chapter1
夢小説設定
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風呂上がり、濡れた髪をタオルで拭きながらテレビを眺めていると、ナマエが何かを思い出したように鞄を漁り出した。
「DVD借りてきたから見よ?」
「あァ?退屈だったら寝るぞ」
「ホラーだから大丈夫じゃないかな」
そう言ってナマエが青い袋から取り出したそれは、10年ほど前に流行った外の映画だ。
未だにリメイクやシリーズのものが製作されている。
ナマエの言うとおり、確かに感動もの恋愛ものよりはマシかもしれない。
彼女はウキウキとした様子でプレイヤーを操作していく。
それを眺めながら一年前を思い出していた。
ナマエが友人とホラー鑑賞会をするのだと言って外泊していたことがあったのだ。
一年前は友人に押され勢いで見ているものと思ったが自ら進んで見るとは。
あの時は向こうで怖がりながら見ていると思っていたが、こいつは平気なタイプだったのか。
再生ボタンを押したナマエが俺の隣に座りにきた。
映画が始まる。
2時間後、俺の後ろで毛布を被っているナマエがいた。
――前言撤回。コイツは平気なンじゃない、怖いもの見たさだ。
後ろで俺の肩にしがみつくナマエに嘆息する。
「なァ、オマエ見えてンのか?」
「見えてる見えてる……ひぃっ」
驚いた彼女に肩を揺らされた。
液晶では女の亡霊が不気味な動きで主人公へと迫っていた。
画面とナマエの板挟みになり、映画に集中できない。
しかし頼られてるのか?と思うとさほど悪い気はしなかった。
元より映画にはさして興味があるわけでもなかったのだから。
やがてエンドロールが流れた。
ホラーによくある根本的解決には至らない、後味の悪い終わり方だった。
ナマエがはぁー、と息を吐き出しながら言う。
「あなたがいてよかったぁ」
オチは読めてるが、内心その言葉に喜んでしまった。不覚にも。
「これ一人じゃ見れなかったよー」
「ハイハイ、それは良かったですねェ」
ナマエの髪をわしゃわしゃと掻き乱す。
彼女は髪が乱れると文句を言いながら笑った。
「友達の家で見てたら帰れなくなってたよ。あなたはこの部屋で寝てくれるから安心!」
「そォかいそォかい」
「持つべきものは家族だねぇ」
「あァ、そォだな」
「へへ」
素直な返答をしたからかナマエは顔をほころばせた。
「そろそろこたつ直さなきゃだね」
「あァ?もうそんな時期か」
「いつまでも置いてたら怠けちゃうからね」
「そりゃあいいけどよォ、ここで寝る俺としちゃ寒いんじゃねェ?」
「大丈夫、掛け布団は多めにあるから」
寝る支度をしてナマエが電気を消した。
布団に潜りながら彼女は言う。
「一方通行がいると毎日がお泊まり会みたい」
「そォかよ」
「友達に会わなくても寂しくはならないや」
俺もオマエがいるなら、とは言えない。
ただ控えめに同意しておいた。
「そォだな、おやすみ」
丸く盛り上がったベッドからおやすみ、と返事が聞こえた。
to be continued