の一人が≪エクスプローラーギルド≫の前で“未知の部分がある”と訴えていたのを、同日の下校中にリヴマージとエンドルが耳にしていた。
完全に調べ切ったとは言えない、調査に臨もうとする者達にとっては封鎖という有力貴族の決断は納得がいかないのも分かる。
しかしだからこそ、誰も手を付けていないであろう場所に道化会の潜伏場所が存在すると予想している。


「あっ、そこを右に曲がります」


すると最初の分かれ道が見えた所でエンドルがそう伝えると、全員がその通りに足を進めた先は十字路の様な3つの分かれ道があった。
そこでリヴマージは薄い桃色のタブレット端末を操作し、実際に目撃した仮面の人物の立体映像(ホログラム)を出現させた。


「ここで、この仮面の人物の姿が見えなくなりました」


目の部分が丸く空いて口は微笑む様に曲線を描き、左半分が青で右半分が赤の仮面を装着し、髪や肌は一切露出させない様に全身に黒いローブに覆われた者を、初めて見たアロガントと彼が雇った5人の傭兵達に記憶させる。


「これが神子様のお命を狙う不届き者…、道化会の会員か」

「こいつが原因で遺跡調査が中断させられた…。見つけ次第捕まえましょう!」

「神子様だけでなく学院の生徒まで危害を加えるなんて許せません。何としてでも突き止めなければ…!」


傭兵達は全員、理由は様々だが仮面の人物の拘束に意欲を示していた。


「しかし、この地下道は踏破済みの場所があるとはいえ油断は出来ん」

「あの分かれ道じゃあ、一人だけでは追えませんわね。エンドルが引き返すのも納得ですわ」


対するアロガントは、本当に分かれ道の先に道化会の会員がいるのであれば既に調査が済んだとはいえ楽観視はせず、エリザベートも慎重になっている。
床や壁、天井を見ても、最近付けられていそうな目印らしきモノは見当たらず、また足跡らしきモノも残されていない。
ビューティリス一族が全ての遺跡を封鎖した事を機に、会員が証拠となりそうな跡は全て消したのだろうか。


「この辺は踏破済みなんだろ?調査した奴が作った地図(マップ)くらい保存してんじゃねぇか?」


するとカイザーがアロガントにそう言うと、「おい、何と言う口の効き方を…!」という傭兵の声が上がったが、エリザベートが制止を図る。


「お止めなさい、お前達」

「エリザベートお嬢様…っ!?」

「この方は多少の無礼はあれど、私とお父様が認めた人物の一人。そしてリヴマージ様が信頼なさる同級生の一人ですわ」

「サクレイド学院の長であるファウンダット殿から、生徒達を丁重に扱うよう懇願されてきた。お前達の態度や行動次第では、この場で処罰を与える事態になり兼ねないだろう。それを避けたければ、下らない場面で口出しはしない事だな」


二人のビューティリス一族の言葉に、傭兵達は恐れを抱いて口を閉ざした。
遠回しに神子を悲しませる様な真似はするなと言っている様に思えるのだが、有力貴族になればそれを利用して脅す事も出来るのか。


「ま、まぁまぁアロガントさん、そんなに冷たい事を言わないで。折角来て下さった傭兵の皆さんが怖がってますし、最悪調査にも影響が出てしまいます」


するとリヴマージが空気を和らげるべく不機嫌そうな顔をしているアロガントを宥め、傭兵達に対しては「ごめんなさいね」と謝罪した。
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