chapter1
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初めに亡くしたのは飼っていた犬だった。
昔は元気だったのに、いつの間にか年をとって。
そしてある朝冷たくなっていた。
素直でばかで可愛い子だった。
――もっと、可愛がってあげたらよかったな。
次に失くしたのは――。
ハッと目を覚ます。
目尻には乾いた涙の跡があった。
首を動かすと普段通り寝息をたてる彼の姿が見えた。
――あく、せら……れーた。
「……」
一人になりたかった。
少し、頭を冷やして来ようか。
彼を起こさないようにそっと寝床を出る。
外に出られる格好に着替え、上着を羽織った。
春とはいえ早朝の空気はまだまだ寒い。
しかしこの夜明けの澄んだ空気は案外好きだ。
もう明るいというのに灯っている街灯は、いつもと違う世界にいるような感覚にさせた。
公園へと向かいながら、先ほどの夢を想起する。
「もう……嫌だなぁ」
近しい人を亡くすのが怖い。
喪失感で胸がすかすかで、いつか本当に独りになるのが怖い。
置いていかれるのが怖い。
そのくせ、悲しみは心に鍵を掛けてしまったようで。
人と打ち解けられない人間になってしまった。
きっとこの鍵を開けない限り、私の前には透明のカーテンが引かれたままなのだろう。
一方通行は私を必要としてくれている。
人から必要とされる。
それは私にとって喜ばしいことだ。
自分の存在価値を見出だすことができる。
――しっかり、しなきゃ。
彼も、孤独を恐れている。
気を強く保って彼を支えなければ。
無能力者である分、というのもあるかもしれない。
何かあっても私が彼を守れるのは精神面でだけだ。
もし私が弱いところを見せたら甘えてくれなくなるかもしれない。
彼の唯一の拠り所として、強く保っていたい。
だからこそ。
誰もいない此処で泣きたかった。
「……っく」
静かに涙を流す。
怖い、怖い。
いつか死が皆を連れてってしまうのか。
私はひとりぼっちになるのか。
――そうなるくらいなら、■にたいのに
一方通行、彼はいつまであの部屋にいてくれるのだろう。
彼だっていつかは恋をしていずれは出て行ってしまう。
そして私はまた独りになるのか。
一頻り泣いて空が明るくなってきたことに気づく。
――一方通行が起きる前に帰らないと
起きた時、私がいなければきっと彼は心配する。
早く傍にいてあげなければ。
戻ろう、彼の傍へ。
そう思い足早に歩き出した。
to be continued...