chapter3
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夕方、名前はスーパーで会計を済ませ買った物を袋に入れていた。
寒さが身に染みたので今日の夕食は鍋になる。
さて帰るかという時、肩を叩かれた。
「よ、久しぶり」
「上条くん!久しぶりだねぇ。あ、あけましておめでとう」
「あぁ、そっか。あけましておめでとう」
もう正月ムードは過ぎ去っていたが、念のために挨拶をしておく。
忘れ物がないことを確認し、二人はスーパーを出た。
「今から帰るところか?」
「そうだよー。正月の時はありがとうね、一方通行預かって貰っちゃって」
「保護者みたいなこと言うなぁ。いーんだよ、アイツとも友達みたいなもんだし」
「そう?よかった」
名前は頬を緩ませる。
一方通行に友達がいたことに安堵したからだ。
名前が十字路を右に曲がろうとした時、上条は真っ直ぐ行こうとしていつのに気づく。
「あ、じゃあ私、こっちだから」
「あぁ、そっか。じゃあまたなー」
上条と手を振って別れる。
そして早く帰ってしまおうと前を向くと、立ち塞がった者がいた。
素行の悪そうな人物が三人、だ。
嫌な予感に一歩後ろへと下がる。
「よぉ。ちょーっと俺らと遊びに行かねぇ?」
「え、あ、いや。もう生もの買っちゃったんで、」
「そんなこと言わずにさぁ」
冷や汗を垂らしながら後ずさっていると、背後から声がした。
先程、聞いていたばかりの声が。
「おーい、名前何してんだ?」
上条だった。
別れたばかりだった彼は名前の様子に気が付き戻ってきたのだ。
上条は名前の手を握り引っ張った。
「ほら、さっさと帰らないと一方通行が心配するぞー」
「あぁ?何だてめぇええ!」
スキルアウトの怒鳴り声を合図に走り出す。
すぐに大通りへと出て、手近な店であるコンビニへと駆け込んだ。
さすがの彼らも店内までは追って来ない。
舌打ちの音が聞こえ、窓から引き返しているのが見えた。
「も、もう大丈夫みたいだな……」
上条は隣の名前に声を掛けたが、彼女はまだ息切れを起こしていた。
苦しそうだ。
「大丈夫か?」
「うん……ありが、と」
「スマートに助けられたら良かったんだけどな」
「ううん、上条くんがいなかったら……足がすくんで走って逃げられなかったよ、ほんと、助かった」
「んーまぁ無事でよかったよ……ああっ!」
「どうしたの?」
突如として上条が上げた悲鳴に、名前は首を傾げた。
上条は買い物袋を広げた。
かわいそうなことに割れた卵が見えた。
「卵が……。不幸だー」
「ああ……ごめん、私がボケッとしてなければよかったのに」
「いやいやいいんですよ。よくあることだからな」
上条は困ったように笑った。
上条の不幸体質については名前もトモから聞いている。
ついでにカミジョー属性についても、だ。
しばらく店内にいたが、上条が名前に言う。
「もう大丈夫だろ。さ、暗くならないうちに帰ろうぜ」
「だね。さっきは本当にありがとう」
「いーんだよ。気にしないでくれ」
「ひゃっ……!」
コンビニを出たところで名前は地面に転がっていた空き缶に躓いた。
後に倒れようとする背中を、上条は支えようとしたが支えきれない。
その結果、上条が押し倒すような形になってしまった。
「~~っ!!」
手が名前とアスファルトの板挟みになってしまった。
痛みをこらえようと頭を動かすと、柔らかい物に当たる。
上条の頭に疑問符が浮かぶ。
しかしとりあえずは名前の安否を確認することにした。
「だ、大丈夫か?」
「うん、ごめんー……重ねがさねありがとう」
名前の無事を確認し上条は安心した。
確かに上条の手は名前の後頭部を支えるようになっている。
頭を打つ事態は避けられたようだ。
そして上条が身体を起こすとさきほどの疑問符の正体が明らかになった。
どうやら名前の胸だったらしかった。
悪い、と言おうとすると低い声が頭の上から降ってきた。
「なァに白昼堂々胸に頭突っ込ンでンだ…!」
「一方通行!?なんでここに……うぐっ」
「アクセラレータ!?」
胸倉を掴まれコンビニの外壁へと押し付けられる。
上条はその細腕のどこに力があるのか、という疑問が湧き、彼が学園都市第一位であることを思い出した。
彼の赤い瞳は上条を睨みつけている。
「名前に変な事したらどォなるかわかってンだろォなァ!あァ!?……あ?」
一方通行の怒鳴り声が間の抜けたものになった。
上条が右手で一方通行の腕に触れたからだ。
一方通行の力が無効化され、上条は地に足を下した。
上条は溜息を吐いている。
「なンだよその右手は!」
「アクセラレータ!上条くんは助けてくれただけだから!」
初めて力が無効化されたことに怒鳴り声を出すと、名前が口を開いた。
名前に珍しく声を荒げられ、一方通行は一旦口を噤む。
「はぁ……上条さん痛いですのことよ」
「ごめんね上条くん……」
「いや、俺も事故とはいえごめんな」
「ううん。上条くんのお陰で頭打たずに済んだわけだし……」
名前はビニル袋からカフェオレを取り出した。
自分で飲みたくて買ったのだが、今日買ったもので人にあげるようなものはこれだけだ。
「これ、よかったら。お詫びに」
「おお、ありがたく貰っとくけど、気にすんなよ」
「そういってもらえると……」
一方通行は一部始終をむすっとして見ていた。
帰り道、彼は名前から上条の力のことを知った。
異能を打ち消す右手。
それは『一方通行』をも打ち消すことができる。
表面的には無能力者だが、敵対すると脅威にもなり得る存在だ。
一方通行は眉間の皺を寄せた。
今日は二度も名前を救われてしまった。
先ほど名前を押し倒している上条を見て頭に血が上るのを感じた。
説明を聞く余裕もなく、気が付けば上条の胸倉を掴んでいた。
今回で名前が上条を意識してしまったら、と思うと益々二人が会うのが気に食わない。
夕食後、一方通行はブラックコーヒーをマグカップに注ぎ、牛乳と砂糖を加え始めた。
レンジで温め、洗い物を終えた名前に手渡す。
「ほら、これ」
「えっ……?カフェオレ?」
「飲みたかったンだろ」
「ありがとう」
上条の件を彼なりに気にしていたのかもしれない、
名前はカップをこたつに置き、ソファに座った。
一方通行は缶コーヒーを持って同じように座る。
「話があンだ。つっても大したことじゃねェけど」
「なに?」
「復学、しよォと思う。このまま家にいてもしょォがねェし」
意外な台詞に名前は目を丸くした。
「うん、それがいいよ。今まで言えないでいたけど、あなたは世界を広げたら良いのにって思ってたんだ」
「……クラスメイトはいねェンだけどな。特別クラスだから」
「……。笑顔の練習してみる?他のクラスの人が話しかけてくるかも」
「やめとく」
「そう?笑ったあなた、きっと可愛いけど」
「可愛くなってどォする」
名前はカフェオレを口に含んだ。
甘くて温かい。
彼女は小さく息を吐いた。
「おいしい」
to be continued...