Story.06≪Chapter.1-6≫
「ただ一つ言える事は、道化会が襲撃して来る直前も、その後も見てない。これだけはハッキリと覚えている」
「じゃあ何故“見た事がある”と言った?」
「入学する前だった様な気がしてな。それ以上細かい事は思い出せねぇ」
あの反応は入学前を振り返っていたと知らされた時、時期がズレていたかとバラッドは溜め息を漏らした。
だが調査を進めればいずれ居場所も特定出来ると、マーガレットはこの雰囲気をどうにか前向きなモノへと変えようとする。
「ま、まぁ、調べるのは今からでも遅くはないわっ」
「……そうですね」
「で、何でこの二人の映像を出したんだ?」
ミシェルは話題を戻そうと思い、マンダーとバジールの立体映像(ホログラム)を出させた理由をマーガレットに尋ねた。
「実は彼ら、ファーウェルが殺害された後の朝礼で、カルマに追放処分を下した事に関して積極的に抗議していたの。他にもあの時の処罰を不服としていた人がいたかもしれないけれど、私に強く言い付けて来たのは主にこの二人だったわ」
「私の所にも抗議が来ました。『もう一度、あの戦いのリプレイ検証をしてくれ』とも言われましたね」
カルマとファーウェルとの仲の良さを知る当時の生徒だからこそ、信じられない結果に不満を抱くのは理解出来る。
ラウネも肩入れというワケではないのだが、見落としがないかその時の動画をチェックしようとした時、却下の声を上げる人物がいた。
「しかし、それと同時にウォルフ先生が私達の所に来たんです。『何度確認しようが、この事実を覆(くつがえ)る事はない。これ以上異論を唱えるのであれば学院に対する反逆と見做し、貴様らに相応の処罰を下す事になるであろう』とその人が言った途端、二人は黙って退きました」
「脅迫みてぇな退散のさせ方だな」
「ミシェルさん、ここにはいないからって口の悪い言い方をしないで下さい」
当時の抜き打ちテストでは、ウォルフが3年生の監視役としてあの事件を目撃していた。
それに加えて誰に対しても厳しい言動により、カルマの追放処分に関連する大きな混乱はなかったらしい。
その時は1年生だったミシェルも、あの事件で騒ぎになったのはほんの一瞬だけであり、それから今回の襲撃事件が起きるまでは本当に何もなかったと感じていた。
まるで道化会が現れなければ風化されていたかの様に、サクレイド学院は平和そのものだったのだから。
マンダーとバジールの立体映像(ホログラム)を出現させた理由と、二人が起こした行動の説明をした後、マーガレットはミシェルに視線を送る。
「ミシェル、貴方はこの二人の行方を探して欲しいの。貴方がここに来るまで彼らに通信を入れてみたんだけど、不在みたいで…」
それが今回、この『生徒会用会議室』に呼び出された理由なのだが、ミシェルは自分より彼らをよく知る人物に頼めば良いのではないかと感じている。
「シクールって奴に聞けば早くね?」
「貴方の1年先輩ですよ。本人の前では無礼な態度を取らないように。……それはともかく、私もそう思って彼に聞いてみたのですが、“傭兵の仕事でいないだけじゃないですか?”という返答ばかりでした」
「そうなのか?じゃあ、あの二人の家族とかには伝えたのか?」
「ご家族の方々には伝える事が出来たけど、二人共卒業と同時に一人暮らしを始めたと聞いたわ。場所はコマンダルのアヴェンジット。ジャスティスギルドを拠点として活動しているか、エンシューズコロシアムで闘技場ファイターとして活動しているかと思っていずれも問い合わせたけど、“その二人は知らない”って…」
ラウネとマーガレットは、ミシェルがここに来るまで懸命に二人がいそうな所に問い合わせたものの、全て空振りに終わっていた様だ。
唯一分かっているのは、この学院を卒業した後に西の島―コマンダルのメインの街である≪アヴェンジット≫移り住んでいる事。
「要するに、休みの日にコマンダルに行って二人を探して来いってか?」
これは直接行って捜索するしかないと判断し、わざわざこうして二人の教師が一人の生徒に頼み込んでいる。
「じゃあ何故“見た事がある”と言った?」
「入学する前だった様な気がしてな。それ以上細かい事は思い出せねぇ」
あの反応は入学前を振り返っていたと知らされた時、時期がズレていたかとバラッドは溜め息を漏らした。
だが調査を進めればいずれ居場所も特定出来ると、マーガレットはこの雰囲気をどうにか前向きなモノへと変えようとする。
「ま、まぁ、調べるのは今からでも遅くはないわっ」
「……そうですね」
「で、何でこの二人の映像を出したんだ?」
ミシェルは話題を戻そうと思い、マンダーとバジールの立体映像(ホログラム)を出させた理由をマーガレットに尋ねた。
「実は彼ら、ファーウェルが殺害された後の朝礼で、カルマに追放処分を下した事に関して積極的に抗議していたの。他にもあの時の処罰を不服としていた人がいたかもしれないけれど、私に強く言い付けて来たのは主にこの二人だったわ」
「私の所にも抗議が来ました。『もう一度、あの戦いのリプレイ検証をしてくれ』とも言われましたね」
カルマとファーウェルとの仲の良さを知る当時の生徒だからこそ、信じられない結果に不満を抱くのは理解出来る。
ラウネも肩入れというワケではないのだが、見落としがないかその時の動画をチェックしようとした時、却下の声を上げる人物がいた。
「しかし、それと同時にウォルフ先生が私達の所に来たんです。『何度確認しようが、この事実を覆(くつがえ)る事はない。これ以上異論を唱えるのであれば学院に対する反逆と見做し、貴様らに相応の処罰を下す事になるであろう』とその人が言った途端、二人は黙って退きました」
「脅迫みてぇな退散のさせ方だな」
「ミシェルさん、ここにはいないからって口の悪い言い方をしないで下さい」
当時の抜き打ちテストでは、ウォルフが3年生の監視役としてあの事件を目撃していた。
それに加えて誰に対しても厳しい言動により、カルマの追放処分に関連する大きな混乱はなかったらしい。
その時は1年生だったミシェルも、あの事件で騒ぎになったのはほんの一瞬だけであり、それから今回の襲撃事件が起きるまでは本当に何もなかったと感じていた。
まるで道化会が現れなければ風化されていたかの様に、サクレイド学院は平和そのものだったのだから。
マンダーとバジールの立体映像(ホログラム)を出現させた理由と、二人が起こした行動の説明をした後、マーガレットはミシェルに視線を送る。
「ミシェル、貴方はこの二人の行方を探して欲しいの。貴方がここに来るまで彼らに通信を入れてみたんだけど、不在みたいで…」
それが今回、この『生徒会用会議室』に呼び出された理由なのだが、ミシェルは自分より彼らをよく知る人物に頼めば良いのではないかと感じている。
「シクールって奴に聞けば早くね?」
「貴方の1年先輩ですよ。本人の前では無礼な態度を取らないように。……それはともかく、私もそう思って彼に聞いてみたのですが、“傭兵の仕事でいないだけじゃないですか?”という返答ばかりでした」
「そうなのか?じゃあ、あの二人の家族とかには伝えたのか?」
「ご家族の方々には伝える事が出来たけど、二人共卒業と同時に一人暮らしを始めたと聞いたわ。場所はコマンダルのアヴェンジット。ジャスティスギルドを拠点として活動しているか、エンシューズコロシアムで闘技場ファイターとして活動しているかと思っていずれも問い合わせたけど、“その二人は知らない”って…」
ラウネとマーガレットは、ミシェルがここに来るまで懸命に二人がいそうな所に問い合わせたものの、全て空振りに終わっていた様だ。
唯一分かっているのは、この学院を卒業した後に西の島―コマンダルのメインの街である≪アヴェンジット≫移り住んでいる事。
「要するに、休みの日にコマンダルに行って二人を探して来いってか?」
これは直接行って捜索するしかないと判断し、わざわざこうして二人の教師が一人の生徒に頼み込んでいる。