Story.05≪Chapter.1-5≫
彼らの話を聞いて、ミシェルもやはり教職員達の間であの事件と関係していると思っているだろうと感じている。
「ひとまず、9年前に何が起きたかについては、ファウンダット学院長とセロン先生と僕の3人だけで極秘に調査しておきます。これが他の生徒達に知られたら、“何でミシェルを庇うんだ?”って言われて怪しまれるのも困りますからね」
「何だか悪いな。あれは俺個人の問題だってのに」
「リアンという男がそれを知っているのであれば、我々とて無視出来る事案じゃなかろう。彼が道化会に所属し、学院内にスパイがいるのであれば尚更じゃ。調査報告はタイミングを見てから、という事になりそうじゃが」
「それで構わねぇ。今重要なのは、道化会そのものの壊滅だからな」
記憶に関する手掛かりはない、しかし道化会については僅かながらも情報はある。
加えて後者の存在がある限りリヴマージは延々と狙われ続け、アイドライズだけでなく聖冥諸島全体の危機が迫る恐れがある。
ミシェルはそれを理解した上で道化会の陰謀の阻止を最優先するという意思に、ファウンダットとアンヘルは期待出来ると思わせる様に微笑んだ。
「では、こちらからの用件は以上じゃ」
「今後も道化会の調査をするだろうけど、くれぐれも怪しまれるような事はしないように。特に有力貴族の皆さんの前ではね」
「へいへい」
「…一応、学院長の前では“御意”の方が良いと思うよ?」
「……御意」
学院内に潜むスパイを見つける…という所までかは分からないが、今後の調査はより一層慎重に行わなければならない。
自らが疑いの目を向けられては弊害が出る上、裏切り者もその状況を利用して暗躍する可能性もあるからだ。
ますます面倒な事になったと思いながら『学院長室』を出て、3階の『201教室』へと足を運んだ。
それから約9時間後、時刻は16時30分…。
本日の授業が終わり、1階の『武道場』でミシェルが≪斬蒼刀≫を素振りしていると、出入口の自動ドアが開く音がした。
「ミシェルさん、ちょっと良いかしら?」
直後に聞き覚えのある女子生徒に声を掛けられ、一息をついてから刀を下ろしてその方向に視線を送ると、ミュレイとバラッド、そしてアンナと云った生徒会の面々がいた。
ミュレイはにこりと微笑む一方でバラッドは無表情を保ち、アンナは練習の邪魔をしてしまったかと苦笑いを浮かべていた。
「何の用だ?」
「今すぐに生徒会用会議室に来て欲しい。セロン先生には既に俺達から事情を話した」
バラッドからの一言に、ミシェルは若干鋭い目付きをしながら刀を仕舞った。
まさか昨日の動画の事をラウネがミュレイ達に伝え、記憶のない9年前について聞きに来たのだろうか。
今日は周りが騒がれる様な事はしておらず、静かに過ごしていた筈なのだが…。
「そんなに警戒しなくて良いわよ。貴方に敵対する様な事をしに来たんじゃないわ」
「……3年にもスパイの存在が伝わってたか」
「学院にとっても衝撃的な情報だから、当然1年生にも伝わっているわ。だけど私達生徒会は、道化会との関わりは一切ありません。ピオニーアの名に懸けて誓うわ」
どうやら道化会のスパイに関しては、既に学院全体で共有されている様だ。
真剣な眼差しで身の潔白を称するミュレイに、ミシェルは溜め息を漏らしながら「分かった」と了承した。
生徒会に連れられて2階の『生徒会用会議室』に入った時、そこにいたのはラウネと1年生の担任であり魔法学の教師のマーガレットだった。
「修行中に呼び出してごめんね。実は貴方にお願いがあるの」
こちらの緊張を和らげる様な優しい口調の中に、マーガレットはミシェルに何かを頼み込もうとしている…。
To be contined.
「ひとまず、9年前に何が起きたかについては、ファウンダット学院長とセロン先生と僕の3人だけで極秘に調査しておきます。これが他の生徒達に知られたら、“何でミシェルを庇うんだ?”って言われて怪しまれるのも困りますからね」
「何だか悪いな。あれは俺個人の問題だってのに」
「リアンという男がそれを知っているのであれば、我々とて無視出来る事案じゃなかろう。彼が道化会に所属し、学院内にスパイがいるのであれば尚更じゃ。調査報告はタイミングを見てから、という事になりそうじゃが」
「それで構わねぇ。今重要なのは、道化会そのものの壊滅だからな」
記憶に関する手掛かりはない、しかし道化会については僅かながらも情報はある。
加えて後者の存在がある限りリヴマージは延々と狙われ続け、アイドライズだけでなく聖冥諸島全体の危機が迫る恐れがある。
ミシェルはそれを理解した上で道化会の陰謀の阻止を最優先するという意思に、ファウンダットとアンヘルは期待出来ると思わせる様に微笑んだ。
「では、こちらからの用件は以上じゃ」
「今後も道化会の調査をするだろうけど、くれぐれも怪しまれるような事はしないように。特に有力貴族の皆さんの前ではね」
「へいへい」
「…一応、学院長の前では“御意”の方が良いと思うよ?」
「……御意」
学院内に潜むスパイを見つける…という所までかは分からないが、今後の調査はより一層慎重に行わなければならない。
自らが疑いの目を向けられては弊害が出る上、裏切り者もその状況を利用して暗躍する可能性もあるからだ。
ますます面倒な事になったと思いながら『学院長室』を出て、3階の『201教室』へと足を運んだ。
それから約9時間後、時刻は16時30分…。
本日の授業が終わり、1階の『武道場』でミシェルが≪斬蒼刀≫を素振りしていると、出入口の自動ドアが開く音がした。
「ミシェルさん、ちょっと良いかしら?」
直後に聞き覚えのある女子生徒に声を掛けられ、一息をついてから刀を下ろしてその方向に視線を送ると、ミュレイとバラッド、そしてアンナと云った生徒会の面々がいた。
ミュレイはにこりと微笑む一方でバラッドは無表情を保ち、アンナは練習の邪魔をしてしまったかと苦笑いを浮かべていた。
「何の用だ?」
「今すぐに生徒会用会議室に来て欲しい。セロン先生には既に俺達から事情を話した」
バラッドからの一言に、ミシェルは若干鋭い目付きをしながら刀を仕舞った。
まさか昨日の動画の事をラウネがミュレイ達に伝え、記憶のない9年前について聞きに来たのだろうか。
今日は周りが騒がれる様な事はしておらず、静かに過ごしていた筈なのだが…。
「そんなに警戒しなくて良いわよ。貴方に敵対する様な事をしに来たんじゃないわ」
「……3年にもスパイの存在が伝わってたか」
「学院にとっても衝撃的な情報だから、当然1年生にも伝わっているわ。だけど私達生徒会は、道化会との関わりは一切ありません。ピオニーアの名に懸けて誓うわ」
どうやら道化会のスパイに関しては、既に学院全体で共有されている様だ。
真剣な眼差しで身の潔白を称するミュレイに、ミシェルは溜め息を漏らしながら「分かった」と了承した。
生徒会に連れられて2階の『生徒会用会議室』に入った時、そこにいたのはラウネと1年生の担任であり魔法学の教師のマーガレットだった。
「修行中に呼び出してごめんね。実は貴方にお願いがあるの」
こちらの緊張を和らげる様な優しい口調の中に、マーガレットはミシェルに何かを頼み込もうとしている…。
To be contined.