chapter3
夢小説設定
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クリスマスを過ぎれば年の瀬はすぐそこだった。
夜、部屋で携帯が鳴り響く。
それは電話だったようだ。
携帯を確認した名前はそれを耳に当てた。
「もしもし。うん、言ったじゃない、今年はこっちで過ごすって」
「え?」
「……わかった。2日、ね」
電話を切った名前は困り顔で液晶を見つめていた。
電話の内容からすると、実家からだろうか。
彼女の様子を横目で見ていた一方通行は問いかける。
「どォした?」
「正月は帰らないって言ったら親がこっち来るって」
「……親」
一方通行と違い、名前には家族がいた。
今まで特に話題には上がらなかった為、一方通行は忘れかけていた存在だ。
一般に、学園都市の生徒は正月には実家に帰省するものだ。
失念していた事態に一方通行は顔を曇らせる。
「2日に日帰りで来るんだって。悪いけど一方通行、昼間だけ部屋を空けてくれないかな?男の人との同居なんて親は許さないだろうし、友達と住んでる設定でいこうと思う」
「それくらい構わねェが……イイのか?実家に帰らなくて」
「……いいよ」
「家族と仲悪ィのか?」
「え?わりと良いんじゃないかな。どうしたの?」
名前は不思議そうにしている。
一方通行は眉間に皺を寄せていた。
「俺のせいか?俺が、一人にするなって言ったから、オマエは」
他の人を犠牲にするのか?
自分でもどうしたいのかわからなかった。
一人は嫌なのに。
自分を優先にしてくれるのは嬉しい筈なのに。
せっかくいる家族の下へ帰らないことは望んでいなかった。
自分が欲しくても得られなかった家族が……いるのに。
以前名前は家族をなくすのが怖いと言っていた。
それだけ大事にしてる存在だろうに、もし家族に何かあって後悔させてしまったなら。
自分を理由に、名前と家族を引き離してはいけない。
苦しげにしている一方通行を見つめ、名前はしばらく沈黙していた。
「……結果的にだけどさ、こっちに来てくれるならいいじゃない。来年は帰りたいと思ってる。あなたは大丈夫?」
「…………。あァ」
やはり気がかりは自分だったようだ。
一方通行は苦虫を噛み潰した。
「親が来てる時は上条くんあたりに頼めたりしないかなぁ」
「上条?ガキじゃねェンだし別に半日くらい一人でイイっての」
「上条くんも帰るかもしれないもんね、ダメ元でも聞いてみるよ」
「はァ?寮はわかるが連絡先は知らねェぞ」
「あ、私知ってるから大丈夫」
名前はあっけらかんとそう言い放ち、電話をかけ始めた。
一方通行は一瞬思考が停止した。
何故自分が知らない上条の番号を名前が知っていたのか。
自分が知らない間に二人は連絡を取っていたのか。
ショッキングな事実に、上条の所へ行かなくても平気であると説き伏せることを忘れていた。
電話を終えた名前が笑顔でこちらを向く。
「上条くん家大丈夫だって……どうしたの?」
「なンでオマエ上条の番号知ってンの?」
「え?トモと知り合いだったみたいで、流れで。顔広いんだよあの子」
一方通行はトモが嫌いだ。
苦手なだけと思っていたが、自分の味方にはなり得ないと確信した。
「アイツと連絡取ってたのか」
「うーん、今まで用とかなかったからあんまり……」
「そォ、か」
一方通行は深く息をついた。
今のところは自分が危惧したことにはなっていないようだ。
次に会うとき、上条にはどうにかして釘を刺しておかねばならないと思った。
to be continued...