chapter 2
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26+18
夕方、一方通行はベッドで寝返りを打った。
いつもならばそろそろ名前が帰る時間なのだが、帰りに図書館に寄るらしい。
昨晩名前がそう言っていた。
多少晩飯が遅くなるのは構わない。
一方通行はぼんやりした頭でもう一眠りするかと考える。
そこにインターホンが鳴った。
正直、出たくはないが荷物を頼んでいる可能性もゼロではない。
気だるげに身体を起こして玄関へ向かい、ドアを開けた。
「やほ」
ショートカットの髪を揺らし、挨拶したのはトモだった。
「……」
何も見なかったことにしよう。
一方通行はドアを閉める。
その直後、けたたましくインターホンが鳴り始めたので再度ドアを、今度は勢いよく開けた。
ドアはガンッ、と見事にトモにぶつかったようだ。
トモは額をさすりさすり、ドアを支えて顔を覗かせた。
「ちょっと!人を喜劇役者にするのは酷いんじゃない?」
「名前はいねェぞ」
「それを見計らって来たんだけど?」
「……はァ?」
訝しげな声を上げると、トモは拗ねたように唇を尖らせた。
「メールくれたのはそっちじゃん。詳細聞いても返信くれないし」
メールには心当たりがあった。
と言っても、何週間か前にはなるが。
名前の心のうちを聞けた際にその旨を簡単に知らせておいた。
トモは詳しく聞いてきたが人に話すものでもない、とスルーしたのだ。
「……大分前じゃねェか」
「名前抜きで一方通行に会うって難しいんだよ。私が普通に呼び出したとして、来る?」
「まず来ねェな」
「ほらね!」
トモは勝ち誇った態度をしながらも、ちょっと涙目だった。
さほど苛めたつもりはないのだが。
一方通行は肩を竦める。
「というわけで、部屋上がらせてよ」
「家主いねェしなァ」
「家主がいたら困るんだってば」
一方通行は思案した。
玄関であまり粘られても迷惑だし、面倒臭い。
何よりドアを閉めようにも、トモは悪質な新聞売りのようにドアと玄関の間に足を捩じ込んできていた。
彼は目の前の人間が女なのか疑いたくなってきた。
一方通行は部屋に戻りながら告げた。
「……家のモン壊すなよ」
「壊さないって!人のこと何だと思ってるの?」
トモは靴を揃えてあがると、部屋に入ってくる。
前回のようにダイニングで足を止めず、寝室まで入ってきた。
トモは行儀よく床に座ったが、一方通行はげんなりした顔を隠しもしない。
「で、先日の詳細を教えて貰ってもいいかな?」
「別に。俺とアイツが似た者同士だったってだけだ。オマエの読み通りにな」
「ふぅん……」
トモは一方通行がこれ以上語らないと判断したのか、何も言わない。
「……まぁいいや、他に聞きたいこともあったし」
「聞きたいことォ?」
「名前が首に付けてるアレだよ」
「首ィ?」
「プチネックレス」
「アイツ学校に付けて行ってたンかよ……」
一方通行は呆れたように息を吐いた。
「うち校風自由だし。服の下に隠れてるから先生とかには大丈夫だけどね?」
「はァ」
「やっぱり、買ったのは貴方なのかな?」
「……まァ、快気祝いにな」
「へ~え」
トモはニヤつき始めた。
コイツのこういう所が苦手だと、一方通行は眉間のシワを深くする。
「なンだよ」
「べっつにぃ?ネックレスっていうと首輪みたいだねとか独占欲の表れだとか、貴方の目の色の石だったねとか、思ってないしぃ」
「ふざけてンのか……選んだのは俺じゃねェ。名前だ」
「本当に?他にも選択肢はあったのを一方通行が決めたんじゃない?」
「……」
否定はできなかった。
買い物に振り回されて早く決めてしまいたかったのだと、心中で弁解する。
だが名前にアクセサリーを買い与えることで何か邪な感情が沸き上がったことも確かだった。
彼女との繋がりを目に見える形で与えることに満足感を抱いた。
赤色を選んだ名前がもしかしたら自分の瞳の色だから選んだのではという仄かな期待も抱いた。
考え込んだ一方通行を見て、トモは笑みを深くした。
弄り成功である。
彼女はさて、と思案する。
一方通行を弄る目的も済んだ。これから何をしようか。
ふと部屋を見回すととある噂を思い出し、物は試しとベッドの下を覗いて見た。
「……やっぱないかー。そりゃそうだよね。女の子の部屋だもん」
「ナニしてンだ?」
「軽い家捜し?」
「はァ?」
「一方通行専用の鍵付きの引き出しとかないの?」
唐突に何かしらを探し始めたトモだが、一方通行には何のことだかわからない。
視線を彷徨わすトモを訝しげに見ている。
「いやだから、ナニ言ってンだ?」
「男の子ならエロ本の一つや二つ持ってるもんだっておばあちゃんが言ってたなぁって」
「エロほっ……?!どンなババアだよ!」
「クローゼット開けたいところなんだけど、ここは名前の部屋だもんなぁ」
「ちったァ恥じらいを持ちやがれ!」
一方通行がそう怒鳴った時、ドアの閉まる音がした。
首を90度回せば帰ってきた名前の姿が見える。
「あれ?トモ、来てたの?」
「おかえりーお邪魔しちゃってたけどよかった?」
「ただいま。……いいけどびっくりしたよ」
戸惑ったように名前は一方通行の方を見た。
彼はばつが悪そうにしている。
「怒鳴ってたみたいだけど、どうしたの?」
「いや、別に」
蒸し返したくない話題に一方通行は言葉を濁すがトモは構わず答えた。
「一方通行専用の鍵付き引き出しってないの?」
「え?鍵付きの?」
「ばっ……!言うな馬鹿!」
一方通行は慌てたように怒鳴るがトモは止まらない。
「男の子には後ろめたい本が必要って聞いてさ」
「後ろめたい……?」
名前は暫くわからなそうにしていた。
だがやがて察しがついたのかハッとした素振りを見せ、頬を赤らめた。
「ご、ごめんね?気を遣えなくって」
「いや遣うな頼むから」
「今度そういう本直せるもの買って来ようか?あ、でも大きさわかんないからあなたが買った方がいいかな」
「何でオマエは寛容的なンだよもォ!」
一方通行はそう言うと壁を向いてベッドに横になった。
タオルケットまで被っている。
「拗ねちゃった?」
「なるほど。名前で十分ってことね」
ベッドが名前のものであると踏まえた上でトモはぼそりと呟く。
一方通行はそれが聞こえたらしい。
振り返って彼女を射殺さんばかりに睨んだ。
「おー怖い。じゃ、今日はもう帰ろうかな」
「そう?」
「勝手に上がって悪かったね。じゃあ明日」
「またねー」
名前は玄関までトモを見送った。
ドアを閉め、寝室に戻るが一方通行は未だに拗ねたままだ。
名前はベッドに腰掛けた。
「ごめん、弄りすぎちゃったかな?」
「…………俺、」
沈んだ声が聞こえた。
「能力の弊害でホルモンバランス崩れてっからよォ……他の男と違ェから」
「うん……?」
からかうにはデリケートな部分だったかもしれない。
名前は反省してゆっくりと息を吐いた。
「トモにも怒っとくね」
「……ン」
白い頭がこくりと頷く。
そしてのそり、と一方通行は起き上がった。
ようやく顔が見えたが意気消沈しているように見える。
名前はフォローすべく少し前のことを回想する。
風邪をひいた翌日のことだ。
少し照れながら、遠慮がちに言う。
「もしかして筋肉つきにくいとか気にしてるんだったら言うけど……」
「……あン?」
「風邪ひいて抱えてもらった時、あなたも男らしいと思ったよ」
「…………そォか」
素っ気ない言葉とは裏腹に、彼の赤い瞳が泳いでいた。
そしてどこか居心地悪そうにしたかと思うとぱたり、と再びベッドに倒れてしまった。
「…………。腹ァ減った」
「あ、今から作るね」
名前が台所に向かった後、一方通行は一人枕に顔を埋めた。
男らしいなどと初めて言われた彼はむず痒い気持ちに困惑していた。
to be continued...
夕方、一方通行はベッドで寝返りを打った。
いつもならばそろそろ名前が帰る時間なのだが、帰りに図書館に寄るらしい。
昨晩名前がそう言っていた。
多少晩飯が遅くなるのは構わない。
一方通行はぼんやりした頭でもう一眠りするかと考える。
そこにインターホンが鳴った。
正直、出たくはないが荷物を頼んでいる可能性もゼロではない。
気だるげに身体を起こして玄関へ向かい、ドアを開けた。
「やほ」
ショートカットの髪を揺らし、挨拶したのはトモだった。
「……」
何も見なかったことにしよう。
一方通行はドアを閉める。
その直後、けたたましくインターホンが鳴り始めたので再度ドアを、今度は勢いよく開けた。
ドアはガンッ、と見事にトモにぶつかったようだ。
トモは額をさすりさすり、ドアを支えて顔を覗かせた。
「ちょっと!人を喜劇役者にするのは酷いんじゃない?」
「名前はいねェぞ」
「それを見計らって来たんだけど?」
「……はァ?」
訝しげな声を上げると、トモは拗ねたように唇を尖らせた。
「メールくれたのはそっちじゃん。詳細聞いても返信くれないし」
メールには心当たりがあった。
と言っても、何週間か前にはなるが。
名前の心のうちを聞けた際にその旨を簡単に知らせておいた。
トモは詳しく聞いてきたが人に話すものでもない、とスルーしたのだ。
「……大分前じゃねェか」
「名前抜きで一方通行に会うって難しいんだよ。私が普通に呼び出したとして、来る?」
「まず来ねェな」
「ほらね!」
トモは勝ち誇った態度をしながらも、ちょっと涙目だった。
さほど苛めたつもりはないのだが。
一方通行は肩を竦める。
「というわけで、部屋上がらせてよ」
「家主いねェしなァ」
「家主がいたら困るんだってば」
一方通行は思案した。
玄関であまり粘られても迷惑だし、面倒臭い。
何よりドアを閉めようにも、トモは悪質な新聞売りのようにドアと玄関の間に足を捩じ込んできていた。
彼は目の前の人間が女なのか疑いたくなってきた。
一方通行は部屋に戻りながら告げた。
「……家のモン壊すなよ」
「壊さないって!人のこと何だと思ってるの?」
トモは靴を揃えてあがると、部屋に入ってくる。
前回のようにダイニングで足を止めず、寝室まで入ってきた。
トモは行儀よく床に座ったが、一方通行はげんなりした顔を隠しもしない。
「で、先日の詳細を教えて貰ってもいいかな?」
「別に。俺とアイツが似た者同士だったってだけだ。オマエの読み通りにな」
「ふぅん……」
トモは一方通行がこれ以上語らないと判断したのか、何も言わない。
「……まぁいいや、他に聞きたいこともあったし」
「聞きたいことォ?」
「名前が首に付けてるアレだよ」
「首ィ?」
「プチネックレス」
「アイツ学校に付けて行ってたンかよ……」
一方通行は呆れたように息を吐いた。
「うち校風自由だし。服の下に隠れてるから先生とかには大丈夫だけどね?」
「はァ」
「やっぱり、買ったのは貴方なのかな?」
「……まァ、快気祝いにな」
「へ~え」
トモはニヤつき始めた。
コイツのこういう所が苦手だと、一方通行は眉間のシワを深くする。
「なンだよ」
「べっつにぃ?ネックレスっていうと首輪みたいだねとか独占欲の表れだとか、貴方の目の色の石だったねとか、思ってないしぃ」
「ふざけてンのか……選んだのは俺じゃねェ。名前だ」
「本当に?他にも選択肢はあったのを一方通行が決めたんじゃない?」
「……」
否定はできなかった。
買い物に振り回されて早く決めてしまいたかったのだと、心中で弁解する。
だが名前にアクセサリーを買い与えることで何か邪な感情が沸き上がったことも確かだった。
彼女との繋がりを目に見える形で与えることに満足感を抱いた。
赤色を選んだ名前がもしかしたら自分の瞳の色だから選んだのではという仄かな期待も抱いた。
考え込んだ一方通行を見て、トモは笑みを深くした。
弄り成功である。
彼女はさて、と思案する。
一方通行を弄る目的も済んだ。これから何をしようか。
ふと部屋を見回すととある噂を思い出し、物は試しとベッドの下を覗いて見た。
「……やっぱないかー。そりゃそうだよね。女の子の部屋だもん」
「ナニしてンだ?」
「軽い家捜し?」
「はァ?」
「一方通行専用の鍵付きの引き出しとかないの?」
唐突に何かしらを探し始めたトモだが、一方通行には何のことだかわからない。
視線を彷徨わすトモを訝しげに見ている。
「いやだから、ナニ言ってンだ?」
「男の子ならエロ本の一つや二つ持ってるもんだっておばあちゃんが言ってたなぁって」
「エロほっ……?!どンなババアだよ!」
「クローゼット開けたいところなんだけど、ここは名前の部屋だもんなぁ」
「ちったァ恥じらいを持ちやがれ!」
一方通行がそう怒鳴った時、ドアの閉まる音がした。
首を90度回せば帰ってきた名前の姿が見える。
「あれ?トモ、来てたの?」
「おかえりーお邪魔しちゃってたけどよかった?」
「ただいま。……いいけどびっくりしたよ」
戸惑ったように名前は一方通行の方を見た。
彼はばつが悪そうにしている。
「怒鳴ってたみたいだけど、どうしたの?」
「いや、別に」
蒸し返したくない話題に一方通行は言葉を濁すがトモは構わず答えた。
「一方通行専用の鍵付き引き出しってないの?」
「え?鍵付きの?」
「ばっ……!言うな馬鹿!」
一方通行は慌てたように怒鳴るがトモは止まらない。
「男の子には後ろめたい本が必要って聞いてさ」
「後ろめたい……?」
名前は暫くわからなそうにしていた。
だがやがて察しがついたのかハッとした素振りを見せ、頬を赤らめた。
「ご、ごめんね?気を遣えなくって」
「いや遣うな頼むから」
「今度そういう本直せるもの買って来ようか?あ、でも大きさわかんないからあなたが買った方がいいかな」
「何でオマエは寛容的なンだよもォ!」
一方通行はそう言うと壁を向いてベッドに横になった。
タオルケットまで被っている。
「拗ねちゃった?」
「なるほど。名前で十分ってことね」
ベッドが名前のものであると踏まえた上でトモはぼそりと呟く。
一方通行はそれが聞こえたらしい。
振り返って彼女を射殺さんばかりに睨んだ。
「おー怖い。じゃ、今日はもう帰ろうかな」
「そう?」
「勝手に上がって悪かったね。じゃあ明日」
「またねー」
名前は玄関までトモを見送った。
ドアを閉め、寝室に戻るが一方通行は未だに拗ねたままだ。
名前はベッドに腰掛けた。
「ごめん、弄りすぎちゃったかな?」
「…………俺、」
沈んだ声が聞こえた。
「能力の弊害でホルモンバランス崩れてっからよォ……他の男と違ェから」
「うん……?」
からかうにはデリケートな部分だったかもしれない。
名前は反省してゆっくりと息を吐いた。
「トモにも怒っとくね」
「……ン」
白い頭がこくりと頷く。
そしてのそり、と一方通行は起き上がった。
ようやく顔が見えたが意気消沈しているように見える。
名前はフォローすべく少し前のことを回想する。
風邪をひいた翌日のことだ。
少し照れながら、遠慮がちに言う。
「もしかして筋肉つきにくいとか気にしてるんだったら言うけど……」
「……あン?」
「風邪ひいて抱えてもらった時、あなたも男らしいと思ったよ」
「…………そォか」
素っ気ない言葉とは裏腹に、彼の赤い瞳が泳いでいた。
そしてどこか居心地悪そうにしたかと思うとぱたり、と再びベッドに倒れてしまった。
「…………。腹ァ減った」
「あ、今から作るね」
名前が台所に向かった後、一方通行は一人枕に顔を埋めた。
男らしいなどと初めて言われた彼はむず痒い気持ちに困惑していた。
to be continued...