Story.07≪Chapter.1-7≫

『こちらは予定通り、クロスラーン地下道の遺跡調査の着手に成功させました。ビューティリス家が主導として行われるそうです』


薄暗い空間の中で“仮面の悪魔”と対話しているのは、外側が銀色で蝶をモチーフとした白い仮面を目元に装着した茶色いローブを羽織る人物。
少し高めの声といい、赤い口紅を付けている事から女性だろう。


「ビューティリス家か…。あの一族はフィデリー家と同様、神子に忠誠と称して言いなりになっているそうだな」

『はい。遺跡調査にはその一族が雇った傭兵達だけでなく、フィデリー家の嫡男とピュアリティ・クラウンの局長の息子、そして神子の護衛と神子本人が加わるそうです』

「ほう…」


3日前、“粛清の炎”に殺されかけたにも関わらず、逃げ隠れをせず堂々と捜査に乗り出すリヴマージの行動に“仮面の悪魔”は関心を持ち始めた。
命が狙われたとなれば、アイドライズのみならず聖冥諸島に危機が訪れたのも同然。
彼女に忠誠を誓う有力貴族に頼り切りにせず、自らの手で平和を守ろうとする意思は敬意を表する。
ならばこちらも相応の応対をせねばと、眼前の女性に指示を送る。


「“黒の砂地獄”よ。そなたの領域に神子共が足を踏み入った際は…、会員達と共に迎え撃て。万が一そなたが拘束、もしくは殺害された時の備えとして、“証”を残せ」

『委細承知』


上司の命令を受理した所で、“黒の砂地獄”と呼ばれた女性は姿を消した。
“仮面の悪魔”が完全に一人になり、静けさが伝わるこの薄暗い空間で呟く。


「こちらは全ての“情報”を整えた。貴様はどう反応するかな?“穏健の神子”よ…」


その一言は、まるで聖冥諸島に隠された秘密を暴き出そうとしているかの様だった…。
1/21ページ