Story.06≪Chapter.1-6≫
「さて、3年生の君はともかくそこの二人。学院内に入る許可はあるのかい?」
少しだけシクールを見てから、怪しむ様にマンダーとバジールを見ながらそう言った。
来客がサクレイド学院内に入るには前日に通信を利用して予約を入れ、当日にも2階の『職員及び来客用の玄関』の側にある受付を通さなくてはならない。
これはこの学院の卒業生も同じであり、いくら在学中の後輩がいても勝手に入る事は許されないのだ。
「な、何言ってんだよっ!ここに来るまで警報音(サイレン)鳴ってなかっただろっ!?」
「そうっすよっ!だったらそんな事、アンヘル先生も分かってるんすよねっ!?」
「あー、確かにね。この時間だとほとんどの生徒は皆帰っちゃってるし、教職員も残ってる人は少ないから気が付かなかったのかな?」
焦りを見せながら言い訳をするマンダーとバジールに対し、アンヘルは現在の時刻を照らし合わせつつ他の学院関係者の事情を語った後にこう言った。
「女子二人が人質にされただけじゃなく、電脳の魔法でここのシステムのほとんどが乗っ取られた事も」
それを聞くとアンナは驚きの声を上げ、ミシェルも「やっぱな…」と小声で呟いた。
道化会という集団を耳にしてからよく聞く様になった特殊魔法の一つが利用された可能性を頭に入れておきながらも、的中して欲しくなかった悪い予感。
安全に石化から解放されたのも、この状況でアンヘルが来てくれたのは不幸中の幸いだと云った所だろうが、彼はそれだけが幸運だと思っていなかった。
「けど今はそれに気付いたラウネ先生がシステムの修復に取り掛かってるし、何より彼女達以外にまだ残ってる生徒がいるしね」
アンヘルは視線の奥の『武道場』の出入口付近に目を向けると、現れたのは制服姿ではなく、黒いタンクトップに白いラインが入った黒いズボンの服装に、白いスニーカーを履いたバラッドだった。
筋肉質の体型を思わせるその姿に、アンナやマンダー達3人は驚くがミシェルは至って平静を保ち、事情説明を求める。
「副会長、まだ帰ってなかったのか?」
「あの後、少しトレーニングをしてから帰ろうと思ってな。途中でアンヘル先生が“後輩が人質になってる!”って言われたから制服に着替えずに駆け付けただけだ」
どうやらバラッドは『生徒会用会議室』で解散した後、4階の『トレーニングルーム』で時間ギリギリまで鍛練をしていたらしく、その途中でアンヘルに呼び出された。
“人質”という言葉を聞けば、助ける為にすぐに駆け付けなければならないという気持ちでトレーニングをする時のままここへ来た様だ。
その結果、制服姿での着やせと現在の服装による筋肉質の体型では異なる印象に、事情を知らなければ現状が呑み込めないレベルで驚くケースもある。
アンナがその一人であり、普通に対話するミシェルにこっそりと尋ねる。
「ミシェル…、あの人…バラッド副会長で間違いないよね…?」
「ああ。以前、ユリアンの忘れ物を届けにトレーニングルームに行った事があってな。そん時に筋トレ中の副会長を見たんだよ。制服の時と全然印象が違ってたから、俺もちょっとはびっくりしたさ。ま、ユリアンから説明があって普通に見れるようになったけどな」
彼女の説明にアンナは「そ、そうなの…」と返しつつ、視線はシクールを見るバラッドへ。
「シクール、これは一体どういう事だ」
「おいシクールっ!お前の同級生の中に筋肉ムキムキマッチョなんかいたかっ!?」
「計画を始める前から言ったじゃないですかーっ!今の生徒会の副会長はマッチョだって!マンダーさん、そんなの無視してたから!」
「3年生って15歳だろっ!?そんなの有り得ねぇって思ってたんだよっ!」
バラッドの問いを遮る様にマンダーが強く問い詰めると、シクールは焦りながら目の前の同級生の特徴を伝えた。
どうやら屈強そうな生徒の存在をマンダーとバジールは信じていなかった様だが、バラッドはそんな事を気にせずに同じ質問を入れる。
「もう一度言う。これは一体どういう事だ」
返答次第では容赦はしない、そう思わせる様に彼の右手から黄金に輝く大刀―≪裁雷≫を出現させて握り締める。
「オイオイ待て待て待てっ!!俺達はあの女二人を殺しに来たんじゃねぇ!!ちょっと1年前の話をしたくてここに連れて来ただけなんだっ!!そう!ファーウェル先輩が殺されたあの日っ!」
「ひょっとしてコレかい?」
シクールが慌てながら真実を話す途中、アンヘルは黒くて細長いボイスレコーダーを取り出して全員に見せ付けた。
少しだけシクールを見てから、怪しむ様にマンダーとバジールを見ながらそう言った。
来客がサクレイド学院内に入るには前日に通信を利用して予約を入れ、当日にも2階の『職員及び来客用の玄関』の側にある受付を通さなくてはならない。
これはこの学院の卒業生も同じであり、いくら在学中の後輩がいても勝手に入る事は許されないのだ。
「な、何言ってんだよっ!ここに来るまで警報音(サイレン)鳴ってなかっただろっ!?」
「そうっすよっ!だったらそんな事、アンヘル先生も分かってるんすよねっ!?」
「あー、確かにね。この時間だとほとんどの生徒は皆帰っちゃってるし、教職員も残ってる人は少ないから気が付かなかったのかな?」
焦りを見せながら言い訳をするマンダーとバジールに対し、アンヘルは現在の時刻を照らし合わせつつ他の学院関係者の事情を語った後にこう言った。
「女子二人が人質にされただけじゃなく、電脳の魔法でここのシステムのほとんどが乗っ取られた事も」
それを聞くとアンナは驚きの声を上げ、ミシェルも「やっぱな…」と小声で呟いた。
道化会という集団を耳にしてからよく聞く様になった特殊魔法の一つが利用された可能性を頭に入れておきながらも、的中して欲しくなかった悪い予感。
安全に石化から解放されたのも、この状況でアンヘルが来てくれたのは不幸中の幸いだと云った所だろうが、彼はそれだけが幸運だと思っていなかった。
「けど今はそれに気付いたラウネ先生がシステムの修復に取り掛かってるし、何より彼女達以外にまだ残ってる生徒がいるしね」
アンヘルは視線の奥の『武道場』の出入口付近に目を向けると、現れたのは制服姿ではなく、黒いタンクトップに白いラインが入った黒いズボンの服装に、白いスニーカーを履いたバラッドだった。
筋肉質の体型を思わせるその姿に、アンナやマンダー達3人は驚くがミシェルは至って平静を保ち、事情説明を求める。
「副会長、まだ帰ってなかったのか?」
「あの後、少しトレーニングをしてから帰ろうと思ってな。途中でアンヘル先生が“後輩が人質になってる!”って言われたから制服に着替えずに駆け付けただけだ」
どうやらバラッドは『生徒会用会議室』で解散した後、4階の『トレーニングルーム』で時間ギリギリまで鍛練をしていたらしく、その途中でアンヘルに呼び出された。
“人質”という言葉を聞けば、助ける為にすぐに駆け付けなければならないという気持ちでトレーニングをする時のままここへ来た様だ。
その結果、制服姿での着やせと現在の服装による筋肉質の体型では異なる印象に、事情を知らなければ現状が呑み込めないレベルで驚くケースもある。
アンナがその一人であり、普通に対話するミシェルにこっそりと尋ねる。
「ミシェル…、あの人…バラッド副会長で間違いないよね…?」
「ああ。以前、ユリアンの忘れ物を届けにトレーニングルームに行った事があってな。そん時に筋トレ中の副会長を見たんだよ。制服の時と全然印象が違ってたから、俺もちょっとはびっくりしたさ。ま、ユリアンから説明があって普通に見れるようになったけどな」
彼女の説明にアンナは「そ、そうなの…」と返しつつ、視線はシクールを見るバラッドへ。
「シクール、これは一体どういう事だ」
「おいシクールっ!お前の同級生の中に筋肉ムキムキマッチョなんかいたかっ!?」
「計画を始める前から言ったじゃないですかーっ!今の生徒会の副会長はマッチョだって!マンダーさん、そんなの無視してたから!」
「3年生って15歳だろっ!?そんなの有り得ねぇって思ってたんだよっ!」
バラッドの問いを遮る様にマンダーが強く問い詰めると、シクールは焦りながら目の前の同級生の特徴を伝えた。
どうやら屈強そうな生徒の存在をマンダーとバジールは信じていなかった様だが、バラッドはそんな事を気にせずに同じ質問を入れる。
「もう一度言う。これは一体どういう事だ」
返答次第では容赦はしない、そう思わせる様に彼の右手から黄金に輝く大刀―≪裁雷≫を出現させて握り締める。
「オイオイ待て待て待てっ!!俺達はあの女二人を殺しに来たんじゃねぇ!!ちょっと1年前の話をしたくてここに連れて来ただけなんだっ!!そう!ファーウェル先輩が殺されたあの日っ!」
「ひょっとしてコレかい?」
シクールが慌てながら真実を話す途中、アンヘルは黒くて細長いボイスレコーダーを取り出して全員に見せ付けた。