Story.06≪Chapter.1-6≫
「……止まった……?」
「そりゃあ、最後まで石化しちまったら人質の意味はなくなるからなぁ。それに、1年前のあの事件の話を聞く耳まで塞がっちまっても意味ねぇし」
マンダーは自分達をここに連れて来てまで1年前の事件を話したがるという事は、カルマが犯人だという状況を覆せる可能性のある情報を掴んだのだろうか。
そうだとしたら話を聞いてみる価値はあると思った時、何も出来ず不安な表情を浮かべるアンナと目が合った。
「ミシェル…」
「ひとまず、ここは我慢してこいつらの話でも聞いとこうぜ」
「……そうね。喚(わめ)いても何も変わらないのは確かな様ね」
アンナは少し迷ったが、今の所誰かが助けに来る気配はないと感じてミシェルの案に頷いた。
たとえあらゆる状態異常を解除する水属性の中級魔法―≪ディスペル・サーキュラー≫で下半身の石化が解けても、攻撃などによる衝撃や大きな音を立てたとしても、学院内の壁と床と天井は衝撃耐性と完全防音が施されている為、自分達以外に残っている生徒や教職員達がこの事に気付く可能性は極めて低い。
増してや大声を出しても何の意味もない、マンダー達3人がこちらを注視している以上、何事にもタイミングを待つしかない。
「へへっ、殊勝な心掛けだな」
「最近の後輩は素直っすねー。身の危険が迫ってりゃ、こうも簡単に俺達の言う事聞いてくれるモンですから」
「バジールさんの補助魔法はエグいですしね」
一方、彼ら3人は相手が何も出来ない様子を見て、勝ち誇った様に笑っていた。
「……それで、1年前の話って何ですか?」
「あん?そっちのガングロの女は何も聞いてねぇのか?カルマがファーウェルを殺したって話をよぉ」
「その話なら昨日、少しだけですが聞きました。…貴方達は、それについて何か話したい事でもあるんですか?」
アンナは声を震わせながらもマンダー達に問い掛け、その回答を元に昨日の発表でエリザベートが取り上げた事件に触れる。
「隣の刀持ってる女よりかは礼儀正しいみてぇだな。ああ、その通りだ。俺とバジールはこの学院を卒業した後、アヴェンジットを拠点に構えてあの事件の調査を独自でやった」
「そしたら2日で捜査がカルマ先輩の逮捕で打ち切られ、再調査を認めなかったのは、ビューティリス家が必要ないって調査員の連中に伝えたからなんだよ!犯人を逮捕してからも何度も何度も捜査すると島民が不安がる、それを一番回避したがっているのは神子だっていう噂が広まったんだ!!」
すると途中からシクールが声を荒げながら、再調査がなかった理由を告げた。
ここで有力貴族の一族であるビューティリス家が挙がり、神子のリヴマージが関わっていたと思われる発言が飛び出した。
「ビューティリス家とリヴが再調査を認めなかった?それ、マジで言ってんのか?」
「俺も最初は何かの間違いだって思ったんだっ!けど2ヶ月前、“粛清の炎”様がこう言ったんだよ!『リヴマージは下らない事で事件を長引かせる事を好まず、ビューティリス家は己の富と地位を守る為、神子の意向に従って打ち切らせた』ってな!」
それで信じたのか、だがバジールが“粛清の炎”の事を様付けで呼んでいた為、これでこの3人が道化会の会員である事はほぼ確定だろう。
またもや正体を明かす様な言葉を発した事でマンダーが彼に、「バカ!!“粛清の炎”様の名前出すんじゃねぇ!!」と怒鳴り付けていたのがよく分かる。
「……お前ら、とことん口が軽いじゃねぇか」
「う、うるせぇ!!四王座でも何でもねぇ奴にバラしたってこっちは何とも思ってないぜ!」
こちらはいずれも四王座の一員ではないのを良い事に、マンダーは冷や汗を少し掻きながらどうにか気持ちを立て直そうとしている。
するとここでシクールがこっそりと彼とバジールを呼び、ミシェルとアンナから少し遠ざかる様に数歩だけ足を進めては小声で話し掛ける。
「マンダーさん、バジールさん。俺、ここに入ってからずっと思ってたんですけど…」
シクールは彼女達に気付かれない程度で、チラッとミシェルに目を向けていた。
「そりゃあ、最後まで石化しちまったら人質の意味はなくなるからなぁ。それに、1年前のあの事件の話を聞く耳まで塞がっちまっても意味ねぇし」
マンダーは自分達をここに連れて来てまで1年前の事件を話したがるという事は、カルマが犯人だという状況を覆せる可能性のある情報を掴んだのだろうか。
そうだとしたら話を聞いてみる価値はあると思った時、何も出来ず不安な表情を浮かべるアンナと目が合った。
「ミシェル…」
「ひとまず、ここは我慢してこいつらの話でも聞いとこうぜ」
「……そうね。喚(わめ)いても何も変わらないのは確かな様ね」
アンナは少し迷ったが、今の所誰かが助けに来る気配はないと感じてミシェルの案に頷いた。
たとえあらゆる状態異常を解除する水属性の中級魔法―≪ディスペル・サーキュラー≫で下半身の石化が解けても、攻撃などによる衝撃や大きな音を立てたとしても、学院内の壁と床と天井は衝撃耐性と完全防音が施されている為、自分達以外に残っている生徒や教職員達がこの事に気付く可能性は極めて低い。
増してや大声を出しても何の意味もない、マンダー達3人がこちらを注視している以上、何事にもタイミングを待つしかない。
「へへっ、殊勝な心掛けだな」
「最近の後輩は素直っすねー。身の危険が迫ってりゃ、こうも簡単に俺達の言う事聞いてくれるモンですから」
「バジールさんの補助魔法はエグいですしね」
一方、彼ら3人は相手が何も出来ない様子を見て、勝ち誇った様に笑っていた。
「……それで、1年前の話って何ですか?」
「あん?そっちのガングロの女は何も聞いてねぇのか?カルマがファーウェルを殺したって話をよぉ」
「その話なら昨日、少しだけですが聞きました。…貴方達は、それについて何か話したい事でもあるんですか?」
アンナは声を震わせながらもマンダー達に問い掛け、その回答を元に昨日の発表でエリザベートが取り上げた事件に触れる。
「隣の刀持ってる女よりかは礼儀正しいみてぇだな。ああ、その通りだ。俺とバジールはこの学院を卒業した後、アヴェンジットを拠点に構えてあの事件の調査を独自でやった」
「そしたら2日で捜査がカルマ先輩の逮捕で打ち切られ、再調査を認めなかったのは、ビューティリス家が必要ないって調査員の連中に伝えたからなんだよ!犯人を逮捕してからも何度も何度も捜査すると島民が不安がる、それを一番回避したがっているのは神子だっていう噂が広まったんだ!!」
すると途中からシクールが声を荒げながら、再調査がなかった理由を告げた。
ここで有力貴族の一族であるビューティリス家が挙がり、神子のリヴマージが関わっていたと思われる発言が飛び出した。
「ビューティリス家とリヴが再調査を認めなかった?それ、マジで言ってんのか?」
「俺も最初は何かの間違いだって思ったんだっ!けど2ヶ月前、“粛清の炎”様がこう言ったんだよ!『リヴマージは下らない事で事件を長引かせる事を好まず、ビューティリス家は己の富と地位を守る為、神子の意向に従って打ち切らせた』ってな!」
それで信じたのか、だがバジールが“粛清の炎”の事を様付けで呼んでいた為、これでこの3人が道化会の会員である事はほぼ確定だろう。
またもや正体を明かす様な言葉を発した事でマンダーが彼に、「バカ!!“粛清の炎”様の名前出すんじゃねぇ!!」と怒鳴り付けていたのがよく分かる。
「……お前ら、とことん口が軽いじゃねぇか」
「う、うるせぇ!!四王座でも何でもねぇ奴にバラしたってこっちは何とも思ってないぜ!」
こちらはいずれも四王座の一員ではないのを良い事に、マンダーは冷や汗を少し掻きながらどうにか気持ちを立て直そうとしている。
するとここでシクールがこっそりと彼とバジールを呼び、ミシェルとアンナから少し遠ざかる様に数歩だけ足を進めては小声で話し掛ける。
「マンダーさん、バジールさん。俺、ここに入ってからずっと思ってたんですけど…」
シクールは彼女達に気付かれない程度で、チラッとミシェルに目を向けていた。