chapter1
夢小説設定
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「おじゃましまーす」
「どうぞー」
講義終了後、トモが部屋にきた。
トモはぺこりと頭を下げて言う。
「トモです。よろしく」
「一方通行だ」
「あ、アクセラレータ…?」
聞き慣れない横文字にトモが首を傾げたので、すかさずフォローを入れる。
「能力名を名乗ってるんだよ」
「へぇーどんな能力?」
「ベクトル変換」
「なにそれ高位能力者?」
「まァな。これでもレベル5の第一位だ」
「わお。ちょっと名前、聞いてないよー」
トモが軽く小突いてくる。
彼が学園都市一の優等生であることをすっかり忘れていた。
「そういえばそうだったね」
「普段あまり意識しないとか?」
「使ってるのもあんまり見ないから」
「紫外線とか反射してっけど見えねェしな」
「え、聞いてない」
「日焼け知らずじゃん!羨ましい!」
「それって世界一の美肌なんじゃない?」
「男がそォ言われても別になァ」
熱が入ってくる私たちに対し、一方通行は憮然としていた。
ダイニングでしばらく話していると、一方通行が腰を上げた。
「じゃァ、寝るから」
「お客さん来てるのになぁ」
「まぁ今日は課題するって用もあるわけだし」
不満の声をあげる私にまぁまぁ、とトモが宥める。
そういえば彼女は課題をしたがっていた。
彼女は英語の課題を広げて「分担しよ」と持ちかける。
一緒に課題、とは分担作業がしたかったらしい。
なるほど確かに全部自分でするよりは効率がいい。
課題の長文をどの段落で区切るか印をつけていると、トモがメモを差し出してきた。
意外と女の子らしい文字が書かれている。
『弟タイプかと思ってたけど可愛いわけじゃないんだね』
わざわざメモで伝えたのに納得し、苦笑した。
確かにあまり本人には聞かせたくない。
見た目はそうかもしれないけれど、とメモに書き足していく。
『あれで結構寂しがりやなんだよ』
『ふーん。まぁ、チャラチャラしてないみたいだし安心はしたよ』
仲良く、まではいかずとも同居を許容はしてくれるようだ。
私はほっとして言った。
「よかった」
「さ、和訳やるよ。こっち半分担当するから」
「じゃ私はここね。りょーかい」
雑談も交わしつつ課題に取り組んでいると、奥で寝ていた一方通行が起きてきた。
冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して飲み、ゆっくりと部屋へ戻っていく。
――カフェイン取りながら昼寝?
いつも通り、彼の睡眠欲は底無しだ。
一方通行を目で追っていると、トモがどうかした?と小声で聞いた。
それを説明すべく、先ほどのメモに書き出す。
『コーヒー、朝も飲んでたんだよ。昼寝してるのにわざわざカフェイン取るなんて』
『ははーん』
トモは続ける。その顔はにやついていた。
『構って欲しいんじゃない?確かに、可愛いとこあるねぇ』
ああ、と納得し彼を構う方法を少し考える。
『じゃあ課題一緒にしちゃおうか』
「一方通行、これ教えて」
ドアから顔を覗かせて頼みに行く。
「あァ……?」
一方通行はウトウトしながら起き上がってきた。
ダイニングに戻り、課題の何箇所かを指さす。
「課題の英語わかんなくって。こことここと、この文」
「オマエら、自分でやれよ」
げんなりした顔をしながらも訳を教えてくれた。
なんだかんだ言いつつも、彼は優しいのだと思う。
ただ、学園都市第一位と言えど、彼は人のものを教えるのは苦手なようだ。
「オマエらなンでわかンねェの?」
賢すぎるが故に、わからない感覚が理解できないのだろう。
うっすらと圧倒的な学力差を感じつつ謝っておく。
「ごめんね英語苦手で」
「まず一方通行の説明に知らない単語が」
一方通行は不機嫌になりながらも根気強い指導をしてくれた。
「ふーそろそろお暇しようかな」
トモがゆっくりと立ち上がった。
「そう?」
「ご飯作らなきゃいけないんでね。今日は助かったよ、一方通行先生」
「もォ教えねェぞ」
一方通行は忌々しげに毒づく。
慣れないことをして疲れたのかもしれない。
「そう言わないで~頼りにしてるよ先生。じゃあね、名前。また明日」
「うん、気をつけてね」
玄関先で見えなくなるまでトモを見送る。
「あなたがいれば英語以外の課題でも大丈夫だね」
「レポートは手伝わねェぞ」
「それはわかってるって」
一方通行は私をじぃっと見つめた。
「どうかした?」
気恥ずかしくなり、少し照れながら聞いてみる。
彼はなンでもねェ、と顔を反らした。
To be continued...