chapter3
夢小説設定
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51 +38
「おやすみ」
電気を消して、眠る前の挨拶をした。
いつものように一方通行の手を握る。この習慣はいまだ続いていた。
過去のことがあり、彼は私がいないと眠れないらしい。
平たく言えば、寝かしつけだ。
「わりィな」
「え?」
「毎晩こォして貰ってて。子どもじゃねェのに」
見られたくないのか、一方通行は右腕で目を覆っていた。
「自分でも情けねェって思う」
「子どもじゃなくても、あなたに子ども時代はあったの?」
「……いや、」
「私はね、あなたの子ども時代を取り返したい。だからお弁当とか、はりきっちゃった。それに、私のこと大事に思ってくれるんだもん。あなたに必要とされて私は救われてるんだよ」
私は言葉を続けた。
「ずっとこうしてなきゃ眠れないのは今後困ることもあるかも知れないけど。たぶん、きっかけはあると思うよ」
「よかった……幻滅、されてなくて……」
眠ってしまったのだろうか。
その言葉で会話は途切れた。
幻滅などある筈がない。
私は一方通行の心を守りたい。
こんなにも私を必要としてくれる人を邪険にできる筈がないのだ。
夜中、一方通行は目を開いた。
名前は彼の手を握ったまま、ベッドに上半身を預けるような形で眠っていた。
「……風邪ひいちまうだろォが」
一方通行は小さく呟いた。
しかしこの状況は彼を寝かしつけていたせいでもあるので、名前が起きたとして強くは出られない。
一方通行は身体を起こすとベッドを降り、能力を使って名前の身体を抱えた。
彼は名前を本人の寝室に寝かしてやる、ということはしなかった。
――だって名前を部屋に戻したところで俺が寝れるかわかンねェし。
彼は心の中だけで言い訳をした。
これは良い機会だ、とばかりにそのまま自分のベッドに寝かし、自らも横になる。
そしてぎゅうっと名前の身体を抱きしめた。
彼にとってこうしている状態が幸せなのだ。
ずっと欲しかったものはこの行為に凝縮されている、そんな気がする。
「寝てるから言うぞ」
名前が起きないよう、小さな声で囁く。
「き、……すきだ」
目を閉じた。
いつか、いつか言うからどうかその時は受け止めて欲しいと願った。
その時はこんな状況じゃなく、ちゃんと名前が起きている時に。
「…………あいされてェなァ」
名前に。愛されたい。受け入れられたい。
目尻から熱い何かが零れた。
ハッと意識が戻る。
……いけない。
見まわすとここは一方通行のベッドだった。
ベッドの主である彼とは手を繋いでいる状態で眠っていた。
おそらく、一方通行を寝かしつけていたまま眠ってしまった私を、彼がベッドに寝かせたのだろう。
枕元のアラームを見ると、針は2時過ぎを指していた。
明日も学校だ。
早く自分のベッドで寝なくては。
しかし、握った一方通行の手を離そうとするが、離れない。
いつもは彼が眠ると繋いだ手は緩むのだが……。
左手を使い、無理に離そうとすると声が聞こえた。
一方通行は魘されているようだった。
「嫌だ。俺の、俺のだ」
「名前、好きなンだ、だから返してくれよ」
ドキリと胸が高鳴った。
どういう意味で、彼が私を求めているのかはわからないけれど。
起こしてあけるべきだろうか。
私は一方通行の頬に触れた。
「一方通行、私は」
此処だよ、という言葉が出る前に、一方通行は呻いた。
「俺の……コーヒー……!」
「…………」
「……うゥ」
「……コー、ヒー……?」
脱力した。
求められているのが私かと思っていたが、まさかコーヒーだとは。
一方通行の寝言を頭の中で反芻する。
コーヒーを奪ったのは夢の中の私なのだろうか。
中断していた手を離す作業を続けながら、小さく悪態をついた。
「ドキっとしたでしょうが……」
「うゥ……」
悲しげなうめき声を残して私は部屋を後にした。
台所へ行き、一方通行愛飲の缶コーヒーを取りだした。
再び一方通行の部屋へ行き、眠る彼に握らせる。
これで私は罪悪感と戦わなくていい筈だ。
to be continued...
「おやすみ」
電気を消して、眠る前の挨拶をした。
いつものように一方通行の手を握る。この習慣はいまだ続いていた。
過去のことがあり、彼は私がいないと眠れないらしい。
平たく言えば、寝かしつけだ。
「わりィな」
「え?」
「毎晩こォして貰ってて。子どもじゃねェのに」
見られたくないのか、一方通行は右腕で目を覆っていた。
「自分でも情けねェって思う」
「子どもじゃなくても、あなたに子ども時代はあったの?」
「……いや、」
「私はね、あなたの子ども時代を取り返したい。だからお弁当とか、はりきっちゃった。それに、私のこと大事に思ってくれるんだもん。あなたに必要とされて私は救われてるんだよ」
私は言葉を続けた。
「ずっとこうしてなきゃ眠れないのは今後困ることもあるかも知れないけど。たぶん、きっかけはあると思うよ」
「よかった……幻滅、されてなくて……」
眠ってしまったのだろうか。
その言葉で会話は途切れた。
幻滅などある筈がない。
私は一方通行の心を守りたい。
こんなにも私を必要としてくれる人を邪険にできる筈がないのだ。
夜中、一方通行は目を開いた。
名前は彼の手を握ったまま、ベッドに上半身を預けるような形で眠っていた。
「……風邪ひいちまうだろォが」
一方通行は小さく呟いた。
しかしこの状況は彼を寝かしつけていたせいでもあるので、名前が起きたとして強くは出られない。
一方通行は身体を起こすとベッドを降り、能力を使って名前の身体を抱えた。
彼は名前を本人の寝室に寝かしてやる、ということはしなかった。
――だって名前を部屋に戻したところで俺が寝れるかわかンねェし。
彼は心の中だけで言い訳をした。
これは良い機会だ、とばかりにそのまま自分のベッドに寝かし、自らも横になる。
そしてぎゅうっと名前の身体を抱きしめた。
彼にとってこうしている状態が幸せなのだ。
ずっと欲しかったものはこの行為に凝縮されている、そんな気がする。
「寝てるから言うぞ」
名前が起きないよう、小さな声で囁く。
「き、……すきだ」
目を閉じた。
いつか、いつか言うからどうかその時は受け止めて欲しいと願った。
その時はこんな状況じゃなく、ちゃんと名前が起きている時に。
「…………あいされてェなァ」
名前に。愛されたい。受け入れられたい。
目尻から熱い何かが零れた。
ハッと意識が戻る。
……いけない。
見まわすとここは一方通行のベッドだった。
ベッドの主である彼とは手を繋いでいる状態で眠っていた。
おそらく、一方通行を寝かしつけていたまま眠ってしまった私を、彼がベッドに寝かせたのだろう。
枕元のアラームを見ると、針は2時過ぎを指していた。
明日も学校だ。
早く自分のベッドで寝なくては。
しかし、握った一方通行の手を離そうとするが、離れない。
いつもは彼が眠ると繋いだ手は緩むのだが……。
左手を使い、無理に離そうとすると声が聞こえた。
一方通行は魘されているようだった。
「嫌だ。俺の、俺のだ」
「名前、好きなンだ、だから返してくれよ」
ドキリと胸が高鳴った。
どういう意味で、彼が私を求めているのかはわからないけれど。
起こしてあけるべきだろうか。
私は一方通行の頬に触れた。
「一方通行、私は」
此処だよ、という言葉が出る前に、一方通行は呻いた。
「俺の……コーヒー……!」
「…………」
「……うゥ」
「……コー、ヒー……?」
脱力した。
求められているのが私かと思っていたが、まさかコーヒーだとは。
一方通行の寝言を頭の中で反芻する。
コーヒーを奪ったのは夢の中の私なのだろうか。
中断していた手を離す作業を続けながら、小さく悪態をついた。
「ドキっとしたでしょうが……」
「うゥ……」
悲しげなうめき声を残して私は部屋を後にした。
台所へ行き、一方通行愛飲の缶コーヒーを取りだした。
再び一方通行の部屋へ行き、眠る彼に握らせる。
これで私は罪悪感と戦わなくていい筈だ。
to be continued...