chapter3
夢小説設定
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「……」
名前は微かな寝息を立てる一方通行に目を落とした。
もう眠ったようだ。
一方通行と繋いでいた手をゆっくりと離した。
「もォ一人じゃ生きていけねェ」
そう訴えた一方通行に、名前は言葉を失った。
普段平気そうに振舞っていても、強がっていても、一度拠り所を失くした彼は不安定なのだ。
彼は絶対的だと思っていた支えが脆いことを知ってしまった。
だからといって一方通行の言う通り、一緒に寝ることはできなかった。
これ以上近付いてはいよいよ共倒れになってしまいそうな気がした。
名前はしばし考える。
名前がいないと眠れないならば、眠るまで傍にいてあげればいい。
そして彼が眠るまで手を繋いでいることにしたのだ。
名前は眠った一方通行を眺める。
自らの手を抜いた場所には彼の手が二つ。
彼は名前の手に縋るようにして、胎児のように丸くなって寝息を立てていた。
名前は一度だけ一方通行の髪を撫でて立ち上がる。
部屋を出て、音のしないようドアを閉めた。
一人じゃ生きていけない、か。
「私もだよ。一方通行」
一方通行が起きた時、名前はもう家を出ていた。
寂しい気持ちはあるが、それを振り払うよう首を振る。
テーブルには昼食のことが書かれていた。
冷蔵庫から取り出したロールキャベツを温め、食べながら昨晩を思い出す。
無茶を言ってしまったにも関わらず、名前は突き放すことなく眠るまで手を繋ぐことを選んでくれた。
初めて会った時と同じだ。
名前が好きだと自覚した時、一つ迷いがあった。
それは今の彼女と記憶の中の彼女は違うのではないか、同じ人物と考えていいのかという点だ。
しかし昨晩、彼女が手を繋いでくれたことで確信した。
この名前は名前を呼んでくれた名前と同じだと。
同じ心を持っていると。
昼食を完食し、食器を洗う。
水流を操りながら一方通行は少し後悔していた。
それは昨晩、名前に甘えてしまったことだ。
名前に好かれるために、男として見てもらいたいのだが。
クソ、こォいうのはわかンねンだよ。
洗いものを終えた一方通行は毒づきながら冷蔵庫のドアを開けた。
コーヒーのストックは切れていた。
部屋を出てコンビニへ向かう。
外へ出るのは数日ぶりだが、街はいつのまにか浮足立ったものになっている。
コンビニへ入りクリスマスソングを耳にしたところで今日の日付を思い出した。
―― クリスマスか。来週だったな。
名前に会うまでは何の関係もなかった。
寧ろそれまでは賑やかさを増す街を忌々しく思っていたのに。
一緒に過ごす人がいるだけで胸が躍りそうだ。
――何か名前に買っとくか。
コーヒーを買うのは後だ。
一方通行はセブンスミストへと向かった。
平日であるため店内はさほど混んでいない。
以前二人で来た時を思い出し、名前が長く入り浸っていたフロアへと向かう。
恐らく彼女の好きな系統なのだろう。
暖かそうなマフラーを手に取る。
この辺りが無難だろうか。
そこでトモの台詞が蘇る。
『ネックレスっていうと首輪みたいだねとか独占欲の表れだとか、思ってないしぃ』
「……」
また要らぬ ことを言われるかもしれない
なにも前回と同じく首に巻くものでなくてもいい筈だ。
一方通行は手袋を手に取った。
ピンクベージュの品良く可愛らしいデザインだ。
──手ェ繋げねェな……まァ外くらいイイか。
手袋を候補にしつつ、隣の雑貨屋にも入る。
こちらでは主にルームグッズが並んでいる。
引っ越したばかりで今の部屋は物が少ない。
こういったものも良いかもしれない。
名前が部屋での時間を大切にしてくれるなら、一方通行にとっても価値あるものに思えてくる。
マグカップ、ルームウェア、クッション、可愛らしいカバーのついた湯たんぽ。
一方通行は一つ一つ商品を眺めながら考えていく。
そこで淡い桃色のブランケットが目に止まった。
ボタンがついており、肩に掛けて羽織れるものだ。
居間で過ごす名前はたまに寒そうにしている。
厚着すれば良いのに「こたつに入るから大丈夫」と彼女は言う。
しかしこたつに入っていても肩は冷えるのではないか。
一方通行はブランケットを羽織った名前を想像する。
「……ッ」
思わず息を詰まらせ、口元を抑えた。
想像した名前の姿が可愛かったのだ。
to be continued...