このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

chapter3

夢小説設定

本棚全体の夢小説設定
夢主の苗字
夢主の名前





今日もようやく学校が終わった。
一方通行はポケットから鍵を取り出し、ドアを開けた。

「ただいま……」

『おかえり』はかえって来なかった。
名前はまだ帰っていないのか。
この時間帯、いつも名前がいる台所を覗いてみる。
誰もいない。
部屋は静まりかえっていた。
自室で荷物を置いていると尻ポケットに入れた携帯が震えた。
名前からメールだ。

『ちょっと遅くなりそう。晩御飯お弁当にするけど何がいい?』

晩御飯が弁当とは珍しい。
肉系で、とだけ返信して一方通行は名前の部屋に入ってみる。
引っ越したばかりの時は生活感のなかった部屋だが、徐々に私物が増えてきたようだ。
その中で名前のベッドにあるものを見つけた。
以前、ゲームセンターでとってやったウサギのぬいぐるみだ。
スキルアウトに部屋を襲われた時うち捨てられたようだったが、洗ってまだ持ってきているらしい。

名前と一緒に眠ることを許されているこのウサギが羨ましい。
自分はおやすみしか共にできないというのに、こいつは朝も一緒だ。
もっともっと、名前に触れていたい。
おやようもおやすみも一緒がいい。
瞼が重い。彼女の匂いのある場所であるせいか安心する。

名前……どォしたら」

どうしたら俺のこと、愛してくれる?
どうしたらずっと寄り添っていられる?
どうしたら……





その頃、教室には数人の生徒が残っていた。
窓からは夕日が差し込み、長い影を作っている。
日直だった生徒が帰ったのを見計らって、名前は切り出した。

「ねぇ、話って何?もう皆帰ったからいいでしょ、トモ。本題に入ろうよ」
「そうだね。じゃ聞くけど、一方通行のこと好きなの?」
「なに、急に」
「誰かさんのために確かめたいと思ってね」
「…………家族として、なら」
「本当に?そうやってごまかしてない?」
「ほんとう……だよ」

苗字がこちらへと向ける鋭い視線に、名前はたじろぐ。
自分の言葉に自信がなくなりそうだった。

「どうしたの……真剣な顔して。私が一方通行のこと好きなんじゃないかって言いたいの?」
「そういうこと。私の勘違いならそれでもいいけどさ、好きなのは家族としてだって自信もって言えるわけじゃなさそうだよね」

名前は答えられなかった。
そもそもごまかしてないか、と追求されたらたじろいでもおかしくないじゃないか。
一方通行への気持ちが家族愛にしろ恋愛にしろ好意であることには変わりないし、区別は曖昧なものだ。
そんなもの自信もって答えられない。
名前がそう考えているとトモが再び口を開いた。

「一度自分と向き合って考えてみたら?」
「……わかった」
「話はこれだけだよ、残ってくれてありがとね」
「ううん、気にしないで」

机の横に掛けた鞄を握った。
トモはまだ学校に用事があるらしく、別れを告げて一人で教室を出る。
考えるのは一方通行とのことだ。
先程はつい、トモに対し反感を持ってしまったことを反省する。
家族としての好意を予防線のように使っていることを彼女自身、自覚していた。
名前はたまに一方通行と恋仲であるような夢を見る。
まるで自分は、彼と付き合うことを望んでいるのではないか、と疑いたくなるような夢だ。
だが一方通行が好きだったとして、彼が名前を好きとは限らない。
一方通行に告白したとする。
これが片想いだったらきっと関係も崩れる、と思う。
恐らく同居生活も終わりになる。それだけは避けたかった。
名前にとって大事なのは恋心よりも同居の存続、だった。




「ただいま……」

部屋は静まりかえっていた。
一方通行が先に帰っている筈なのだが、どうしたのだろう。
居間の電気はつけっぱなしだ。
一方通行の部屋には誰もいない。

「一方通行?」

トイレや風呂にも人の気配はない。
名前は自室へと入る。
一方通行は彼女のベッドで寝息を立てていた。
名前の毛布に包まるようにし身体を丸めている、その顔はどこか苦しげだった。
荷物を下ろし、ベッドに腰かけた。
白い頬を優しく叩くと一方通行は薄く目を開いた。
彼は身を起こしながら瞼を擦り、赤い瞳が名前を捉えると、それは潤んだ。

「……名前、俺のこと……きらいじゃないよな?」

ぎょっとしたのは名前の方だ。

「ええっ……なんでそんなこと言うの?」
「怖ェから……嫌われンの」
「大丈夫、好きだよ、好き」

それは家族愛から来るのだろう。
それとも恋愛から?
曖昧なままで好きだと言うことに罪悪感を抱いた。
一方通行の背中をさすっていると、段々と彼も落ち着いた素振りを見せた。

「ン……」
「さ、晩御飯にしよ」





一方通行には焼肉弁当が用意されていた。
それとは別にサラダも。
一方通行は容器の蓋をピン、と弾いて唇を尖らせた。

「……これ、いらねェのに」
「だってその弁当、野菜が全然ないじゃない」
「つってもよォ……」

コンビニのサラダに栄養価は期待できるだろうか。
一方通行はそう言いかけた口を噤んだ。
彼女なりに健康を気遣ってるのはわかる。

「なンでもねェ」

長生きして欲しいのはお互い様か。
一方通行は小さく息を吐いた。




to be continued...
18/20ページ
スキ