chapter1
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20 +13
自分にもまだ人間らしい名前があった頃。
その頃はまだ学園都市都市第一位でもレベル5でもない、ただ少し才能がある程度の子どもだった。
ある時、つっかかってきた子どもが触れただけで骨を折った。
それに気がつき止めようとした教師もまた骨を折った。
騒ぎはどんどん拡大していき、まるで銀行強盗を相手にするかのような事態になっていった。
まだ正義のヒーローに憧れていた頃だ。
警備員やロボットみたいな機械の鎧、無人攻撃ヘリが自分を取り囲むのを見て気がついた。
自分は倒されるべき、悪役の怪獣なのだと。
ひとりぼっちの、かいじゅうなのだと。
夜中、眠りが浅かったのか起きてしまった。
昔の夢を見た。
自分の力が世界を滅ぼしかねないことに気づいた日の夢だ。
あの出来事の後、自分の苛立ちが人を傷つけるのを恐れ、無関心な人間でいようとした。
何事にも動じない人間になれば、不本意に人を傷つけることはなくなる。
感情とは好意ですら嫉妬になりうる。
好意すら向けるのをやめた、つもりだった。
――好意……。
自分がナマエに向けている感情は、好意だ。
それもトモの言った通り、恋愛感情なのだと思う。
ナマエに好意を向けたことで彼女、或いは周囲の人間を傷つけるのではないか。
そう思うと怖かった。
誰も傷つけたくないのに、次は骨折では済まされないかもしれない。
そんなことがあったらまた自分は孤立してしまう。
折角自分を恐れず対等に接してくれる人ができたのに、ひとりになってしまう。
寝返りを打って毛布にくるまると、ベッドから小さく鼻をすする音がした。
――ナマエ?
起き上がってナマエの様子を見る。
彼女の目尻から涙が溢れていた。
「ナマエ、」
名前を呼び、そっと揺さぶろうとしたが彼女は起きていたようだ。
ゆっくりと目蓋を開くナマエが弱々しく、儚く見えた。
「大丈夫か?」
「……うん」
「理由は、この前泣いてたのと同じか?」
ナマエは上半身を起こしながらそうだと答えた。
そしてぽつりと言葉を紡ぎ出した。
「怖いの」
ナマエのか細い声が夜の空気を震わせる。
「大事な人を亡くすのが。家族が、私を置いていって……いつか、一人になるのが……怖い」
知らなかった。
自分と一年暮らしていたナマエもまたこのような闇を抱えていたのだろうか。
自分ばかり「ひとりにするな」と哀願していたが、一方通行の思いだったのだろうか。
ずっと彼女の家族や、自分がいなくなることを彼女は不安に感じていたのだろうか。
今まで彼女の悩みを聞いてやれなかったことを悔やみ、唇を噛んだ。
そして乱暴にならないように、丁寧にナマエを抱き締める。
弱った彼女を怯えさせないために。
ナマエの華奢な肩は僅かに震えていた。
「なンだ、オマエも俺と同じものを恐れてたんだなァ」
自分でも驚くくらい優しい声が出ていた。
胸の中でナマエが頷き、顔を埋めた。
控えめながら背中に腕がまわるのがわかる。
「オマエが受け入れてくれる限り俺はずっと此処にいるから。一人にはしねェよ、ナマエ」
そう言いながら滑らかな彼女の髪を梳すと、こくこくと彼女は頷く。
そんなナマエの温もりを感じながら、自分は心中で懇願していた。
――だから、オマエも俺を置いて行くな。
To be continued...
自分にもまだ人間らしい名前があった頃。
その頃はまだ学園都市都市第一位でもレベル5でもない、ただ少し才能がある程度の子どもだった。
ある時、つっかかってきた子どもが触れただけで骨を折った。
それに気がつき止めようとした教師もまた骨を折った。
騒ぎはどんどん拡大していき、まるで銀行強盗を相手にするかのような事態になっていった。
まだ正義のヒーローに憧れていた頃だ。
警備員やロボットみたいな機械の鎧、無人攻撃ヘリが自分を取り囲むのを見て気がついた。
自分は倒されるべき、悪役の怪獣なのだと。
ひとりぼっちの、かいじゅうなのだと。
夜中、眠りが浅かったのか起きてしまった。
昔の夢を見た。
自分の力が世界を滅ぼしかねないことに気づいた日の夢だ。
あの出来事の後、自分の苛立ちが人を傷つけるのを恐れ、無関心な人間でいようとした。
何事にも動じない人間になれば、不本意に人を傷つけることはなくなる。
感情とは好意ですら嫉妬になりうる。
好意すら向けるのをやめた、つもりだった。
――好意……。
自分がナマエに向けている感情は、好意だ。
それもトモの言った通り、恋愛感情なのだと思う。
ナマエに好意を向けたことで彼女、或いは周囲の人間を傷つけるのではないか。
そう思うと怖かった。
誰も傷つけたくないのに、次は骨折では済まされないかもしれない。
そんなことがあったらまた自分は孤立してしまう。
折角自分を恐れず対等に接してくれる人ができたのに、ひとりになってしまう。
寝返りを打って毛布にくるまると、ベッドから小さく鼻をすする音がした。
――ナマエ?
起き上がってナマエの様子を見る。
彼女の目尻から涙が溢れていた。
「ナマエ、」
名前を呼び、そっと揺さぶろうとしたが彼女は起きていたようだ。
ゆっくりと目蓋を開くナマエが弱々しく、儚く見えた。
「大丈夫か?」
「……うん」
「理由は、この前泣いてたのと同じか?」
ナマエは上半身を起こしながらそうだと答えた。
そしてぽつりと言葉を紡ぎ出した。
「怖いの」
ナマエのか細い声が夜の空気を震わせる。
「大事な人を亡くすのが。家族が、私を置いていって……いつか、一人になるのが……怖い」
知らなかった。
自分と一年暮らしていたナマエもまたこのような闇を抱えていたのだろうか。
自分ばかり「ひとりにするな」と哀願していたが、一方通行の思いだったのだろうか。
ずっと彼女の家族や、自分がいなくなることを彼女は不安に感じていたのだろうか。
今まで彼女の悩みを聞いてやれなかったことを悔やみ、唇を噛んだ。
そして乱暴にならないように、丁寧にナマエを抱き締める。
弱った彼女を怯えさせないために。
ナマエの華奢な肩は僅かに震えていた。
「なンだ、オマエも俺と同じものを恐れてたんだなァ」
自分でも驚くくらい優しい声が出ていた。
胸の中でナマエが頷き、顔を埋めた。
控えめながら背中に腕がまわるのがわかる。
「オマエが受け入れてくれる限り俺はずっと此処にいるから。一人にはしねェよ、ナマエ」
そう言いながら滑らかな彼女の髪を梳すと、こくこくと彼女は頷く。
そんなナマエの温もりを感じながら、自分は心中で懇願していた。
――だから、オマエも俺を置いて行くな。
To be continued...
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